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連載コラム

第21回【ノートシリーズ1】小売店頭論の最高峰――流通経済研究所編『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』を解剖する(10)

[ 2009年9月30日 ]

前回よりつづく)

 カテゴリーマネジメントの定義づけは、ややもすると、売場単位でくくられがちだが、本書は、その見直しをこのように提案する。

カテゴリーマネジメントは消費者への価値の提供を目的としているわけですから、カテゴリーの括り方も本来は消費者のニーズに合わせて組み直されるべきです。つまり、消費者が商品を購買する際、どのようなグループのなかから選択しているのか、その消費者の選択範囲となっているグループによりカテゴリーの範囲を定義するということです(p200)。

 ついで、カテゴリーを分析・診断するアセスメントのステップでは「課題を見つけるときは比較が必要」なことを訴える。自社データは、買い合わせ分析(ショッピングバスケット分析あるいは関連購買分析)、ID付きPOSデータ(FSPデータ)と顧客属性データとの照合でつかめるが、それだけでは発見できない課題があるという。

いざ課題を見つけるために診断するとなると、比較する対象が必要になります。現状の売上の水準は同じ業態のなかでは高いのか低いのか、同じ地域のなかで競合店と比較したらどの程度の位置にいるのかなど、比較する基準がなければ診断することができません(p204)。
市場や競合と比較して課題を明らかにした上で、解決する方法を検討するのが、カテゴリーアセスメントのステップとなります(p205)。

 カテゴリー戦略にもとづく戦術を決める際には、これまでの学習が生きてくる。フロア・マネジメントとシェルフ・スペース・マネジメントの考え方からは、配置→棚割り作成→棚割り内のゾーニング計画→単品フェイスの割り当てを、インストア・プロモーションからは、POSデータの分析から得られた改善策にもとづく販促計画を、それぞれ検討し決定していくのである。

プランの実行こそ大事な局面だ。実施の前までは協働でも、実施そのものは小売店の仕事になる。したがって「カテゴリーの課題の改善と業績の向上に向けた問題意識を売場の責任者と共有することが必要(p207)」になり、そのポイントを

小売業の商品部門から店舗部門に対して計画を正確に伝えていくこと(同)と強調する。

 最終段階の検証は、業務フローサイクルを、つぎにつなげる大事なステップにほかならない。売場での実施状況――実施できたか、実行レベルは高かったか、低くなかったか――を確認することで、その結果を招いた要因を分析しなくてはならない。たとえば、できなかった場合は、そもそも困難な計画だったか、それとも単に内部の連絡不足であったのか。これらを見直したうえで再度取り組んでいく運びとなろう。
 そのうえで記されるつぎの一節こそ大切になる。

ここで得られた評価は、事例としてノウハウとして蓄積していくことができます。カテゴリーマネジメントの取り組みを継続していくと、このようなノウハウが蓄積でき、より精度の高い計画が立てられるようになります(p208)。

 より具体化されたカテゴリー戦術は、214ページ以降で展開されるが、成果を上げるという実践面で考えるなら、こここそが最重要といっても過言ではない。要点として、品揃えの見直し、特性に合った売場配置の計画、定番の棚割り計画、価格や販促タイミングの見直し、クロス・マーチャンダイジングがあげられるが、この点に少し深入りしてみたい。

 品揃えの見直しは、カテゴリー戦術の基本である。
ここでは、ふたつの目的とひとつの方法、注意が述べられる。目的は、データ分析で明らかになった市場とのギャップを埋めることと、サブカテゴリーの成長性やカテゴリーの戦略に合わせることである。これらにより、商品数(品揃えSKU数)を増減させるのが眼目だ。
 サブカテゴリーとは「カテゴリーを細分化した商品グループ」のことだが、200ページに「消費者の選択範囲となっている商品グループをサブカテゴリーに当てはめていくのが基本的な考え方」とあるように、消費者ニーズにしたがって定義すべき旨が、繰り返し説かれている。
 方法とは、店の単品は、POSデータと小売業の市場データで、各々ABC分析をおこない、両者を合体させたクロスABC分析で、導入とカットのものを決めること(p214~215)。注意すべきは、このとき、サブカテゴリーという商品グループをはずしてはいけないということだ。代替できるものがなくなるからである。

