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連載コラム

史上空前の電子決済ブームに沸く日本 〜 「スマホ決済」「ブランドデビット」「ブランドプリペイド」

[ 2013年10月16日 ]

 電子決済研究所の多田羅です。いよいよ来年の「NFC & Smart WORLD 2014」まであと6ヶ月を切りました。ということで、この連載も来年3月に向け、再始動することになりました。
 引き続き、電子決済とICカード周辺の話題を語ってまいりますので、あらためましてよろしくお願いします。

文・多田羅 政和(電子決済研究所 代表)

数年に一度の電子決済ブーム、再び?

 さて、本リレーコラムの休載中、電子決済の周辺が大きな脚光を浴びるニュースの発表が相次ぎました。さながら、電子決済ブームの到来といった様相です。
 ICカードや電子決済関連の業界に比較的長い期間、身を置いている私の経験上、実は数年に一度、このようなブームが押し寄せてきます。古くは1990年代の後半、神戸、渋谷、大宮、新宿などの都市を舞台に、ICカード電子マネー(当時は接触ICカードが中心でした)の実証実験が繰り広げられ、初めて目にする「未来のお金」の姿に業界もマスコミも興奮したものでした。
 その後、2000年代に入ると、日本版デビットカードサービスの「J-Debit(ジェイデビット)」が鳴り物入りでデビューしました。ほぼ同時期に非接触ICカード「FeliCa」によるIC交通乗車券「Suica」や電子マネー「Edy」がサービスを開始し、電子決済という言葉もこの頃から使われ始めたような気がします。
 次の大きな波は2007年頃にやってきました。当時、関東の交通機関で利用されていた磁気カードの「パスネット」(鉄道用)と「バス共通カード」(バス用)が一本化され、IC交通乗車券「PASMO(パスモ)」が誕生しました。ちょうどその時期、大手流通グループのイオンとセブン&アイでも、それぞれ「WAON(ワオン)、「nanaco(ナナコ)」の名前で電子マネーを発表し、サービスを開始。さらに携帯電話事業者やクレジットカード業界も「iD(アイディ)」、「QUICPay(クイックペイ)」、「Visa Touch/Smartplus(ビザタッチ/スマートプラス)」を導入し、電子決済の世界は「まさしく戦国時代に突入した」と形容されました。このあたりのサービス事情は現在進行形ですので、皆さまもよくご存じではないでしょうか。

ブームの火付け役は「スマホ決済」

 それでは今回の電子決済ブームの主役はどのようなものでしょうか。
 この1~2ヶ月以内に続々と電子決済を特集した雑誌が発売されていますので、その特集タイトルを見てみると(業界の専門誌は除きます)、電子決済を取り巻く"祭り"の状況が、よくご理解いただけるのではないでしょうか。

 その正体は「スマホ決済」です。スマホ決済とは、スマートフォンやタブレットのイヤフォンジャックにマッチ箱大の磁気カード読み取り装置(リーダ)を取り付け、アプリマーケットからダウンロードした専用のアプリを使ってカード決済を処理するサービスのことです。簡単に言えば、「スマホがお店に置いてあるカード決済端末に早変わり」する魔法のグッズとなります。
 スマホ決済と呼べるサービスは、実は昨年くらいから、複数の会社から続々と発表されていたのですが、現在の話題の中心にいるのは、スマホ決済のパイオニアとも言える米・スクエア(Square)社のサービスです。日本の大手カード会社である三井住友カードと業務提携を行い、日本市場に参入しました。
 筆者も実際にスクエアのリーダを申し込み、アプリへの商品登録やクレジットカードの処理手順などお店(売り手)としての使い勝手を試してみました。また、機会があって利用者(買い手)としてもカード決済を体験してみましたが、いずれも問題なく、至って普通にカード取引が完了してしまいました(写真)。
 こんなに簡単な手続きだけで、カード決済端末が入手できてしまうというのは、まさに隔世の感があります。
 もちろん、ある程度以上の規模を持った一般のお店が、こぞってカード決済端末をスマホ決済に置き換えるということはないでしょうし、スマホ決済を提供する側も既存の端末の置き換えを狙っているわけではないでしょう。むしろこれまでカード決済端末を置くこと自体に縁遠かったようなスモールビジネスや、個人事業主、青空市やフリーマーケットのようなところが、スマホ決済をきっかけにカードの取扱を始めてくれることこそがターゲットであると考えられます。
 つまり、スマホ決済の登場により、クレジットカードを含む電子決済の市場はさらに広がる可能性が出てきたと言えます。

写真1 オンラインでの申し込み後、数日で届いたスクエア・リーダ。梱包からしてオシャレですね

写真2 カード決済はもちろん、現金決済の集計にも対応しています

次の波は、国際ブランド付きのプリペイド/デビット

 しかし、電子決済分野の新しい話題は、決してスマホ決済だけではありません。特に今年、大きな盛り上がりを見せたのが「デビットカード」と「プリペイドカード」です。
 「?? どちらも目新しいサービスではないのでは?」
 そう思われた読者の方もいらっしゃるかもしれません。確かに、前項で上げたJ-Debitや、最近コンビニなどで吊り下げ販売されているのを目にする機会の増えたプリペイドカードなどもあって、考え方は決して新しくありません。しかし、これから登場してくる(増えてくる)デビットカードやプリペイドカードには、皆さんがふだんクレジットカードで当たり前のように目にしているVisaやMasterCard、JCBといった国際カードブランドのロゴマークが付いていることが、決定的な違いです。
 すでに先月9月には大手メガバンクの三菱東京UFJ銀行が、本年11月より「Visaデビットカード」を新たに発行すると発表しています。デビットカードは預金口座から直接カード利用代金を引き落としますので、金融機関にしか発行できません。Visaデビットカードはこれまでも一部の都市銀行や地方銀行、ネット専業銀行などから発行されていますが、メガバンク参入のインパクトもあり、より消費者の関心を集めるサービスとして認知されていくことが予想されます。
 そして、プリペイドカードにも国際化の波が押し寄せて来ています。ドラッグストアチェーンのココカラファインではカード会社のクレディセゾンと提携し、日本国内および海外のVisa加盟店で利用可能なVisaプリペイドカードの機能を9月から提供開始しました。
 また、プリペイドの価値情報を含む識別記号だけをインターネットやお店のPOSレジなどを通じて払い出し、物理的なカードを発行しない「バーチャルプリペイドカード」にも、Visaブランド付きのものが登場しています。ライフカードの「Vプリカ」や三菱UFJニコスの「e-さいふ」などがそれに当たります。
 たかがロゴマーク、されどロゴマーク。VisaやMasterCard、JCBといった国際カードブランドが付くだけで、そのカードの利用できるお店は世界各国へ(もちろん日本を含みます)、あるいはインターネットへと飛躍的に増加します。それは、消費者にとっても大変便利なサービスの進化と言えるでしょう。
 今回は詳細に触れませんが、通信事業者のNTTドコモがVisaと提携して「Visaプリペイド」のサービスをスタートするなど、参入する事業者の業種・業態は広がりを見せ始めており、今後もしばらくは、この流れは続くと予想されます。

電子決済の新動向とNFCとの親和性は?

 ということで、今回は休載期間中に話題となった電子決済サービスについて、いくつか紹介してみました。
 今回紹介した新サービスには残念ながら「NFC」の単語が登場しませんでしたが、いずれもサービスの延長線上には、ICカードやNFCへの対応が避けて通れないテーマとして存在していることは間違いありません。
 そんな話題についても今後の連載で紹介していきたいと思いますので、どうぞお楽しみに!

電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

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