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連載コラム

第15回【ノートシリーズ1】「小売店頭論の最高峰----流通経済研究所編『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』を解剖する(4)」

[ 2009年4月1日 ]

前回よりつづく)

 これまでインストア・マーチャンダイジングを、総論、消費者行動論、スペース・マネジメントのひとつ、フロア・マネジメント論と研鑽してきた。つぎは、スペース・マネジメントのもうひとつの論点、シェルフ・スペース・マネジメントについてである。

5 スペース・マネジメント② シェルフ・スペース・マネジメント

 ではそもそも、シェルフ・スペース・マネジメントとはなんであろうか? 
これは「商品の陳列スペースや陳列位置をコントロールし、『長期的視点』で売上、利益の最大化を図ろうとするもの(p88)」と定義されている(シェルフとは棚を指す)。ここでの本命課題は、定番売場と棚割りである。このフィールドは、メーカーや問屋も深く共有できるポイントといってよい。具体的には「定番売場のなかでの優位置・列位置の把握や棚割の計画、改善が主要テーマ」になる(同)。

(1)定番売場

 話は定番売場から入る。
 切り口は、やはり優位置と劣位置である。これらを店からとらえると「売れる場所」「売れない場所」という意味であったが、消費者サイドからみると、優位置とは「買いやすい位置」で、劣位置とは「買いにくい位置」となる。だから、この定番売場の優位置と劣位置がわかるということは、おのずと、お客さまの買いやすい場所、買いにくい場所をつかんでいるということを示している。したがって、優位置と劣位置を知っておけば「それだけ消費者の購買機会のアップを期待(p88)」できるのだ。

 優位置と劣位置を考える局面はふたつあり、ひとつは、売場内でのゴンドラの設置場所、ふたつ目は、ゴンドラのなかでの位置取りである。つまり売場におけるゴンドラ、ゴンドラにおける棚段の場所取りという問題になる。
 前者では、自然なことだが、動線方向(おもな進行方向)に対し手前側が優位置、その奥側が列位置となる。ただし、ゴンドラの一番手前は「視線の出始め」のため、見過ごされやすく「中」の位置とする(p91)。ここらの事情は、実感としてよくわかる。
 後者のゴンドラの棚段では、右よりも左に優位性があり、また「腰から胸くらいの高さ」のゴールデン・ゾーンも重視される。高さについて、お客さまは「水平な視線よりもやや下方の範囲を見ています」と注意を促したうえで、自然な体勢で見える範囲を「自然視野」というキーワードで表す(p92)。いわゆる「パッと見」であろう。もっともこれには留意点も指摘される。

自然視野は、消費者の身長、ゴンドラの形状、通路幅、棚談構成やゴンドラの位置などによって多少変わるため、それにともなってゴールデン・ゾーンも変わります。たとえば、玩具菓子のゴンドラの棚では、子供の目線の高さに合わせた陳列が必要になってきます(p92)。

 加えて、ゴンドラの形や通路幅により、販売力が変わるという非常に重要なアドバイスもある。ゴンドラの下部ほど奥行きを持つ「ひな壇型」では、ひな壇の出幅が露出量を増やすし、通路幅が広いほうが見える範囲が大きく、それぞれアピール度が高くなるなどだ。
 棚段の悪い場所(列位置)の克服法も手ほどきされる。たとえば下段の商品は、立てるよりも寝かせたほうが見えやすい。そして「視線と商品のパッケージができるだけ直角に接することができるような陳列の工夫が必要(p96)」と締めるのである。納得性の高い一節といえよう。

(2)棚割り

 引きつづき棚割りについて触れられる。改めて問えば、では棚割りとはなんだろうか。この書では「棚割(プラノグラム)は、定番売場に商品をどのように割り当て、陳列するかを決定する陳列・販売計画(p98)」と述べつつ、こう意義づける。

優位置・列位置の考え方を初めとした消費者の買い方の視点を重視した陳列・販売計画を立てる必要があります。したがって、棚割の作成は、売場の生産性の向上を図る上では、必須のプロセスとなってきます(p98)。

 本書は、棚割りを作るステップとして、グルーピング、ゾーニング、フェイシングという3段階を用意する。言葉の印象からおおよそ察せられるであろうが、ここから議論が広がっていくので、ていねいに引用したい。