つぎは、これも肝心な配置の問題。この箇所の引用はとりわけ熟読したい。

カテゴリーの役割や買い物順序、他のカテゴリーとの買いあわせなどを考慮して、売場通過率などフロア・マネジメントの基本的な考え方をもとに、そのカテゴリーの売場を店内のどの位置に配置するか決定します(p216)。

 リスクもあるので慎重に、というアドバイスも。つぎはゾーニングの番だが、ゾーニングとは、要するに、スペースをサブカテゴリー別に配分することである。

現状の棚割でスペース生産性を算出して売場の効率性を評価し、スペースの拡大縮小を検討します。そして、カテゴリーの戦略を考慮して、サブカテゴリーごとの役割に応じてスペース配分や配置位置を決定します(同)。

 そのうえで、単品の陳列位置とフェイス数を決めるのだが、その基準はこうなる。

基本的には収益性の高い商品を優位置に配置し、売れ行きのよい商品のフェイスは多く配分します(同)。

 ついで価格と販促。
 価格では、価格弾力性が高い商品を対象にすべきこと、POSデータからベストタイミングを図るべきこと、販促では、買い合わせを考えたクロス・マーチャンダイジングをおこなうべきことが各々指南され、そのうえで同時購買分析が提言されている。その手順は以下の通りである(p217)。

(1)主となる商品Aが含まれるレシートデータをすべて抽出する

(2)商品Aと一緒に買われる商品をリストアップする

(3)商品Aと一緒に買われる比率(条件付き購買比率)を算出する

この(3)の比率と、通常に購買される比率(購買確率)を比較して、その割合(リフト値)が大きいものが、一緒に買われやすい商品となり、一緒に並べるべき対象であるという。計算方式は

リフト値=条件付き購買確率/購買確率

となる(p218)。

 カテゴリーの最後は、現場特有の問題――実行性をいかに高めるかという「売場づくりとISM」のテーマである。
 お客さまによる購入、それに伴う補充と発注、新商品の発売など、売場はつねに流動している。そういうなか、同じ水準を維持するのは容易でなく、そのためには、棚割り表にもとづく売場づくりが欠かせない。そして棚割り表の更新と検証の必要性も強調される。さらに棚替えにからみ、その比較検証も求められる。

効果を検証するための手段のひとつとして、売場が実現できた店舗と、人員の不足などで棚替えの実行が遅れた店舗の実績を比較する方法があります。効果があれば実現できた店舗の実績は伸びているはずです。棚替えの検証をする際は、全体の数値の変化の把握と同時に、実行状況を考慮して分析したほうが正しい判断ができます。そして、棚替えを定期的におこなうと同様に、検証も継続して実施しなければいけません(p220)。

 この点も、努力を成果に結びつけるには、かなり大切になってくる。
 お店における売場実行力こそが、カテゴリーマネジメントの成果を左右する。だが、製配販の三者が「消費者に価値を提供する」という目的を共有し、実行力を高め成果をあげるには、共通言語が必要となる。それこそ、インストア・マーチャンダイジングであると、つぎのようにまとめている。

ISMは、消費者との接点にある売場を管理する現場の担当者には理解しやすい考え方です。むしろ、ISMの考え方は、店舗の担当者にとっては経験的、感覚的にも理解できて、当然のことと思われる内容です。 そこで、ISMの考え方をもとに計画を立てて、店舗の担当者のその内容を説明していくことができれば、内容が伝わりやすくなり実行力が高まることが期待できます(p222)。

次回は、インストア・マーチャンダイジングの今後の展開についてである。

(次号につづく)


新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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