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連載コラム

本格的な店舗経営のテキスト『新・小売業経営の条件』(4)

[ 2011年1月6日 ]

前回よりつづく)

 ついで、品揃えの「広さ(品種)」と「深さ(品目)」の組み合わせから、4つのタイプが示され、適合する業種、業態が明らかにされる(p226~228)。その4つとは「広い、浅い」「狭い、深い」「広い、深い」「狭い、浅い」のタイプであるが、どんな業種、業態が該当するかは、ぜひ本書をご参照いただきたい。で、これはつぎの商品戦略につながっていく。

 商品戦略もチェックすべき重要テーマとなる。その方向が、大きく5つ示されている。

(1)主力商品を中心に部門構成
(2)大型専門店の6つの商品分類
(3)客数獲得商品と収益性商品のミックス
(4)機能性満足商品と心理的満足商品
(5)商品構成最適の原則

 このうち、いくつかの視点を確認しておきたい。
 まず大型専門店の6つの商品分類として、普通品、流行品、新製品、特殊品、BB商品、MP商品があげられる(p233~235)。つぎに、売上を伸ばす工夫として、「荒利益率は低いがよく売れる」ブランド品などの客数獲得商品(動員力商品)を推奨する一方で、お客さまはそれだけで満足はせず、「生活がよくなるにつれ、商品によってはもっと趣味を満足させるもの、楽しいもの、美しいもの、遊びのあるものを求めるようになる(p236)」と、趣味的要素が強く収益性の高い商品(収益性商品)も、バランスを取って売るよう説く。
 また「人は一定の経済的満足を得た後は、心理的満足を得られる商品を求めるようになる」というマズローの主張を紹介しつつ、「商品は機能性満足商品と心理的満足商品の二極に分かれる傾向がある」と指南している(p237)。
 客数獲得商品と収益性商品のミックスのところで、注目すべきコメントが見つかった。

毎年ほとんど変わらない品揃えをしていると、必ず、客数は減る。売上高を前年対比で増加させていくためには、常に、ねらっているマーケットの小さな変化も捉えて、品揃えの工夫をしなければならない(p235)。

 よくよくかみ締めたい一節だ。さらにこれは、商品構成最適の原則を解説するなかでの発言にもつながる。

商品構成は時期によって、場所によって、また競争によって絶えず変更しなければならない。どんなによく計画された商品構成でも、常に客層一〇〇%適合するということはあり得ない(p237)。

 振り返ってみると、品揃えや商品構成があまり変わらない店の多い反面、頻繁に変えすぎて顧客を減らす店もまた少なくない。ここでは、品揃えや商品構成が変わらないと、「必ず」客数が減るという厳しい現実を見据えながら、「ねらっているマーケットの小さな変化」に合わせ、的確に変化すべき重要性が説かれている。「時期によって、場所によって、また競争によって絶えず変更しなければならない」のだ。できればこのことを、社内、店内のコンセンサスとし、苦境からの突破口にしていけないかと思う。
 このあと話は、プライスゾーンやマークダウンになるが、仔細は、238ページから258ページまでを当たっていただきたい。

7 利は仕入れシステムにあり

 つぎは仕入れの課題である。
 といっても、じっさいの仕入れ業務だけでなく、システム化も議論の対象になる。だからこのテーマも、商品の選択と分類、仕入れの重要な決定事項、そのなかの原価と数量、売価、品質の決定、仕入先評価と多様にならざるを得ない。
 冒頭に、仕入れスタンスを考えさせる一節があるが、ここは心して読み込みたい。

商品は生きている。商品は、新製品が次々と追加され、古いものは陳腐化して消えていく。商品のライフサイクルは一般に短くなった。しかし経営的には、商品は資本の化身であるから、絶えず回転すべきであり、また経営的には価格と価値の乖離に注意しなければならない(p264)。

 手はじめに、経営観点からの商品分類がなされる。マーチャンダイジング方針、店舗政策、商品性質、販売期間、補充難易度、ブランドなどによる分類である。
 最初の「マーチャンダイジング方針を基礎にした分類」では、主力商品が中心に語られるが、これにからんで記されるコメントも重要。

小売業経営は計数的に見た場合、その性格が大きく二つに分けられる。一つはディスカウンターのように低利幅・高回転主義(回転率本位)の経営方針と、もう一つは専門店型で高利幅・低回転主義(高利幅本位)の経営方針である。これは相対的なことであるが、どちらに属するかで主力商品の内容も、PBやSBに対する考え方も違ってくる(中略)。要するに、主力商品というのは自分の店で最も販売能率を上げなければならない商品のことである。したがって、欠品はあってはならない(p265~266)。

 つぎの分類は「店舗政策」からみたもので、先ほどの主力商品に加え、補完商品、補助商品、関連商品、実験商品、動員力商品などが登場する(p266~267)。さらにこの延長で、間隔仕入れと転換仕入れというキーワードも出現する。

間隔仕入れ、転換仕入れというのは、たとえば、いつも同じものを並べて置かないで、一定期間青色のものを並べていたら、次には赤色のものを補充するといった仕入れのことである。お客から見れば、一定期間の中で商品が転換するわけである(p266)。

