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連載コラム

第14回【ノートシリーズ1】「小売店頭論の最高峰----流通経済研究所編『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』を解剖する(3)」

[ 2009年3月2日 ]

前回よりつづく)
 インストア・マーチャンダイジングの総論、消費者行動論と来て、つぎは、スペース・マネジメントのひとつ、フロア・マネジメントの番である。

4 スペース・マネジメント① フロア・マネジメント

 ちょっとおさらいになるが、インストア・マーチャンダイジングの柱は、商品力(商品露出力)を高めるスペース・マネジメントと、販促力(商品刺激力)を強くするインストア・プロモーションのふたつであった。
 このうち、スペース・マネジメントの核は、①レイアウトにまつわる課題を考えるフロア・マネジメントと、②定番売場の優劣や陳列そのものを究明するシェルフ・スペース・マネジメントである。今回は、前者のフロア・マネジメントのテーマに入っていく。いよいよ〝本丸〟に進出といってよい(後者のシェルフ・スペース・マネジメントは、来月、取り上げたい)。

 はじめに記されるのは、フロア・マネジメントの位置づけだ。「スペース・マネジメントでは、主として商品のスペースや陳列位置をコントロールすることによって、売上や利益の最大化を図ることを考えます。フロア・マネジメントは、そのなかでも『陳列位置』に焦点を当て」ることを明らかにする(p58)。

 したがってここでは、この「陳列位置」を大枠から考えるための、レイアウトづくりの問題を洗い出すことになる。じっさい説かれる題材は、消費者の購買行動とフロア・レイアウトである。お客さまが、店内をどう歩み回るかを吟味したあと、レイアウトを検討するのだ。

(1)購買行動の公式

 というわけで、まず、フロア・レイアウトを決める際、その前提となる〈購買の意思決定〉に対する〈売場の対応〉がどうあるべきか、ということが図示される(p59)。それを流れで示すと

〈購買の意思決定〉→〈売場の対応〉

●欲求認識→問題提起
●情報探索→情報提供
●購買前代替案の検討→情報削減
●情報統合(意思決定=購買)→情報削減

になる。
 これだけでは、ちょっとわかりにくいなぁと、図に見入ると、小さい字で、問題提起と情報提供には「おもしろく発見のある売場」と「分かりやすい刺激」、情報削減には「買いやすく選びやすい売場」と書き込まれていた。まだ抽象的なきらいはあるが、すこしつかめてきた。
 さらに本文では、もっと具体的に、問題提起と情報提供には「レイアウトや商品の配置、プロモーションなどによる情報訴求を心がける」こと、情報削減については「ゴンドラ内における商品の見やすさ、選びやすさが重要」と説明、そのうえで「来店客が行きたいと考えた売場にスムーズに誘導できるような売場づくり」を作ろうと呼び掛けている(p59)。これならよくわかる。

 このテーマにからんで、小売店のフロア・マネジメントに対するメーカーの役割にも言及される。「来店客の店内購買行動の把握やレイアウト施策の理解を通じて、最終的に必要とされる棚割提案やプロモーション提案に結びつける(p60)」こと、さらに中長期的な取り組みとして「小売業の考えるレイアウト計画や売場の部門配置を見直し、来店客にとって発見のある、刺激的な売場になるよう提案していく(同)」ことを検討すべきという。その理由がこう述べられる。

 特に近年では、部門間をまたがる複数のカテゴリーを組み合わせて、ひとつの売場で来店客にメニューや生活シーンといったソリューションを訴求し、購買を促すクロス・マーチャンダイジング提案が盛んになっています。このような提案は、データ分析や消費者調査を通じて現状の売場を評価し、かつ新しいソリューションを提示する必要があるため、メーカーの分析力や提案力が果たす役割は大きいといえます(p61)。

 メーカーや問屋だけでなく、店サイドも、そうか、そうなのかと、納得できる一節であろう。
 ついで、来店者の店内購買行動の分析に移る。購買行動といっても、要するに、お客さまの〈買い方〉だが、ここは本書の山場のひとつといってよい。購買行動を表す式は、過去の2著、田島義博監修『インストア・マーチャンダイジング』(ビジネス社)、その改訂版『インストア・マーチャンダイジングがわかる→できる 流通情報化と小売経営革新』(同 2001年)でも、精緻に論じられた客単価アップ要因のものに近い。この書では以下の公式がベースになる(p63)。

客単価=買上個数(←動線長×立寄率×買上率)×商品単価

 つぎに、この「客単価を規定する要因」一つひとつに解説がほどこされる。

①「店内をどれだけ歩いてもらえるか」という動線長
②「歩くなかで、売場にどれだけ立ち寄ってもらえるか」という立寄率
③「どれだけ売場内の商品を視認し、買い上げてもらえるか」という買上率
④「その商品をどれだけの数買ってもらえるか」という買上個数
⑤「商品単価のより高いものを買ってもらえるか」という商品単価

