連載コラム

第8回「新人スタッフの育成/指導」

[ 2009年8月12日 ]

今回のテーマ「新人スタッフの育成/指導」

 今回は、市場縮小時代を突破する顧客育成/CRMを推進する店舗マネジメントの「教育・研修の未来」から、「新人スタッフの育成/指導」についてご紹介します。店舗をマネジメントするにあたって、教育・研修は、大きな役割を担います。現場から受け入れられる教育・研修は、モチベーションアップに直結するからです。
 新人スタッフの育成/指導をするにあたって、いくつかポイントがありますが、その中でも、"企業独自でカリキュラムを作る"オリジナル研修の重要性についてお話します。特に、新人研修は、パッケージ研修が主軸になって行なわる場合が多いからです。

日本の新人スタッフ研修の問題点

 中堅以上の研修会社、コンサルティング会社は、新人研修の場合、特定のパッケージを用意し、それをそのまま実施しようとするのが通常です。パッケージを崩してオリジナルで実施することを避けたがります。
 なぜなら、研修会社にとってオリジナル研修は、多少プラスで料金をもらっても、実施に手間がかかり、商品回転率が低くなるので、営業効率が悪いからです。また、コンサルティング会社にとってオリジナル研修は、プログラム作成・講師に、実力・経験共に豊かなコンサルタントが必要になります。実力・経験共に豊かなコンサルタントは、研修ではなく、コンサルティングの分野で活躍させたいのが本音です。つまり、研修は、経験が足りない若手コンサルタントに任せたいです。そのためには、パッケージ研修が最適です。
 研修会社・コンサルティング会社は、新人教育・研修のプレゼンテーションで、「年間を通じた計画的な研修プランをご提案します。」と具体的に提案しますが、中身は、パッケージを組み合わせただけの場合が殆どではないでしょうか。毎回の研修も講師が違う(接客の専門家、VMDの専門家、コーチングの専門家、クレームの専門家)ので、連動性もありません。この提案では、計画的な研修プランと言うのは、ちょっと無理があると思います。
 一方、研修を提供する側にとって、望ましいパッケージ研修は、研修を受ける企業にとっては、どうなのでしょうか。各企業によって、現状・目指している理想像・販売商品・店舗の立地/大きさ、スタッフの裁量権が違います。その条件によって求められる教育、研修のあるべき姿は、当然異なってきます。各企業に合わせた、オリジナル研修があるべき企業内研修の姿です。提供する側の都合で、現在パッケージ研修が主流ですが、今後は、あるべき姿に近づいていくでしょう。(パッケージ研修は、企業内ではなく、外部のセミナーを受講するか、教育用ビデオで学ぶことをお勧めします。)

新人向けオリジナル研修の構築

 では、具体的に新人スタッフ向けのオリジナル研修は、どのように構築されるのでしょうか。販売現場の今をしっかり把握し、理想的な販売現場の姿に想いを馳せ、その実現のために、どんな人材像が求められるのかを考えていきます。その人材を育てるためには、どんな教育プログラムを実施する必要があるのか、検討を重ねて作りあげていきます。
 具体的には、以下5つの点を中心に、まず理想像を検討します。

1 店舗・売場の現場の理想的新人スタッフ像について
人材難の時代を向かえ、新人育成が叫ばれる今日この頃だが、理想的な新人スタッフ像について、あらためて深く議論することは少ない。理想像が明文化されていても、かなり以前につくられたものが多く、現在のマーケティングに求められていることとは合っていない場合が多い。
顧客育成/CRMを販売現場で実現する新人スタッフ像について、定義づけを行う。明文化することで、実践されるマーケティング・教育プログラム作成にあたって、軸がぶれない、大きな迷いが出ない。

2 接客の理想像について
「その場限りの接客」「全ての顧客を同じように接客する、一律接客」「顧客と関係構築ができない、マニュアル接客」が、顧客育成/CRM志向を求められている企業においても行われている。あるべき接客を定義づけ、具体的な接客アクションを考えていく。

3 イベントの理想像について
「ターゲットを顧客段階で絞らない」「顧客と企業が価格で繋がるディスカウントイベント」「大雑把な集客アプローチ」のイベントが顧客育成/CRM志向を求められている企業においても行われている。あるべきイベントを定義づけ、具体的なイベントアクションを考えていく。

4 売場づくりの理想像について
「店舗・売場は目立てば良い」「人の温度を感じない売場からのメッセージ」「最近の顧客購買行動への配慮が足りない」売場づくりが顧客育成/CRM志向を求められている企業においても行われている。あるべき売場づくりを定義づけ、具体的な売場づくりを考えていく。

5 顧客接触ツール(ドキュメントツール・デジタルツール)の理想像について
「顧客育成のない、顧客の心遣いが感じられない販促ツール」「単体ツールへの過大な期待」「ツールの種類が少ない」のツールづくりが顧客育成/CRM志向を求められている企業においても行われている。あるべきツールづくりを定義づけ、具体的なツールを考えていく。

 このように、オリジナル研修を前提に教育を考えていくと、研修のみに留まらなくなります。「朝礼における毎日のモチベーションアップ」「低コストで継続的な教育を可能にするラーニング」「お店の成功事例・新しい取り組みを紹介するインナー向けニュースレター発行」といった、新人スタッフ向けの教育施策のアイデアが次々と生まれてきます。
 販売現場の理想像実現という一つの旗印のもと、さまざまな教育施策が集結することが、新人スタッフの教育のあり方として浮かび上がってきます。

教育で最も大切なこと

 これまで、第6回、第7回、第8回と教育についてお話してきましたが、最後に最も大切なことについて、お話していきます。
 それは、「教育は、販売現場にはじまり、販売現場に対して実施し、販売現場に終わる」ということです。弊社では、オリジナル研修を実施させていただく際、販売現場の現状を把握するために、いくつもの販売現場を訪問させていただき、店長・スタッフにインタビューを実施しています。販売現場を把握しないと、教育・研修の内容が、相手方企業・参加者と適合しない場合が出てくるからです。事前の現場把握は、教育・研修の成果に大きく関わってくるからです。
 本部スタッフの皆さんと現場周りをすると、「久しぶりに店舗をじっくり見ました・・・」という声が本部スタッフからよくお聞きします。会社が大きくなればなるほど、本部スタッフの方々は、会議・資料づくりに忙殺されて、現場に行けない現状があるので、注意が必要です。教育内容が、机上の空論になることは、避けなければなりません。

次回は、「現場アクション支援のインナーサイト」についてご紹介します。

次回も楽しみに。最後まで読んでいただき、有り難うございました。


齋藤孝太


顧客育成/CRM視点の店舗マネジメント
執筆者:齋藤 孝太

株式会社 SIS(ストラテジックインテリジェントシステム) 代表取締役 カスタマーリレーショナルマーケター
企画・マーケティング会社にて、大手化粧品メーカー(資生堂)・大手石油会社(現新日本石油)等のマーケティング計画策定・現場マニュアル作成をサポート。その後、株式会社企画塾にて、中小零細企業の販売現場の売上アップを図るマーケティングに携わる。現在は、店舗ビジネス(小売業・サービス業・SC等)において顧客との関係を深め、継続的な売上拡大を目指す企業を対象に、「顧客育成/CRMの教育・研修・セミナー」を通じた人材育成を行っている。
著書に、「なぜ、CRMは店舗の売上アップに繋がらないのか?」(日刊工業新聞社)「衝動買いさせる21の法則」(クロスメディア・パブリッシング)、「増販増客実例集2005」(企画塾出版)がある。

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