連載コラム

第11回「店舗の評価基準、分析手法」

[ 2009年11月30日 ]

今回のテーマ「対策アクション」

今回は、市場縮小時代を突破する顧客育成/CRMを推進する店舗マネジメントの「分析と対策の未来」の中から、「対策アクション」についてご紹介します。店舗をマネジメントするにあたって、分析後の対策アクションはなくてはならないものです。その対策アクションが実施されなければ、分析することに現状把握の意味しかなく、現場アクションを変えることに繋がらないからです。

まずは、目標と実績を比較する

対策アクションを考えるにあたって、まず実施すべきことは、前回の第10回でお話させていただいた目標と実施結果を比較することです。それにより、企業全体・各店舗・各売場の課題が見えてきます。課題を解決するために、各店舗(各売場)において最適な対策アクションを実施します。

各店舗への課題伝達のみに留まっている、現実

ここで大きな問題が起こります。
目標と実施結果を比較して分かった課題を各店舗に、「あなたの店舗は客数が課題ですよ」、「優良顧客(固定客)が少ないですよ」という形で伝えるとします。
そこまでは何の問題もないのですが、それを伝えられた店舗側で、実際に何をやったらいいのか、対策アクションがいまひとつよく分からないのです。
そうなると、各店舗にいくら課題を指摘しても、「要するに、売上を上げればいいんでしょう・・・」ということになり、精度の低い対策アクションが実施されます。これでは、売上以外の"顧客育成/CRM視点の数値目標"を立てた(第10回で説明)意味、検証した意味がありません。"顧客育成/CRM視点の数値目標"が、結局、店舗を管理するためだけで活用され、対策アクションに繋がらないことになります。

対策アクションを店舗レベルで考える、状況づくり

では、店舗レベルにおいて、課題に対する精度の高い対策アクションプランが立てられる状況を作るには、どんなことが必要なのでしょうか。「課題別の対策アクションを店長・スタッフが習得している」ことが必要です。そのためには、現場教育(研修・セミナー・Eラーニング)を実施することが不可欠です。課題別の対策アクションを店長・スタッフが習得すると、本部と店長で以下のようなコミュニケーションが交わされます。

・本部(課題の伝達)
「最近、新規顧客の獲得数(率)が落ちていますね」
・店長(課題の認識)
「そうなんですよね。改善していく必要がありますね」
・本部(対策アクションの提示)
「それでは店長、先日研修でならった、新規顧客獲得策の10個の中から、選んでみませんか。」
・店長(対策アクションの選択)
「そうですね。5つ目に習った"店前の看板コミュニケーション"を実施してみます」
・本部(実施される対策アクションの検証実施の約束)
「ありがとうございます。是非、実践してみてください。1ヶ月後、新規顧客数がアップしているか、検証してみましょう」

課題別の実践的なマーケティングノウハウを持つと、現場は動きやすくなります。
自分の目の前のアクションと成果の連動度合いが高まることで、アクション実施のモチベーションもアップします。

顧客育成/CRM視点の対策アクション

(1)来店客育成を目的とした、対策アクション例
★イベントノウハウ「無邪気に楽しめる。娯楽イベント開催」
見込客は、商品を一度も購入したことがないので、店舗・スタッフについて深い興味を持っていないでしょう。そんな見込客をどのように来店させ、商品を購入してもらえばいいのでしょうか。最も有効なのは、見込客向けのイベント開催です。
店舗に興味がない見込客を集客するには、「たのしそうなイベントだね。今度週末、一緒に行かない?」というコミュニケーションが自然に生まれるイベントであるべきです。それは、心が躍る、無邪気に楽しめる娯楽イベントです。以下、業種別に娯楽イベントのテーマ・内容を挙げてみます。
・ブティック「この秋のモテ服大発表。ファッションショー"モテ服"2009秋」
・ペットショップ「かわいいワンちゃん、かわいいねこちゃん合わせて100匹大集合。
ドッグ&キャットショー」
・スポーツクラブ「プロ野球1億円プレイヤー○○さん、講演会&トークショー」

(2)新規顧客育成を目的とした、対策アクション例
★接客ノウハウ「軸とレベルの商品・サービス紹介」
新規来店客には商品・サービス紹介を切り口に接客します。但し、ただ商品を紹介すれば良い訳ではありません。「望ましい商品紹介」と「望ましくない商品紹介」があるのです。
望ましい商品紹介とは、紹介商品と他商品の違いを「明確な"軸"を持ち、その"レベル"をお客様に紹介する」ことです。これを「軸とレベルの商品紹介」と言います。
以下3つのポイントを持って商品紹介します。
1点目は、お客様が商品を選ぶ軸は何か。
2点目は、軸ごとに紹介商品が他商品と比べてどのレベルにあるか。
3点目は、紹介商品の最もお勧めしたいポイントはどこにあるのか。