 すなわち客単価は、動線長、立寄率、買上率、買上個数、商品単価というステップを踏まえ、上がっていくのである。そのあと各々について、具体的な店頭施策があげられる(p62~65)。

「動線長」では、商品の分類、配置と陳列、レイアウト、
「立寄率」では、売場内の商品配置、情報処理をスムーズにさせる商品群の関連づけ、エンド大陳や島陳列による訴求、POP・試食販売による情報提供、クロス陳列による購買想起、
「買上率」では、適切な商品配置、商品パッケージの表示、適切な価格表示・特売情報の訴求、POPなどの情報内容、
「買上個数」では、商品分類と陳列、プロモーション施策の組み合わせ、
「商品単価」では、より高単価品の訴求がポイントで、買上個数と同じく、商品分類と陳列、プロモーション施策の組み合わせが大事になるが、これに加えて、購買履歴データを用いてのDMによる商品紹介も記される。

 このシーンでは、各ステップと施策の関連を学びたい。学びながら、ひとつの商品をあるべき場所に収める、というような日常の仕事が、全体のなかで、どういう意味を持つのか――そこをよくイメージしておきたいとも思う。
 さらにこの各ステップから、フロア・マネジメントによる効果が期待できるものとして、とくに動線長と立寄率があげられ、「動線長の最大化」と「効果的な刺激と提示と配置」という課題が提示される(p66)。つづいて、動線長から、通過率、立寄率、買上率、買上個数、商品単価までの調査方法が教示されるが、この部分は精読しておきたい(p68~70)。
 ともあれ、この辺までくると〝体系の美学〟といったものも堪能させられよう。

(2)フロア・レイアウト

 さて店舗の最重要テーマ、フロア・レイアウトの出番がきた。
 これは、いましがた「動線長」の施策のひとつとして、あげられていたものだ。ここではおもに食品スーパーが例示される。商品レイアウトは業種により、まったく異なるため、なにかを例にするしかない。とはいえ、基本的な考え方は、どの業種にも応用可能なので、このところは、本書でしっかり研究したい。以下、要点のみ触れていく。

 レイアウトは、入り口の数、青果からの中通路の有無により、4タイプにわけられる。入り口ひとつが「ワンウェイ型」、反対側にもうひとつあるのが「ツーウェイ型」で、中通路があるのが「開型」、ないのが「閉型」。この組み合わせで4タイプできるが、本書は、そのうち、ワンウェイ型は閉型と、ツーウェイ型は開型と、セットにすることを勧めている(p70~73)。

 そして登場するのが、売場の「優位置」「劣位置」というキーワードである(p73)。各々「店舗内で通過率が高い売場」「低い売場」と定義されるが、要するに、よく売れる場所、そうでもない場所ということだろう。これが、先ほどの4タイプで異なることが教示される。

 つぎに客動線のパターンが、3つ存在すると明かされる。

①主通路+定番売場
②主通路のみ
③特定売場を往復

の3パターンである。
 客動線から見ると、①が最も長く、③が最短となる。「動線長が長いほど買上金額が高くなる」以上、「店内を買いまわる客動線パターン①を増やすことで、客単価の増大を図る(p77)」施策が重要となる。この理由からも、ワンウェイ型は閉型、ツーウェイ型は開型、とそれぞれすべきことが改めて示され、さらにツーウェイ型では、外周の通路幅を広げることをも提案される(p78)。それぞれ道理と思われる。

 関連して、購買順序に配慮したカテゴリー配置についてもコメントされる。「客動線の最大化を図るには、その店舗で来店客がどのような順序で購買しているかを知ることが重要(p79)」とし、一例として、生鮮食品・惣菜→日配品→加工食品→菓子・調味料→日用雑貨の順があげられている。
 また、動線長を伸ばすため、店奥に、パワー・カテゴリー(「購買の計画性が高く、購入率も高いカテゴリー=来店者にとって、目的となるカテゴリー」p39)を置いたり、プロモーションコーナーを配することも提言(p82)。
 留意点として、売場ごとのスペース配分の考え方が提示される。

 最終的な調整は「坪当たり売上金額(=各売場の売上金額÷その売場が占める標準的な坪数)」を計算することによって決定します。坪当たり売上金額のたかい売場は、売場の優位置への配置もしくはスペース配分の拡大を検討すべきです。逆に坪当たり売上金額の低い売場に対しては、商品の改廃をにらみながら売場スペースの縮小や再配置といった適正化をすることになります(p83)。

 すなわち、坪売上、あるいは坪効率の高い売場は、いい場所で大きく展開するのが肝要というのである。この本における重要な指摘のひとつといってよい。 

 次回は、前述のように、シェルフ・スペース・マネジメントのテーマに移っていく。

(次号につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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