グルーピングとは、消費者が商品をどのように括っているかを表現するステップです。売場の括りが消費者の括りと同じであれば、消費者にとって最も商品を探しやすく、比較しやすく、買いやすい売場になります。 ゾーニングとは、括られた商品グループごとに、陳列スペースの配分と配置を決定するステップです。スペース配分については売上構成比を、配置については各グループ間の関連性をそれぞれ考慮します。 フェイシングとは、グループ内の各アイテムのフェイス数と陳列位置を決定するステップです。フェイシングは、アイテムの販売実績やフェイス効果を考慮しておこないます(p98~99)。

 マクロからミクロへの流れが感じられる説明といってよい。
つづいて、棚割り作成の視点に移る。この点は「同じ品揃えでも、グルーピングやゾーニングの仕方によって、まったく別の売場になってしまいます(p99)」と断ったうえで、以下のように記す。

棚割作成の視点として、まず消費者にとって買いやすい売場であるか、という視点を最優先すべきです。たとえば、見やすい、選びやすい、探しやすい、取りやすい売場か、消費者が欲しいと思う商品が品揃えされているか、という視点で棚割を作成する必要があります。その上で、売上の最大化や補充作業の効率性、ブランドごとの商品力などを考えます(同)。

 この文は、今後の指針になるので、精読しておきたい。以下、グルーピング、ゾーニング、フェイシング、ひとつずつ解説する。
まずはグルーピング。このグルーピングにより買いやすいかどうかが決まるが、そのことを、顧客の視野に入る商品群(視野集合)と顧客が同一グループと見なしている商品群(想起集合)の重なり(選択集合)から検討していく。わかりやすく言い換えると、一目で見える商品のなかに、同じグループと思われるものが多いと買いやすくなる、ということである。その結果として売上が上がるのだ。
それはそうだと思いつつ、では自分の店、みずからの売場が、果たしてそうなっているかどうか、ひとつずつ見つめ直したいところではある。
ついで、グルーピングの基準を作る手順が語られる。

まず消費者にとっての買いやすさを考慮しながら、商品特性の似ている商品群をまとめ、それを一つのグループとします。次に、商品のタイプ、ブランド、容量、パッケージ、形態などを軸に、いくつかのサブ・グループに分けます(p102)。

ここでは、よりおおまかな意味での分類の考え方が、教示されている。
さらにそのまとめ方の妥当性を、同時購買、比較購買の視点からチェックしようと呼び掛ける。

ついで説かれるのがゾーニングである。ゴンドラに水平に陳列される「ホリゾンタル陳列」と垂直な「バーティカル陳列」のちがいに触れたあと、大事なスペース配分についてこう言及する。

各グループへのスペース配分は、売上実績や売上増加率をもとにして、目標となる指標(売上金額、粗利、営業利益等)の予測値に比例するように決定します(p106)。

 「売上増加率をもとに」とか「目標の予測値に比例」といった表現がある点に、思いをめぐらしたい。
 さらにそのうえ、サブ・グループにわけるときにも注意を促す。「一つのサブ・グループの大きさは、消費者の自然視野に収まる範囲にとどめる必要があります(同)」と。

 3つ目は、アイテムを割りつけるフェイシングである。この原則はそう難しくない。

販売量の大きな商品にはフェイス数を多く配分します。また、利益性の高い商品には優位置を与えます(p110)

 ということだ。フェイス数を増やした商品の売上は上がる。その増減が売上に及ぼす影響を〈フェイス効果〉、この効果を数値化するものを〈フェイス弾性値〉、フェイス増加に伴って効果が逓減することを〈フェイス効果逓減の法則〉といい、そのフェイス数は「販売実績に応じて決定する」ことなどなどが書き連ねられている。
 棚割りの実行と検証にも触れられる。これを実行したら、その成果を売上から検証する。もし目標に届かないのなら、品揃えを見直さなくてはならない。具体的には、死に筋アイテムのカットと新規アイテムの導入を指しており、この留意点が4点あげられる(p113)。

① 自店にはないが、他店でAランク商品は導入候補
② 自店でも他店でもCランクは、カット候補
③ カット候補に代替アイテムがあるかどうかチェックする
④ 他店ではAランクだが、自店ではB、Cランクという商品は、陳列場所やフェイス数を改善する

 次回は、インストア・マーチャンダイジングのもうひとつの柱、インストア・プロモーションである。

(次号につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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