 「商品の性質から見た分類」にも目を注ぎたい。
 専門店の商品は、品質商品、ファッション商品、文化性商品にわけられる。品質商品とは、浴用品のみとか自然食品の店などの商品だ。転換が遅いため、反復仕入れ、計画仕入れが多く、品質と価格に重点を置いた仕入れが合っている。これに対しファッション商品とは、「品質、価格よりもファッション性に重点が置かれる商品」のことで、転換が速く「浅く仕入れて、転換仕入れをすることが必要になる(p268)」
 3番目の文化性商品には、健康食品やビタミンなどの科学的なものと、パソコン、携帯電話といった技術的なものとふたつある。これらは生活文化の水準によって価格差が大きく、仕入れのポイントは「消費者の生活文化度にある(同)」という。同時に、技術的文化性商品(ハードグッズ)が、ディスカウントの対象になりがちなことも指摘される。
 ついで、販売期間、補充の難易度による分類、またブランド・ノンブランド商品の分類などに言及されていく。

 さて、仕入れ上必要な決定事項は少なくない。だが著者はその前に、心構えやスタンスを問う。

「利は元にあり」という元とは、仕入元のことである。しかし今日では、さらに仕入れのシステムを問われる時代である。仕入れは、当然、想定したお客のための、主体的仕入れでなければならない。したがって、店頭のお客の情報が必要であることは言うまでもない。またファッション性の高いものを扱えば扱うほど、外部情報に敏感でなければならない。主体的仕入れであるということは、問屋、メーカーのセールスに振り回されてはならないということである(p272~273)。

 そのためには、あらかじめ、仕入れの「決定事項」を明らかにすべきであるといい、さらにこの「決定事項の経営的基礎」をなすのは、「在庫商品に投下する資本が、年間どれだけ最終的に荒利益高を稼ぐべきか(p273)」であって、「これはGMROIといって、アメリカのバイヤーは、これによって評価される(同)」と述べ、商品投下資本の生産性の重要性を指摘する。そのうえで、こうバイヤーの責任にも言及する。

バイヤーの責任は商品投下資本の生産性であり、それを商品投下資本の何倍にするかということである。単なる売上高ではない。商品投下資本の生産性は、通常は二・五~三倍以上でなければならない(p273~274)。

ついで決定事項を5項目あげる。

(1)どのような商品を――品種と品目の決定
(2)いくらで――原価(到着原価)の決定
(3)どのくらいの数量を――数量(品目ごと)の決定
(4)どのくらいの利益を見込んで――売価の決定
(5)どんな品質を――品質基準の決定

で、付け加える。「以上の項目を十分考慮しなければ、商品政策を実現するためのよい仕入れはできない(p275)」と。「十分」の2文字があることに注意したい。

ここが肝心なので、ひとつずつていねいにみていこう。
最初は品種と品目の決定である。これは「最も比重の重い仕事」であり、「品種・品目の決定ができたら、仕入れは八〇%完了」とまで断言している。この仕事を担うバイヤーには、とりわけ顧客発想が大切で、アメリカでは「持ち時間の九〇%は店頭に出ろ」といわれているらしい(p276)。その決定に際しての注意が7つ促される(p278~283)。

(1)店のお客さまに喜ばれるかどうかを見極める
(2)買われる頻度(回転率など)を検討する
(3)生活の変化に合わせる
(4)店の方針に沿う(「無方針で、ただ売れるものを売るというだけでは、何の特色もない店になる(p279)」)。
(5)今後の売れ行きを見通す(商品ライフサイクルの判断)
(6)手持ち商品とのバランス
(7)重点要素の決定(素材、サイズ、色、柄、型、重さ、スタイル、価格などの要素から、強調すべきものを選ぶ)

 ミニマム・デプスの法則にも触れる。これは「品目がある点数以下になると急速に顧客の満足が減少する(p283)」という法則である。たとえば衣料品はこれが高いらしい。

(つづく)

新・お店のバイブル
執筆者:青田 恵一

福島県出身。中央大学法学部法律学科卒業。中小企業診断士。
長年、小売店(八重洲ブックセンター、ブックストア談などの書店)に勤め、店長、営業企画課長、事業推進部長などを歴任。数々の出店と店舗指導に関わる。
現在、コンサルタンティング会社「株式会社 青田コーポレーション」代表取締役。
経営コンサルティング、店舗診断・提案、研修、出版、執筆などに従事。書店中心に商品レイアウト変更や販売促進を得意テーマとする。
2001年 日本エディタースクール「編集コース」終了。
2003年 『よみがえれ 書店——V字回復へのヒント』(青田コーポレーション出版部発行、八潮出版社発売)を刊行。
2004年 『書店ルネッサンス——進化・視察・出版営業・未来・電子ペーパー』(同)を刊行。書店進化論や、電子ペーパー報告などを収録。
2005年9月には「たたかう書店—メガブックセンター・責任販売・万引き戦争・ジャンル別マネジメント・新古書店対策—」(同)を刊行、「よみがえれ 書店」シリーズ完結編として注目を集めている。同書は日本図書館協会選定図書にも選ばれた。

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