(3)再購入客育成を目的とした、対策アクション例
★販促ツールノウハウ「Thanksメッセージカード」
初めて購入してくれた新規顧客は、お店・スタッフに対して、良い印象は持っていると思いますが、特別な想いはまだ持っていないでしょう。そこで提案したいのが、新規顧客への御礼の気持ちを、「Thanksメッセージカード」に託し、会計時にお渡しすることです。
通常、実施されているハガキの御礼状は、顧客情報(名前・住所等)を獲得する必要があります。個人情報保護の問題等、情報入手が難しくなった今、どうしても実施が限定的になります。しかし「Thanksメッセージカード」は会計時にレシートと一緒にお渡しするので、簡単に実施できます。

(4)優良顧客育成を目的とした、対策アクション例
★売場づくりノウハウ「リレーションシップディスプレイ」
数回してくれている再購入客の、来店頻度を高めてもらうために、売場ではどんな工夫ができるでしょうか。多くのお店では、季節に応じて提案商品を考え、いかに商品を魅力的に見せるかに神経を集中しますが、それに加えて、お店とお客様との関係性を伝える「リレーションシップディスプレイ」を展開します。
例えば、優良顧客の商品活用法・体験談を公開する売場ディスプレイ、購入商品をランキング順で公開したディスプレイ、お客様の作品を公開するディスプレイ等が考えられます。

(5)スペシャル顧客育成を目的とした、対策アクション例
★イベントノウハウ「個別相談・提案する、one to oneイベント」
one to oneイベントとは、優良顧客とスタッフが1対1で対面し、個別相談・提案するイベントです。基本は銀行・証券会社が行う個別相談会、百貨店が顧客の家に訪ねる外商と同じです。以下、業種別にone to oneイベントのテーマ・内容を挙げてみます。
・美容院「これからどんなイメージにしようかな?ヘアファッション相談会」
・学習塾「志望校絶対合格、これからの勉強相談会」
・化粧品店「お肌の調子はいかがですか?お肌の定期健診&相談会」


本部と店舗の役割分担(店舗に、どこまで具体的な方向を与えるべきか?)

ここでは、おさらいも兼ねて、本部と店舗の役割分担についてお話しておきます。
「顧客育成/CRM」は、本部からの指示をつつがなく店舗(現場)で実践するのではなく、店舗が自ら主体となって実践することが重要になります。店舗でのみ、顧客育成に必要な"顧客の心を動かす"ことができるからです。
ここで一つ問題になるのが、「店舗にどこまで任せればいいのか」、「本部はどこまで店舗に指示を出せばいいのか」という問題です。
現場改善が進まないケースでよくあるのが、「顧客第一主義」「顧客満足」等の基本理念だけを掲げて、後は現場に任せるケースです。これでは、意欲の高い上位2割の店舗・店長は大丈夫ですが、最も動いて欲しい、真ん中の6割の店舗・店長は、実際アクション改善まで行き着かないで終わります。(ちなみに、意欲の低い下位2割の店舗・店長は、別の手段が必要になります。)
真ん中の6割の店舗・店長に動いてもらうには、基本理念はもちろん、先ほどご紹介した顧客育成/CRM視点の課題を伝達し、課題別アクションパターンを提示し、店舗・店長が対策アクションを選べる状況を作っておくことが重要です。対策アクションまでのハードルを低くする訳です。


次回は、いよいよ最終回です。次回は、「店舗マネジメントの新しい未来像」についてお話します。最後まで読んでいただき、有り難うございました。

顧客育成/CRM視点の店舗マネジメント
執筆者:齋藤 孝太

株式会社 SIS(ストラテジックインテリジェントシステム) 代表取締役 カスタマーリレーショナルマーケター
企画・マーケティング会社にて、大手化粧品メーカー(資生堂)・大手石油会社(現新日本石油)等のマーケティング計画策定・現場マニュアル作成をサポート。その後、株式会社企画塾にて、中小零細企業の販売現場の売上アップを図るマーケティングに携わる。現在は、店舗ビジネス(小売業・サービス業・SC等)において顧客との関係を深め、継続的な売上拡大を目指す企業を対象に、「顧客育成/CRMの教育・研修・セミナー」を通じた人材育成を行っている。
著書に、「なぜ、CRMは店舗の売上アップに繋がらないのか?」(日刊工業新聞社)「衝動買いさせる21の法則」(クロスメディア・パブリッシング)、「増販増客実例集2005」(企画塾出版)がある。

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