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連載コラム

第16回【ノートシリーズ1】小売店頭論の最高峰――流通経済研究所編『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』を解剖する(5)

[ 2009年5月7日 ]

前回よりつづく)

ここまでインストア・マーチャンダイジングを学んできた。総論、消費者行動論ときて、インストア・マーチャンダイジングの柱のひとつであるスペース・マネジメントでは、そのなかのフロア・マネジメントとシェルフ・スペース・マネジメントを、それぞれ学習した。今回は、インストア・マーチャンダイジングのもうひとつの柱、インストア・プロモーションについて学ぶ。


 本書『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』をもとに、ここまでインストア・マーチャンダイジングを、4回分、学んできた。
総論、消費者行動論ときて、インストア・マーチャンダイジングの柱のひとつであるスペース・マネジメントでは、そのなかのフロア・マネジメントとシェルフ・スペース・マネジメントを、それぞれ学習した。そして今回は、とうとう、インストア・マーチャンダイジングのもうひとつの柱、インストア・プロモーションにたどりついた。インストア・プロモーションとはなにか、どんなものがあるのか、ここも、じっくりとノートしていきたい。

6 インストア・プロモーション

(1) インストア・プロモーションの位置づけと目的

はじめに、インストア・プロモーションの位置づけが示されている。
購買行動に直接働き掛けるマーケティング活動を〈セールスプロモーション〉と呼び、このうち、POP、サンプリング、キャッシュバックなど店内のものを〈インストア・プロモーション〉、路上看板、折込みチラシといった店外のものを〈アウトストア・プロモーション〉という。
ついで、メインテーマであるインストア・プロモーションの役割が記される。「購買の意思決定に強く影響」するというインストア・プロモーションのその役割は、「消費者に対し、店頭で効率よく刺激を与えることを通じて、消費者の店内での情報の取得と処理を促進すること(p118)」である。
 そのあと、インストア・プロモーションには、価格主導型と非価格主導型のふたつあると述べられ、加えて目的も明かされる。ここはとくに重要だ。インストア・プロモーションは短期的な目的だけでなく、長期的な目的も必要として、以下のものがあげられている(p120)。

● 長期的なストア・ロイヤルティーの形成
● メーカーにとってのブランド・スイッチの獲得
● 新製品の認知、トライアルの促進
● 新規ユーザーの獲得
● 既存ユーザーの利用頻度増

 ひと目でわかるように、一つひとつが、店の生命線といえるほど大切なテーマとなる。
これ以降では、インストア・プロモーションの具体策が、価格主導型と非価格主導型のふたつの観点から紹介されていく。それでは価格主導型から入ろう。

(2) 価格主導型インストア・プロモーション

価格主導型では、値引きと特売などの価格プロモーション、特定商品の値引き券であるクーポン、まとめ買い時に売価を引き下げるバンドル販売、期間限定、売価維持のうえで容量を増やす増量パック、現金なりポイントを還元するキャッシュバック、ポイント・キャッシュバック、単品ポイント・キャッシュバック、会員カードを持つESP会員に値引きする会員価格販売などがガイダンスされる(p122~126)。
このうち、バンドル販売とキャッシュバックについて触れておきたい。「1個200円のところ、2個で300円」などと複数購入を促進するバンドル販売は、以下のように説かれる。

まとめ買いは、購買を前倒しするだけでトータルの購買量は変わらないという結果になる場合があります。しかし、次回購買時に起きるか分からない自社製品のリピート購買を前倒ししてその時点でおこなってもらうという側面もあり、カテゴリー内のシェア向上を促進する効果が期待できます(p124)。

最近とりわけ話題を集めるキャッシュバックについては、ポイントカードを使うポイント・キャッシュバックにからめてこう解説される。

キャッシュバックとは、商品購入者に対して現金を返還することで購買を促進するインストア・プロモーション手法です。近年では、現金ではなく、FSPカードのポイントを返還するポイント・キャッシュバックが普及しつつあります。FSPとは、Frequent Shoppers Programの略で、会員カードを配布し、カード保有者に購買金額の一定割合のポイントなどを還元するプログラムのことです(p125)。

このポイント・キャッシュバックは、次回の来店以降の使用を前提としており、再来店が必要なことから「店舗への来店促進、および競合他店への流出を防ぐ『顧客の囲い込み』に効果を発揮(同)」すると言及する。とはいえ、ここで注意すべきことが明かされる。

ただし、FSP自体の本来的な目的は、FSPを通じての自社優良顧客の把握と、その分析を通じた売場作りにあります。そのような本来の目的のためではなく、ポイントによる来店促進のために利用されるだけでは、競合他店がFSPを導入した時点で自社の優位性は徐々になくなっていきます(同)。

心したい指摘ではある。
このあとに、ポイント・キャッシュバックを発展させたものとして、単品ポイント・キャッシュバックがつづく。これは「一律ではなく、ある特定の商品のみに対して、ポイントを増額して提供するもの(同)」という。

(3) 非価格主導型インストア・プロモーション

一方、非価格主導型では、エンド陳列や島陳などの特別陳列、ウェブチラシ・メールチラシ・携帯チラシを含めたチラシ、POP、関連する複数のカテゴリーを組み合わせるクロスMD、実演販売とかデモ販ともいわれるデモンストレーション販売、少量の試供品を提供するサンプリング、ノベルティ(景品)を提供するプレミアム、商品購入を条件とするかしないで2タイプがある懸賞、あと、コンテスト、スタンプカード、DMなどについて、留意事項とともに懇切な説明が加えられる(p126~133)。このなかから、いくつかを、本書に沿って紹介していきたい。

はじめは特別陳列の意味から。

特別陳列は、商品の露出度を高め、購買を促進するプロモーション活動です。商品を常時陳列している定番売場と呼ばれるゴンドラ内ではなく、一定期間、通過率の高い売場に商品を陳列します。売場の形状により「エンド陳列」「島陳列」と呼ばれます(p126)。

ついで特別陳列の柱、エンド陳列の販売力が検証され、商品そのものの力以外にも、通過率、位置、陳列量、陳列アイテム数、陳列期間、演出方法などの諸要因について整理される。ここでは、通過率、陳列量、陳列期間の3点との関連を学んでおく。
 

エンド陳列売場前の通貨率が高いほうが、それだけ商品と接する来店客が多くなるので、販売力も高くなります。(p127)

陳列アイテムの陳列量が多いほど露出度は高まり販売力も高くなります。しかし、アイテム当たりの陳列量を大きくすると、(中略)陳列アイテム数が少なくなりすぎるため、陳列量とアイテム数のバランスが適度になるように調整する必要があります(同)。
あまりに長期間のエンド陳列は、消費者の飽きを招くため望ましくありません。ある実験では、同じ陳列条件(場所、アイテムなど)でエンド陳列をおこなうと、日数の経過とともに、売上が減少することが確認されています(同)。

 一見、当たり前のようだが、実証的実験を踏まえてのコメントでもあり、押さえておきたい基本的見方といえよう。さらに、定番売場での欠品を発生させないこと、演出性も大切なことから、安売りに頼らず「店舗やブランドの魅力を高めるようなテーマ設定や、売場に顧客の注目を集めるようなボードなどの販促ツールの設置も重要(p128)」と提言している。
 
次回は、非価格主導型インストア・プロモーションのつづきと、インストア・プロモーションの目的である。

(次号につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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