日経メッセ > リテールテックJAPAN > 連載コラム > 電子決済・ICカード国際情報局 > NFCカンファレンスを振り返る 〜 2013年は『NFC元年』に決定!

連載コラム

NFCカンファレンスを振り返る 〜 2013年は『NFC元年』に決定!

[ 2013年3月28日 ]

 2013年3月5日〜8日の期間、東京ビックサイトで開催された『NFC & Smart WORLD 2013』の会場内で、例年通り「NFCカンファレンス」が開催されました。本年も私がその進行を務めさせていただきましたので、その様子をお伝えしたいと思います。

文・山本 正行(山本国際コンサルタンツ 代表)

写真1 『NFC & Smart WORLD 2013』の入り口

3日間にわたり開催、業界のキーパーソン13名が登壇

 今年のNFCカンファレンスは次のような内容でした。

●3月6日 NFC決済サービスセッション
目的:「決済サービスにおけるNFC化の動向や課題を共有する」


初日のディスカッションテーマ

モデレータを務めた山本正行

参加メンバー:


セブン・カードサービス 執行役員 電子マネー開発部担当 磯邊 俊宏氏

楽天Edy 執行役員 最高戦略責任者 渉外・企画室 室長 兼 国際事業推進部 部長 宮沢 和正氏

三井住友カード IT戦略事業部 IT開発室 部長 兼 室長 大塚 英雄氏

オリエントコーポレーション CRM開発推進部 部長代理 長谷川 亮氏

クレディセゾン カード事業部 営業企画部 商品・サービス開発グループ 課長 吉中 慎氏

●3月7日 モバイルキャリアセッション
目的:「通信キャリアのNFCに対する取組状況や課題を知る」


2日目のディスカッションテーマ

モデレータの山本正行

参加メンバー:

NTTドコモ フロンティアサービス部 金融・コマース事業推進 利用促進担当課長 今井 和氏

KDDI サービス企画本部 マルチアクセス&サービス企画部 NFCサービス開発グループ 担当部長 阪東 謙一氏

ソフトバンクモバイル プロダクト・サービス本部 モバイルペイメント企画室 室長代行 小峰 正裕氏

●3月8日 プラットフォームセッション
目的:「NFCサービスに必要なインフラや基盤整備状況を知る」


3日目のディスカッションテーマ

モデレータの山本正行

参加メンバー:

NTTデータ ビジネスソリューション事業本部
クラウドコンピューティングビジネスユニットNFCビジネス推進室 課長 大熊 喜之氏

C-SAM アジア太平洋地域 ゼネラルマネージャー Mr. Shubhrendu Khoche

ジェムアルト テレコム事業本部 部長 蔦田 剛士氏

大日本印刷 情報ソリューション事業部 デジタルセキュリティ本部 NFCビジネス推進部長 土屋 輝直氏

MasterCard Worldwide アジア太平洋・中東・アフリカ地域Emerging Payments Group Head Mr. Philip Yen

NFC対応機種は19機種に!

今年のカンファレンスで目立ったポイントを整理すると、次の3点が挙げられます。

【ポイント1】
3キャリアから19機種に及ぶNFC対応機種がリリースされていること(現状の認識)

【ポイント2】
三井住友カードさんのpayWave/PayPassの採用によって国内のNFC決済サービスの動きが具体化してきたこと

【ポイント3】
決済サービス事業者、モバイルキャリアが「NFC元年」を宣言したこと

 まず【ポイント1】について、NFCに対応するスマホ/タブレットが19機種にまで増えたことは、日本におけるNFCの普及の兆しのと言えると思います。7日に登壇されたNTTドコモの今井さん、KDDIの阪東さん、ソフトバンクモバイルの小峰さんも、「今後NFC搭載機種はさらに増える」と声を揃えて発言しています。



写真21 NFC搭載機種の一覧

写真22 モバイル非接触ICサービス普及協議会による展示

 機種が増えれば利用者も少しずつ増えることが予想されますが、そのためには利用シーンの開拓が重要です。後で述べる三井住友カードのpayWave/PayPassサービスの開始は、利用シーン拡大へ向けたニュースの一つです。また昨年から日本航空(JAL)の国内線ゲートが全てNFC対応となり、NFCスマホをかざして搭乗できるようになっています。このように少しずつではありますが、NFCの利用環境は広がり始めています。
 一方で、モバイルキャリアの3人のご発言から、NFCの商用化に絡むいくつかの課題も浮き彫りになりました。

・NFCの「ロゴマーク」問題
 日本のおサイフケータイに表示されていたロゴマークと、NFC対応であることを示すロゴマーク(NFC Forumが規定)が異なる。またスマホやかざす場所を示すロゴマークが何種類か定義されており消費者の混乱を招きかねない、という状況が指摘されました。

・NFC対応スマホでも、フェリカは組み込み型
 NFC対応スマホではSIMカードに決済などの重要なアプリ、データが格納されるため、機種を変える場合にSIMカードを差し替えることでスムーズに新機種に移行できるとされ、期待されています。しかしこの機能が利用できるのはType A/B方式のアプリのみで、フェリカのアプリはスマホ本体の記憶領域に格納されるためにこれが利用できません。

 二つ目のフェリカの実装に関する問題は技術的に難しい面もあるようで、解決には時間がかかりそうです。しかし消費者が目にするロゴマークの問題は早く解決していただきたいところです。

