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連載コラム

"世界初"のNFCプロダクツが、日本から続々登場!

[ 2012年9月27日 ]

文・多田羅 政和(電子決済研究所 代表)

 世界的な「iPhone5」発売フィーバーに沸く昨今、本サイトの読者の中には「もう手に入れた」という新しモノ好きの方も少なくないのではないでしょうか? そのiPhone5にはNFCが搭載されるとの噂がありましたが、既報のとおり、「現在のインフラ環境」にこだわるアップル社の方針もあって、残念ながら搭載は見送りとなりました。
 これによってNFC市場は沈静化してしまうのでしょうか。いえいえ、少し周囲を見渡せば、さまざまなアイディアと共にNFC関連の新製品を見つけることができるでしょう。その多くが"世界初"の製品(プロダクツ)で、しかも嬉しいことに、この日本から続々と登場し始めているのです。

「FeliCa」と「NFC」チップをダブル搭載したスマホ

 iPhone5で見送られたNFCチップの搭載。翻って日本市場では昨年末頃から、主として海外メーカー製の端末ではありますが、NFCを搭載したスマートフォンが発売され始めています。そして本年の6月末、日本メーカーであるシャープから、世界で初めて「FeliCa」と「NFC」のチップをダブルで搭載したスマートフォン「AQUOS PHONE SERIE(セリエ) ISW16SH」が発売になりました。この端末はKDDI(au)に採用され、同社の提供するNFC対応サービスにも公式に対応しています。
 ここまでお読みになって、「そもそもFeliCaってNFCに含まれる規格なのでは? なぜ2つもチップが必要なの?」という疑問の浮かんだ方がいらっしゃるかもしれません。スルドイご指摘です。詳しくは本連載の過去記事(世界に広がるNFCケータイ)もご参照いただきたいのですが、FeliCaやNFCを構成する要素として、非接触IC通信を制御する「RF機能」(Radio Frequency)と、パソコンのOSのように各サービスアプリケーションを制御する「SE機能」(Secure Elements)の2つの存在があります。そして、最終的にはこれらの両機能ともが、FeliCaとNFCの間でそれぞれに一本化(ワンチップ化)される見通しですが、今日の段階は過渡期のため、FeliCaとNFC、2つのチップを搭載する必要があったわけです。
 しかし、これにより、日本で普及しているおサイフケータイ(FeliCa)のサービスをそのまま利用でき、しかもNFC対応によりTypeA/B方式のサービスにも対応可能という夢のケータイが現実のものとなりました。

AQUOS PHONE SERIE(セリエ) のメニュー画面。
「NFC」メニューと「おサイフケータイ」メニューが同じ画面上に!

「NFC」メニューの中には「おサイフケータイ」へのショートカット(写真左)、
反対に「おサイフケータイ」メニューの中には「NFC」
メニューへのショートカットが配置されている(写真右)。
マトリョーシカ的(?)な構造

NFCだけで通信する外付けキーボード

 さて、さる8月には世界初のNFC対応キーボードが登場しました。こちらはノルウェーのone2TOUCH社と、日本企業であるエレコム(ELECOM)社が共同開発したものです。
 そもそもスマートフォンやタブレットに利用できる外付けキーボードといえば、その通信部分にBluetooth方式を採用するものが主流です。しかし、Bluetoothには接続の際の設定がやや複雑(コンピュータに慣れた人ならさほど問題なく設定できますが)という課題があります。そこで、機器同士をタッチすれば両者がつながるという直感的なインターフェースを持っ たNFC技術の出番となりました。互いの機器(スマホとBluetoothキーボードなど)を重ね合わせるだけで、NFCが複雑な接続の部分を肩代わりし、その後の通信はBluetoothに引き継ぐ仕組みが開発されています。
 しかし、今回登場したNFC対応キーボードは、Bluetoothをまったく利用しない点で従来の考え方とは大きく異なります。最初の接続から、キーボード入力のすべての信号のやり取りをNFCだけでやってしまおうという意欲的なものです。

スマホを既定の場所に置くだけで、即、キーボードとつながる

冷蔵庫に炊飯器、そして洗濯機まで!

 また同じ8月にはやはり日本メーカーのパナソニックが、NFCおよびおサイフケータイ(FeliCa)搭載スマートフォンと連携可能な「スマート家電」を発表しました。同社ではそれまでもおサイフケータイ(FeliCa)に対応した炊飯器やオーブンレンジなどを発売し、話題を呼んでいましたが、今回はそのシリーズ化とも言えるもので、冷蔵庫、洗濯乾燥機、健康測定器(体組成計・活動量計・血圧計)が新たに加わりました。
 いずれも機器の設定や状態表示、関連情報の記録などがNFC/FeliCaを搭載したスマートフォンをタッチすることで行えるようになっており、情報家電とヒトの間のUI(ユーザーインタフェース)をスマートフォンに担わせようとする壮大な提案と言えます。これももちろん、世界初でしょう。
 日本が発信地となる"世界初"のNFC製品は、実は、今回ご紹介したものにとどまりません。ジャンルやカテゴリを超えて、今後も続々と日本発信の発表が続くことになりそうです。

Android系スマホの対応機種に「スマートアプリ」をインストールすることで、スマート家電との情報連携が可能
(出所:パナソニック社Webページより)

冠だけでなく、ビジネスの果実も日本企業へ

 IT関連業界ではよく、「日本人には先見の名があって、技術的にも最先端のサービスや製品を世界に先駆けて導入する。しかし、その果実(ビジネスとしておいしいところ)はいつも諸外国に持っていかれてしまう」との嘆きが聞かれます。確かに、今回ご紹介したNFCの状況も、前半までは見事に当てはまってしまいます。
 問題はこの先。何としてもその果実をもぎ取らなければなりません。「NFCではそうならなかったね」と誰もが納得するような、したたかな戦略を描いていきたいですね。

※電子決済研究所では本年11月6〜8日にパリで開催される展示会『CARTES 2012』の開催に合わせて欧州視察団を実施いたします。ご参加希望の方はお気軽にお問い合わせください。

電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

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