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連載コラム

『CARTES 2012』に2万人が来場 世界中のカードビジネス関連企業が技術を競った3日間

[ 2012年12月3日 ]

 Bonjour! 今年もカードビジネスでは世界最大級と言われる展示会イベント、『CARTES 2012』がフランスのパリ郊外で開催されました。昨年に引き続き活況で、日本から参加された読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 電子決済研究所では本年も『CARTES 2012』の見学を含む欧州視察団(パリ・ロンドン)を結成し、最新の欧州事情を見聞して参りました。今回は展示会の模様をダイジェストでお伝えします。

文・多田羅 政和(電子決済研究所 代表)

世界中のカード関連企業435社が出展

 毎年11月にフランスはパリ郊外のノール・ビルパント展示会場(Nord Villepinte Exhibition Centre)にて開催される『CARTES』(写真1)。昨年は世界的にNFC商用化を目前に控えたタイミングということもあってかつてない盛況ぶりを見せた同展でしたが、本年も昨年ほどではないにせよ、その余波ともいえる勢いを感じさせる来場者の多さでした。

写真1 夕暮れ時、ライトアップされたCARTES会場の入り口

 同展の主催者であり事務局を務めるコム・エクスポジム社によると、本年の結果は下記の通りだそうです。

・開催日程 2012年11月6~8日
・出展企業数 435社・団体(計45カ国からの参加)
・来場者数 1万9,072名(うち7割がフランス国外からの参加)
・カンファレンス数 119セッション
・カンファレンス参加者 1,586名
・アワード部門数(写真2) 11部門

 また本年からは出展企業の配置を分野別(Identification、Machines、Mobile Payment、Testing and Consulting)に整理したことで、探索する企業へのアクセスがしやすくなったと同社は話しています。
 この数年、連続して参加している私は残念ながらこの変化に気がつかなかったのですが(笑)、出展者や会場のナビゲーション情報を利用できるiOS/Android OS向けアプリ『MyCARTES』は今年もやはり便利でした(写真3~4)。

写真2 CARTESでは例年、部門別に『セサミ・アワード』を設け、受賞企業を表彰している(ゼーレ風)

写真3、4 無料の『My CARTES』アプリを使って会場地図や見学ルート探索、
出展者情報などにアクセスできる

韓国・中国のアジア勢が躍進

 フランスで開催される展示会ですから、欧州系の企業がはりきらないわけがありません。来場者カード(Mifareを搭載)を会場入出口の担当者が持つスマートフォンにかざして認証を受け、無事入場ゲートをくぐるや否や、最前列のブースをGemalto、Oberthur、HID、MORPHO(Safran)、G&D、InfineonといったICカード業界の名立たるプレーヤーたちが飾ります。まさに「欧州に来た!」と感じる瞬間です。(写真5~9)
 今年はその最前列にSAMSUNGが並びました。SAMSUNGに限らず、今年は韓国、中国をはじめとするアジア企業のブースが例年以上に大きく、目立っているように感じられました。



写真5~9 Gemalto、Oberthur、Infineonなど欧州らしい企業が占める会場最前列に、今年はSAMSUNGブースが登場

NFC関連は落ち着いたソリューション提案が中心に

 NXP(セミコンダクターズ)やSTマイクロ(エレクトロニクス)、インフィニオン(テクノロジーズ)といったICチップベンダー、あるいはGemalto、Oberthur、G&Dなどのカードメーカーのブースでは、ICカードやNFC関連のデバイスが多数出展されましたが、本年の展示ではアイディアの新機軸が目白押しというよりは、落ち着いたソリューション提案が多かったように思います。(写真10~14)
 昨年までは、NFCではマイクロSDやSIMカードの改良版を用いたNFCのセキュアエレメント(SE)/RFアンテナの変形版などが脚光を浴びたり、液晶ディスプレイ付きカードやSIMを小型化したナノSIMなど外見も華やかな新提案が目立ちました。しかし、ご存知のようにいずれもこの1年の間に製品化されてしまいました。
 そんなわけで、「まず、NFCにはカードモードとリーダーモードというのがありまして。。」などと基本的な説明に始まるブースがあって苦笑させられたり、一見広大なブースなのに入ってみると特に展示物はなく、椅子とカウンターとスナック類が用意され、淡々と商談を進める企業があるなど、ある意味では本来の『CARTES』らしい風景も見られました。 


写真10 NXPブースではカード券面をなぞった軌跡で
所有者を認証するデモが好評

写真11 OberthurのPayPass/payWave対応KIOSK端末

写真12 Gemaltoではエンベデッド(埋め込み型)
SIM向けのリモート管理ソリューションを披露

写真13 従来のOysterに加えてPayPass/payWave
にも対応するロンドン交通局の駅務機器のデモ
(MasterCard)