三井住友カードの導入開始で本格化の兆しが見えた決済サービス

【ポイント2】の三井住友カードですが、今年は同社でNFCや非接触などを統括される大塚さんにご登壇いただきました。日本のクレジットカード業界、とりわけビザ、マスターカードの取り扱いに関して三井住友カードの存在は大きく、昨年発表されたpayWave、PayPassの導入開始のニュースに、「いよいよ三井住友さんが始めた」という反応を示した関係者が多かったことも事実です。今回は日本でビザのpayWaveの初導入となるので、これで日本でもNFC決済にビザ、マスターカードの2大決済ブランドが参加したかたちとなりました。モバイルキャリアと主要クレジットカード会社などが参加するモバイル非接触ICサービス普及協議会では、payWave/PayPassのサービスを国内で進める上で整理すべき項目や課題を整理中ととのことで、業界を挙げてNFCを推進する様子もうかがい知ることができました。

写真23 payWave、PayPassとは

 クレジットカードばかりでなく電子マネーもNFC対応の検討が進んでいます。セブン・カードサービスの磯邊さん、楽天Edyの宮沢さんのお二人共通した意見、
・電子マネーのスマホ対応を考えるとNFCに頼らざるを得ない
・クレジットカードの国際ブランド(ビザ/マスターカード)との連携によりインフラ整備を進めたいの2点が注目されます。
 スマホ対応については、詳細はともかくNFC対応の理由として良く言われる点です。アンドロイドのようにオープン化されたプラットフォームで開発効率や柔軟性が高まったとの意見を聞くこともあります。楽天Edyの宮沢さんによれば、Edy利用者の過半数がモバイルとのことで、モバイル利用が進む実態も明らかです。
 他方で、「iPhoneにはNFCがサポートされていませんから〜」(磯邊さん)と、市場面からiPhoneにNFCがついていない問題点を指摘する意見もありました。
 クレジットカードの国際ブランドとの連携は、payWave/PayPassの導入にともない今後は決済端末、POSなどのインフラが普及。電子マネーもそのインフラを活用できないかという発想によるものです。実際に海外ではプリペイド方式のpayWave/PayPassの発行や利用が始まっています。先般NTTドコモが国内ではiD(FeliCa)、海外では PayPass(Type A/B)として使えるハイブリッド方式の新たな決済サービスを発表しています。今後電子マネーがこのような方式を採用するかどうかは不明ですが、検討の方向性は見えたような気がします。
 

2013年を『NFC元年』に

 今年はパネリストの皆さんに「NFC元年はいつですか?」とあえて問いかけました。むりやり誘導したというご指摘もありますが、「今年をNFC元年としましょう」ということで合意しました。これが【ポイント3】です。
 NFCは一体いつ始まるのか? との疑問を抱く人も少なくないと思います。これまでにもNFCを使ったトライアルは各地で実施されていますが、現実的に日本の電子マネーやIC乗車券のように広く普及するまでの道のりはまだ長いようにも感じます。
 しかし、考えてみればフェリカを使った電子マネーやIC乗車券もその普及には10年の年月を要しています。それに比べればNFCはまだ始まったばかりです。

NFCビジネスへの関与で明暗が分かれたプラットフォームセッション

 最終日のプラットフォームセッションでは決済サービスなどで必須となるウォレットやアプリのダウンロードサーバー(TSM)などを手掛ける事業者の方にご登壇いただきました。一つ残念な結果と反省があります。私の進行が悪く皆さんのプレゼンに時間がかかり議論ができなかったのです。これは大失敗でありまして、誠に申し訳なく思っています。
 内容は全体的にNFCビジネスに関与を深めている事業者と、そうでない事業者とで明暗分かれて聞こえました。スマホの普及により消費者のライフスタイルが変わり、NFCは重要なインターフェースである(マスターカードのフィリップさん、C-SAMのシュブレンドゥーさん)などの前向きな説明もありましたが、「NFCの対応にはお金がかかる」「必ずしもビジネスにつながるとはかぎらない」(NTTデータ大熊さん)などの発言もあり、NFCビジネスの難しい一面を垣間見ることもできました。
 また、Gemalto社の蔦田さん、大日本印刷の土屋さんにはそれぞれご自慢のNFC関連商品/サービスをご紹介いただきました。

最後に

 奇しくも『NFC元年』を宣言することになった今年のNFCカンファレンスですが、その内容には期待が持てる一方で、より具体的な課題も示される結果となりました。
 今後は決済サービスに加え、ポイント、クーポンなどの付帯サービスなども加わり、さらに利用シーンが家電や医療などにも広がりつつある状況にあります。そうなればNFCはもはや特殊なものではなく生活に溶け込んだごく普通のテクノロジーとなるでしょう。
 とはいえ、2013年はまずpayWave、PayPassがようやく立ち上がるところから始まります。先にも述べましたが、NFCの導入の道のりは長く、まだ始まったばかりです。
 「必ずしもNFCはビジネスにつながるとは限らない」との意見もありました。確かに、NFCの普及には時間がかかることに加え、NFC技術そのものは一端の通信技術に過ぎません。NFCという一点に過度な期待をかけることが正しい選択とは言えないでしょう。しかし、私はNFCが多くのスマホに実装されることによって、社会基盤を少しずつ変化させるモーメンタムを生み出しつつあるように感じます。
 より重要な点はNFCそのものではなく、背後や周辺にあるビジネスやライフスタイルの変化にあるのではないでしょうか。NFCに絡むビジネスを考える人は冷静にその変化を俯瞰する必要があると思います。

電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

バックナンバー

PAGE TOP