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連載コラム

第13回【ノートシリーズ1】「小売店頭論の最高峰----流通経済研究所編『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』を解剖する(2)」

[ 2008年12月27日 ]

前回はインストア・マーチャンダイジングの総論を述べた。今回からは各論を展開したい。取っ掛かりは注目される消費者行動論である。生活者の買物は、いかにモデル化され理論化されるのだろうか。本書では、購買を〈問題の発見と解決〉という視点からとらえ「欲求認識」「情報検索」「購買前代替案の検討」「購買」という4つのプロセスに分解する。
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(前回よりつづく)

3 消費者行動論

前回はインストア・マーチャンダイジングの総論を述べた。
今回からは各論を展開したい。取っ掛かりは注目される消費者行動論である。生活者の買物は、いかにモデル化され理論化されるのだろうか。
 本書では、購買を〈問題の発見と解決〉という視点からとらえる。たとえば調味料を求めるお客さまは、それが少ないという問題を、買うという行動で解決するのである。ついで、この〈問題の発見と解決〉というプロセスを4つに分解する。解説をそのまま載せたい(p24〜25)。

● 欲求認識----現在の状態が望ましい状態とは異なることを認識すること
● 情報探索----欲求を充足させるために、記憶や周囲の情報を探すこと
● 購買前代替案の検討----意思決定の候補となるいくつかの案に対して、取得した情報をもとに検討をおこなうこと
● 購買

 すなわち消費者は、欲しいと思っても、すぐ買うのでなく〈情報探索〉と〈購買前代替案の検討〉というステップを踏むのである。なればこそ、この購買前の2ステップにどう働き掛けるか、ということが店舗施策のポイントになってくる。

したがって、意思決定の過程において、何らかの働きかけをすることで、その後の決定の結果が大きく異なると考えられます。つまり購買の意思決定をおこなう前の働きかけの内容により、購買点数が増減することを意味しています(p25)。

 とはいえ、人はつねに合理的に動くわけでもない。「ある程度結果に満足できる範囲で非合理的な意思決定をする側面がある(p26)」のだ。ここから不合理的な購買に対応するものとして、ヒューリスティック(便宜的手法)やフレミング効果(値引きするとき、通常売価を示す、示さないで売上効果が変わるなど、同じものでも表示法のちがいにより異なる判断となること)といったとらえ方が指南され、そのうえで「品揃え、POPの書き方などにより商品の購買は大きく影響を受けます。そのため、店頭で商品を購入してもらうためには、適切な情報を提供する必要があります(p28)」と、インストア・マーチャンダイジングの方向が示される。

ところで購買には、計画的な計画購買と、計画的でない非計画購買のふたつがある。購買実績(点数、金額)を上げようとするとき、どちらを促進するかで、マーケティングの方向がちがうという。前者を促すなら、マス媒体を用いた宣伝などの店外マーケティングが、後者なら、店内での様々な情報提供が大事になってくる。
 では現実にどちらが多いのかといえば、スーパーマーケットでは、これが圧倒的に非計画購買らしい。本書を編集した流通経済研究所の調査(以下のデータも同様)によると、その数字はなんと80・2%。日本人の鮮度重視の購買傾向が背景にあるそうだ。「店舗にある商品を見てメニューを決定し、そのメニューに必要な食材を購入することが影響している(p33)」のである。こうなると、どうしても、この非計画購買に注目せざるを得ない。

問題は、非計画購買のタイプである。衝動買いが最も有名だが、では、これだけかと思うと、とんでもない、これを含めて4種ある。想起購買、関連購買、条件購買、衝動購買の4つである。想像が喚起される命名だが、ここにその意味を書き出そう(p34)。

● 想起購買----家庭内の在庫切れなど、店頭で商品やPOPを見て商品の必要性を思い出し購入する購買行動
● 関連購買----他の購入商品との関連性から店舗内で必要性を認識し、商品を購入する購買行動
● 条件購買----来店時には明確な購買意図を持っていないが、値引きなどの条件により、店頭で購入意向が喚起され、商品を購入する購買行動
● 衝動購買----商品の新奇性や衝動により、商品を購入する購買行動

 いろいろあるものだと、改めて感嘆する。ともあれ、このような購買スタイルを前提に、MDや販促を組むのが、業績アップにつながるのである。


 計画購買と非計画購買への対処の前に論じられるのが、計画購買の中止、滞在時間、回遊性のテーマである(p35〜38)。
計画購買の中止については、「計画性を有していた人の約半数の人が何らかの理由で購買を中止(p35)」していると記し、その数字は47・9%という。あまりの高率に驚いてしまった。理由は、大きい順から、「家に在庫があるのを思い出した」「品切れしていた」「売場が見つからなかった」。対策として、消費者視点による品揃え、売場の連続性などレイアウトと商品くくりの見直しを提言する。
 お客さまの滞在時間は思った以上に短い。ゴンドラが5本あるシャンプー売場で46・7秒、8本の米菓売場で45・4秒と、どちらも1分に満たない。先ほどの情報探索と購買前代替案の検討を含めての時間なので、じっさいには、ほとんど一瞬に近いだろうか。
 回遊性については、「主動線や中通路に対して、定番売場の通過率は低い(p37)」ことから、定番売場だけでは充分な売上を確保できないため、エンドや平台による島陳対応、買物順序への配慮、定番売場での欠品を生じさせない対処が重要とされる。

 ここで、非計画購買への施策方向が示される。「購買した商品は、消費者が視認した商品の何割かになります」。お客さまは、当然だが、見た品のなかから買っている。ということは、その基本式は「視認した商品数×買上率(p40)」となる。ここから有効な施策は、視認した商品数と買上率をアップすることになろう。
前者では、「店内をくまなく見てもらう」ため、客動線を伸ばすことと、そのための商品配置、後者では、「視線が止まった商品について適切な訴求(p42)」、探しやすく比べやすい陳列、ニーズに合ったゴンドラと店全体のレイアウトなどが指南されている。

 まとめの55ページに、お客さまの購買意欲を刺激するものが列挙される。

● 商品そのもの(パッケージ)
● 商品の集まり(グループ)
● 価格に関する情報(プライス・カード、値引き)
● 大陳(エンドや平台による陳列)
● POP
● 床広告
● デモンストレーション販売(デモ販)
● インストアTV

で、これらが長所と短所を持つことを、値引きを例に、直接的な効果は大きくても「その幅があまりにも大きいと、通常の売価に戻したときに商品がまったく売れずに、かえって売場効率を低下」させてしまうと教える。それぞれのプラス、マイナスを理解しての実践を勧めているのだ。

次回は、フロア・マネジメントについて紹介したい。                              

(次号につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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