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連載コラム

第3回「店舗レベルの顧客コミュニケーション」

[ 2009年3月13日 ]

今回のテーマ「店舗レベルの顧客コミュ二ケーション」

前回の第2回目では、店舗マネジメントの一つであるマーケティング支援の中から、「店舗レベルのマーケティングプランニング」をご紹介しました。今回も、マーケティング支援の中から「店舗レベルの顧客コミュ二ケーション」についてご紹介します。

コミュニケーションの重要性

100年に1度の不況、市場縮小時代に求められる今、CRM(顧客育成)のマーケティング成功の可否で大きな鍵を握るのは、店舗レベルの顧客とのコミュニケーションです。コミュニケーションの難しい所は、伝えたい情報が正しくても、その情報を伝えるコミュニケーションのボリュームとバランスが適切でなければ、顧客に伝わらないことです。

2つの問題点

コミュニケーションのボリュームとバランスにおいては、主に以下、2つの問題点があります。

  • 問題点1 コミュニケーションのバランスが悪い
    コミュニケーションの種類として、関係を深めるリレーションメッセージと売上を獲得するセールスメッセージがありますが、どうしてもセールスメッセージにより過ぎる傾向があります。 テレビを考えると分かりやすいと思います。民放テレビは企業からの広告で成り立っているメディアですが、決して100%CM(=セールスメッセージ)を実施している訳ではなく、番組がメインで、CMはサブです。面白い番組を見たいからテレビを見るのであって、結果としてその合間に行われるCMを見ることになります。 通常のコミュニケーションでも同じ発想が必要です。顧客が楽しめる、関係を深めるリレーションメッセージの内容を中心にすることで、コミュニケーションの到達率を高めることができます。リレーションメッセージ7割、セールスメッセージ3割が最適のバランスです。
  • 問題点2 コミュニケーションのボリュームが足りない
    CRM(顧客育成)では顧客とのコミュニケーションのボリュームを、一定以上にする必要がありますが、それに達していないことがあります。 最も深い関係が求められる親子関係においても、その問題の多くは、コミュ二ケーションの質ではなく、量が足りないことから起こります。

解決の方向性

2つの問題点を解決するために、以下2つの条件が新しい方法に必要になります。

  • 条件1.数値基準設定による、コミュニケーションレベルの見える化
  • 条件2.各店舗のコミュニケーションを確認し、その対応策を実施

そこで、ご提案したいのが、「コミュニケーション・チェック」という新しい方法です。
「コミュニケーション・チェック」とは、どんな方法かというと、販売現場から顧客へのコミュニケーションをボリューム・バランスという2つの点からチェックする新しい仕組みです。コミュニケーション毎(DM・メルマガ・御礼状等)に数値基準を設定し、定期的に各店舗のコミュニケーションをチェックすることで、CRM(顧客育成)にとって最適なコミュニケーションのボリューム・バランスが実現します。

「コミュニケーション・チェック」の実践STEP

  • STEP1 各コミュニケーションの数値基準づくり
    顧客へのコミュニケーションは、DM・メルマガ・御礼状・個別メール・チラシ・ポスティングです。それぞれのコミュニケーション手法について、数値基準を決定します。 メッセージの内容によって、セールスメッセージを「○(数値)SP」、リレーションメッセージを「○(数値)RP」と設定します。 さらに、DMに手書きコメントを入れた場合、御礼状を購入直後に出した場合は、プラスポイントを付与することも検討します。
  • STEP 2 コミュニケーションのチェック
    コミュニケーションのチェックは、店舗毎、スタッフ毎、顧客毎に行います。 合計ポイント、SP、RPともに標準レベルを設定し、それ以上をクリアするように、各店舗を導きます。特に、顧客については、A客・B客・C客のそれぞれについて、合計ポイント、SP、RPを設定し、最適なコミュニケーションを実践します。
  • STEP 3 コミュニケーションの改善指導
    基準を満たしていない店舗については、来月そのコミュニケーションを挽回しなければならないので、その指導を行います。単なるポイント稼ぎにならないように、注意を促します。

「コミュニケーション・チェック」の発想の原点

コミュニケーション・チェックの考え方の原点になったのが、「セイバーメトリクス」です。セイバーメトリクスとは、米野球学会の略称(SABR)と基準を意味するメトリクスを組み合わせた造語で、野球をデータに基づき、より客観的に分析する試みです。
これまでは、打率や打点、防御率で選手を評価してきましたが「セイバーメトリクス」では、相手の守備能力や打球方向に左右される「ラッキーヒット」、打順の巡り合わせによる打点の多寡など「運」の要素を極力、排除します。
重視するのは、「得点/失点との結びつきが強いデータ」。例えば出塁率は、通常、打率2割5分の打者より3割打者がチームへの貢献度が高いとみますが、野球は走者を本塁にかえして得点を競うスポーツです。四球も加味した出塁率が高ければ、打率で劣っていても能力が高いと判断します。投手も同様で、打線の援護で稼いだ20勝よりも投手だけに責任がある奪三振や与四死球、被本塁打数で投球の中身を評価します。近年、この手法で、レッドソックスとアスレチックスが好成績を挙げています。
顧客とのコミュニケーションは、未だに店舗の主観的価値観で実施されていることが多いのではないでしょうか。「コミュニケーション・チェック」は、顧客とのコミュニケーションを最適に導く客観的な仕組みであり、標準化する仕組みです。

次回は、前々回、前回と同じく店舗マネジメントの一つであるマーケティング支援の中から、「成功事例の蓄積・整理整頓・共有化」ついてご紹介します。

次回も楽しみに。コラムを最後まで読んでいただき、有り難うございました。


齋藤孝太

顧客育成/CRM視点の店舗マネジメント
執筆者:齋藤 孝太

株式会社 SIS(ストラテジックインテリジェントシステム) 代表取締役 カスタマーリレーショナルマーケター
企画・マーケティング会社にて、大手化粧品メーカー(資生堂)・大手石油会社(現新日本石油)等のマーケティング計画策定・現場マニュアル作成をサポート。その後、株式会社企画塾にて、中小零細企業の販売現場の売上アップを図るマーケティングに携わる。現在は、店舗ビジネス(小売業・サービス業・SC等)において顧客との関係を深め、継続的な売上拡大を目指す企業を対象に、「顧客育成/CRMの教育・研修・セミナー」を通じた人材育成を行っている。
著書に、「なぜ、CRMは店舗の売上アップに繋がらないのか?」(日刊工業新聞社)「衝動買いさせる21の法則」(クロスメディア・パブリッシング)、「増販増客実例集2005」(企画塾出版)がある。

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