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連載コラム

第20回【ノートシリーズ1】小売店頭論の最高峰――流通経済研究所編『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』を解剖する(9)

[ 2009年8月31日 ]

前回よりつづく)

いままで、インストア・マーチャンダイジングの2大柱、スペース・マネジメントとインストア・プロモーションを詳しく見てきた。これで、基本的な骨格は、だいたい学習できたと考えられる。今後は、インストア・マーチャンダイジングの応用問題として、業態別の展開からドラッグストアに触れ、ついでカテゴリーマネジメントのテーマに取り組んでいきたい。

(7) インストア・マーチャンダイジングの応用(1)――ドラッグストアでの展開

第7章では、総合スーパー・食品スーパー、コンビニエンス・ストア、ドラッグストアの業態別に、インストア・マーチャンダイジングの生かし方が描かれる。ここは応用編に当たるためドラッグストア以外は割愛するが、該当する業態の方々は、この部分こそ熟読すべきものと思われる。 それでは、ドラッグストアのインストア・マーチャンダイジングの方向性に触れてみたい。このなかで押さえるべきは、買上点数の増加、スペース・マネジメントの方向性、インストア・プロモーションの方向性の3点である。これらをごく簡単にだが、まとめてみよう(p188)。

(1)買上点数の増加

ドラッグストアのお客さまは、月2~3回来店し、日用雑貨、化粧品、医薬品などを、豊富な品揃えから割安に購入したいと考えている。買上点数を増やすには、関連販売とまとめ買いを促す。

(2)スペース・マネジメントの方向性
  
パワーカテゴリーである生理用品、トイレットペーパー、シャンプー、基礎化粧品などを分散配置して客動線を伸ばし、途中で「もう一品型」商品の非計画購買を促進する。

(3)インストア・プロモーションの方向性

来店頻度は低いため、食品スーパーと比べプロモーション効果は長い。実施サイクルは週1回から月2回が目安。ポイントカードの特典は評価されており、ポイントプログラムの活用を図ることは重要。また専門性が高い業態であり、スタッフの商品知識の向上やOPによる情報提供が重要となる。

 簡単といっても、あまりにあっさりではないか、という方は、ぜひとも本書に当たっていただきたいと思う。

 話は若干変わるが、最近、コンビニエンス・ストアやGMSが、ドラッグストアと提携するケースが相次いでいる。とりわけ、コンビニ第2位のローソンとドラッグストア最大手マツモトキヨシホールディングスの場合は、両社で共同出資会社を設立し、コンビニとドラッグストアを融合した新型店舗を出店していくという。
 このような動きは、業種業態を超えた小売同士の水平連合、あるいはメーカーや卸を巻き込んでの垂直連合という形で、さらに、多彩に、大胆に、そして苛烈になっていくにちがいない。そんなとき最も問われるのが、まぎれもなくその成否であろう。それをわけるのは、企業文化の刺激とともに、お互いが持つインストア・マーチャンダイジングの学び合いではないだろうか。

(8) インストア・マーチャンダイジングの応用(2)――カテゴリーマネジメント

応用問題のふたつ目はカテゴリーマネジメントである。 カテゴリーマネジメントとはなにか? そう聞かれれば、誰もが、カテゴリー単位でマネジメントを組むことでは、とひとまず想像できようが、それ以上はちょっと・・・・・・となるかもしれない。以下、そんな、一見、わかりやすそうだが必ずしもそうでない、このテーマに迫っていこう。 本書ではまずひとつの定義を紹介する(p192)。

(カテゴリーマネジメントは)流通業者やサプライヤーが商品カテゴリーを戦略的事業単位として管理するプロセスであり、消費者価値の提供に焦点を当てることによって事業成果を向上させることを目的とする(ECRの産業合同プロジェクト)。

 本稿の執筆者は、当定義のポイントを、(1)小売だけでなく、メーカーや卸とともにマネジメントすることと、(2)目的を消費者への価値提供に置くことのふたつとみる。ここから改めて定義を検討し、そのうえでインストア・マーチャンダイジングの役割をこう記す。

カテゴリーマネジメントとは、商品カテゴリー単位で目標や戦略を決め、消費者に価値を提供することを通じて目標を達成していくという取り組みです。消費者に価値を提供するということは、消費者購買行動に合わせた売り方をするということと密接な関係があります。 そこで、カテゴリーマネジメントの取り組みのなかでは「消費者行動に基づいて、商品の価格、品揃え、プロモーションなどを決定して、売上や利益を最大化させていく」というISMの考え方が、成果を向上させる手段として役立てられるのです(p193)。

 ついで各論に踏み込んでいく。

インストア・マーチャンダイジングの実施主体はあくまで小売業であること、結果として利益を享受できるメーカーや卸売はサポートに徹すること、したがって「小売業の戦略によって実行する内容は異なって(p193)」いくことが述べられる。  実践としては、PDCAのマネジメントサイクルを回していくのだが、具体的には「POSデータを分析することで、プラノグラム(定番売場の商品棚割)やプロモーションといったマーチャンダイジングの戦術を作成することが中心(p195~196)」となる。

 さらに取り組み上の留意事項が記される。それぞれの業務手順や組織構造の確認とか、小売業者との戦略共有である。その意味で、以下の指摘は当たり前に思えるが、極めて重要。

カテゴリーマネジメントの取り組みを成功させるためには、小売業がカテゴリーマネジメントを実行するための組織になっていることが必要です。そして、サポートする卸売業、メーカーとの協力関係が構築されていることが必要です(p196)。

 カテゴリーマネジメントの進め方は、8つのステップをたどる(8ステップモデル)。

 カテゴリーの定義(カテゴリーマネジメントに取り組む範囲を決定する)
 ↓
 カテゴリーの役割(小売業にとってカテゴリーに求められる役割と成果を決定する)
 ↓
 カテゴリーアセスメント(カテゴリーの現状分析および対策の方向性を診断する)
 ↓
 カテゴリースコアコカード(明確な評価基準を設定して目標を確認する)
 ↓
 カテゴリー戦略(カテゴリーの方針を決定する)
 ↓
 カテゴリー戦術(具体的なマーチャンダイジング施策を決定する)
 ↓
 プランの実行(計画したマーチャンダイジング施策を売場で実行する)
 ↓
 カテゴリーのレビュー(売場で実行した計画の成果を検証して課題を発見する)
 ↓
 カテゴリーの定義
  
 レビューから定義に戻ってサイクルが完結する。PDCAサイクルの応用といってもよい。細目は本書をご精読いただきたいが、ここでも、いくつかの留意点が指摘されている。
                              

(次号につづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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