写真14 人体通信とウルトラワイドバンド(UWB)の組み合わせにより本人認証を行うデモ。
「eGO project」として欧州の複数企業連合が研究中(ATOS Worldline)

日本からの出展は、常連組中心に

 さて、『CARTES 2012』にはわれらが日本企業も、欧州に負けじとブースを出展していました。
 大日本印刷(DNP)では、モバイルNFCのサービス提供時に要となる「モバイルウォレット(アプリケーション)」のデモンストレーション展示をブース正面に据え、来場者にアピールしたのをはじめ、NFC&カード関連の展示を行っていました(写真15)。
 折しも展示会直前の11月6日に、日本のカード会社であるジェーシービー(JCB)が新しいモバイルウォレットを用いたトライアルの実施をプレス発表しましたが、まさにそのモバイルウォレットがDNPブース内にておそらく世界初披露(写真16)されたこともあり、足を止めて説明を聞く来場者が続きました。
 また、やはりCARTESの数日前にプレス発表したパナソニックも、ワンチップで(ISO/IEC 14443)TypeBと、FeliCaの両方に対応するNFCタグ用LSIをDNPブース内にて披露しました(写真17)。

写真15 モバイルウォレットを前面に打ち出した展示(DNP)


写真16 JCBの新しいモバイルウォレットは、
非接触IC決済だけでなく、ポイントサービスやクーポン
などにも対応し、2013年中に日本での商用化を目指す

写真17 パナソニックが新開発したNFCタグ向けLSI
は、ワンチップでTypeBとFeliCaの両方に対応。従来の
「1方式=1チップ」という常識を覆す意欲的な製品だ

 
こちらもCARTESの常連企業ですが、アテナスマートカードソリューションズのブース(写真18)では同社の小坂社長にお話を伺うことができました。アテナさんはれっきとした日本の会社ですが、日本のほか米、英、中東に事業所を有し、また約40名の全従業員のうち日本人はわずか数名(!)とのことだそうです。日本企業が海外に事業進出、あるいは企業が国際化するというのは、まさしくこのようなこと(=多国籍化)なのだろうなと、非常に納得させられるお話でした。
 ほかにも、欧州では現状未発売のNFC対応モバイルスピーカーやNFCキーボードなどNFC技術の新たな用途提案プロダクトを披露し来場者を楽しませたソニー(SONY)や、NFCを用いたO2Oマーケティングサービス、スマートポスターなどNFC関連のソリューションを紹介した凸版印刷、日本でもおなじみのデータカード(Datacard)グループなどなど、今年は例年以上に多くの日本人担当者とお会いすることができました(写真19~21)。


写真18 もはや多国籍企業の風格が漂うアテナスマー
トカードソリューションズは、CARTESでは常連

写真19 SONYブースでは発売直後の「Vaio Duo11」
(Win8/NFCポート搭載)や、NFCでのワンタッチ
ペアリングに対応するモバイルスピーカー、
ヘッドフォンなどの実機を展示

写真20 凸版印刷はNFCとSNSとの連携による販促
ソリューション「LinkPlace」や、NFCスマートポスター
などを展示し、来場者にアピール

写真21 データカード(Datacard)のブースでは、
工場さながらの大型カード発行機やパスポート
発行ソリューションなどがデモ稼動。
視察団はラッキーなことに、日本データカードの
土田社長より直々にご説明を伺うことができました

 

新装『カルテアメリカ』はラスベガスにて4月開催

 さて、昨年より3地域で、年3回開催となった『CARTES』展示会ですが、今後の予定をお知らせします。
 まず、3月27・28日には香港のアジアワールドEXPOを会場に、『CARTES Asia 2013』(通算4回目)が開催されます。今回よりEコマースの業界イベント『E-Commerce Asia』との同時開催になったそうで、関連性の大きい両業界だけに来場者の幅がさらに広がりそうです。
 また昨年3月にアメリカ・ラスベガスで初開催された『CARTES in North America』は4月に開催日程を移動(4月23~25日)し、『CARTES America』として開催されることになりました(通算2回目)。この日程変更により、特に日本では決算月、また年度変わりの節目でもある3月以上に、ご参加がしやすくなったのではないでしょうか。
 そして来年の『CARTES(PARIS)』は11月19日から21日まで開催されます。当研究所では今後も『CARTES』展示会への視察団派遣を継続していく予定ですので、思い立ったその時に、ぜひお気軽にご参加ください。

電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

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