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連載コラム

第23回【ノートシリーズ1】小売店頭論の最高峰――流通経済研究所編『インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』を解剖する(12)

[ 2009年11月30日 ]

前回よりつづく)

 今回は本書インストア・マーチャンダイジング 製配販コラボレーションによる売場作り』のノートシリーズの最終回である。締めくくりは、インストア・マーチャンダイジングの生かし方。

(10)終わりに――インストア・マーチャンダイジングの生かし方

 終わりに当たり、この本の生かし方について、最後の確認をしておきたい。
 本書を書き上げる際、執筆グループは、極力、モデル店での調査結果から答を出すよう腐心した。論述の仕方をみれば、それはすぐに伝わってくる。
 どの店にとっても本来は、自店で同様の調査をできるのが理想である。本部や経営陣は、まずその可能性を追求すべきだ。それも、同じおこなうなら本格的というのが望ましい。だが、やれるところから開始するのも方法だろうか。
 もっとも、完璧に調べないとなにもはじまらないのか、といえばそんなことはない。発想、着想そのものを学習することも大事である。その観点から思いつくことを、以下に並べてみよう。

(1)お客さまのニーズから出発していることを踏まえる

 まず自社、自店の顧客ニーズをとらえ分析する。客層は、POSデータなどからつかめようが、ニーズ自体を知るには、みずからの生活から考えをめぐらしたり、想像を豊かにしたりで、仮説を立て、検証していくことも必要だろう。
 振り返ってみると、これまで私たちは、ニーズ、ニーズといいながら、果たして、それをつかむ努力を、どこまで追ってきたろうか。この際、インストア・マーチャンダイジングの手法を駆使し、顧客ニーズを把握し、それを踏まえた店舗コンセプトを設けたい。

(2)体系的・科学的発想を学ぶ

 売上を上げることは、トータルなものである。臨機応変の対処も大事だが、大きな方針を立てて、経験を蓄積していくのも不可欠だ。
 小売店を経営するとき、具体的な店づくりとか日々の販売局面では、思いもつかない事態によく直面させられる。その一つひとつの問題に、確固とした原理のもと、挑み試み答を出していかねばならない。しかも一貫した考え方で貫き通すのである。明快な店舗コンセプトにより、MD(商品政策)、価格、販促、サービス、設備などの活動を展開したいのだ。
 このとき、正しいインストア・マーチャンダイジングの知識が、まさしく、それを裏づけてくれるだろう。

(3)各業種、店、売場にあてはめて考える。

 第6章において、総合スーパー・食品スーパー、コンビニエンス・ストア、ドラッグストアの各業態については、シミュレーションされている。だが店は生きものであり、1店1店異なる面もある。まして業種がちがえば、このインストア・マーチャンダイジングの知見、知恵といったものを、いかに応用して定着させるか、その答が同じはずもない。各業種、各店、各売場の差異を踏まえ、その適用範囲を検討しつつ、その試行をつづけていきたい。それがまた、新たなインストア・マーチャンダイジングの展開にもなろうし、本来の目標であるべき店ごとの構築にもつながっていく。「各業種、店、売場にあてはめて考える」ことを忘れてはならない。

(4)自分の、自分たちの言葉に翻訳し、租借して使う

 本書にはあきれるくらい、いくつものキーワードが出てくる。だが親切にも、これは本の最後に「用語集」としてまとまっている。なんだったら、ここを最初に当たっておいてもいいかもしれない。
 ともあれ、一見難しそうなカタカナや表現が出てきたら、みずからの店、売場では、いかなる言葉に当てはまるのか、どういう仕事、業務を指しているのか、よく吟味しながら読みこなしていきたい。自分の、自分たちの言葉に翻訳する――租借して使うのである。そうしてはじめて、このインストア・マーチャンダイジングは、〝生きたノウハウ〟として体得できるのではないか。

(5)実践に応用する

 まず使える部分をミクロ的に使ってみる。たとえば売場の作り方では、棚割りなどシェルフ・スペース・マネジメントの考え方は有益だろう。
 マクロ的にも試してみたい。ひとまずフロア・マネジメントの方法論を生かしてみるのは、どうであろうか。
 とはいえ、応用はあくまで応用なので、そっくりそのままというのは、原則として、あまりお勧めできない。自店の、あるいは自分のノウハウのなかに、実験しながら、いかに組み込んでいくかということが問われるのだと思う。
 もちろん本書で繰り広げられたインストア・マーチャンダイジングのなかには、すでに自店で活用しているものとか、業界のノウハウとして定着しているものもあるだろう。そのうえに立ち新たなノウハウを獲得するのが、応用のモチーフにほかならない。

 このように対処することで、ひとつの売場、ひとつの店舗、ひとつのチェーンが、お客さまの視点に立ったうえでのイノベーションを図れるにちがいない。これこそが本書の最も有効な学習、すなわち活用方法ではないだろうか。

 次回は、中央経済社の『シリーズ流通体系』全5巻の第1巻、石井淳蔵・向山雅夫編著による『小売業の業態革新』を紹介する。

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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