日経メッセ > リテールテックJAPAN > 連載コラム > 電子決済・ICカード国際情報局 > 「2020年、世界は『ハイパーコネクテッドワールド』になる」〜CARTES 2014基調講演レポート

連載コラム

「2020年、世界は『ハイパーコネクテッドワールド』になる」〜CARTES 2014基調講演レポート

[ 2014年12月16日 ]

 こんにちは、電子決済研究所の多田羅です。読者の皆さまにおかれましては、年の瀬、お忙しくお過ごしのことかと存じます。さて、今年も11月4〜6日の3日間、フランスはパリのノール・ビルパントの展示会場にて「CARTES SECURE CONNEXIONS 2014(以下、「CARTES」という)」が開催されました。CARTESの初日には、展示会を代表する国際的カードビジネス関連企業たちのエグゼクティブが多数登壇して、豪華な基調講演が行われます。今回は、そちらの内容を中心にレポートします。

文・多田羅 政和(電子決済研究所 代表)

業界人を悩ませた11月、パリかラスベガスか、それが問題だ

 今年のCARTESは、米・ラスベガスで開催された金融関係のカンファレンス(「Money 20/20」)との日程重複が影響し、この時期、業界関係者の足はフランスとアメリカとに二分されたと言います。実にもったいない話ですし、お互い事前にわかっているのでしょうから、そこはぜひ調整して欲しいですよね。
 それでもCARTES 2014の入場者数は1万9,156名に上り、延べ163カ国からの参加があったというから、たいしたものです。しかも出展企業の数は、小ぶりなブースが増えた印象が強くはありましたが、460社・団体と、昨年(2013年)から10の純増を記録しています。同時開催された専門カンファレンス(セミナー)のセッションの数も3日間を通じて145講演が用意され、登壇したスピーカーは160名にも上りました。
 筆者は今年、偶然も重なって、CARTES初日の朝から会場に足を踏み入れることができました。会場内の人の入りですが、確かに初日の印象としては、例年よりもやや来場者が少ないように感じられました(写真1)。

     写真1 例年よりは人通りが少ない印象だったCARTES2014の会場

フランス国内のNFCサービス普及状況をOrangeが紹介

 さて、例年CARTES初日の午前中には、参加者の誰もがフリーで入場できる「キーノートカンファレンス(基調講演)」が行われています。その会場には、ぜひご覧ください(写真2)、約500名の業界関係者が、国籍を問わず、ぎっしりと席を埋めている様子が伝わりますでしょうか。照明こそクールですが、朝一番だというのにものすごい熱気に包まれていました。会場の人通りが少ないと感じた原因は、これだったんですね。

写真2 ゲストスピーカーの登壇時には派手な音響演出も

 CARTESを主催するCOMEXPOSIUM社でイベントディレクターを務めるイザベル・アルファーノさん(写真3)の挨拶に続いて、キーノートのプログラムはOrange社、Eurosmart、関連メーカーのエグゼクティブによるパネルディスカッションの順に、全体では約2時間半にわたって行われました。余談ですが、CARTESの運営面では、女性の活躍が大変に目立ちます。イザベルさんをはじめ、カッコイイ女性たちが入場受付、専門カンファレンスの進行管理、会場の誘導、もちろん各社の展示ブースの運営と、さまざまな場面で展示会を支えています。このあたりは、日本の展示会とは少し違った印象を受けるはずです。

写真3 CARTESイベントディレクターのイザベル・アルファーノさん

 基調講演の冒頭では、フランスの通信キャリアであるOrangeでNFCプログラムのディレクターを務めるフランソワ=ザビエル・ゴードンさん(写真4)から、フランス国内におけるNFCの展開状況について報告がありました。

写真4 Orange・NFCプログラムディレクターのフランソワ=ザビエル・ゴードンさん

「まず、Apple PayのNFC市場への参入は、われわれにとってグッドニュースだと申し上げたい」と話を切り出したフランソワさんの口からは、「フランスではすでに600万台のNFC対応デバイスが販売されている」「来年、2015年にはフランス国内のPOSのおよそ30%がNFC決済に対応するだろう」など、フランス国内のNFC展開が順調に進んでいることを示すコメントが続きました。
 そんな中でも、筆者にとって新鮮だったのは、フランスの統一NFC推進ブランド(日本で言うところの「おサイフケータイ」のような位置付けですね)であった「Cityzi(シチジ)」のロゴマークを変更したというものです。Cityziの推進母体であるAFSCMと、決済カードブランドの世界的組織であるEMVCoとの間で、ブランディングに関して合意された結果、今年6月からは写真5のようなデザインに変わったそうです。

写真5 NFC推進のロゴマークが超シンプルなデザインに変更

 フランソワさんの説明によれば、フランスにおけるNFCの展開は、端末、(NFCに対応する)SIMカード、TSMなどのサービスイネーブラーのいずれをとっても今後、広がりを見せていくそうです。

われわれの未来は明るくて、セキュアだ!

 基調講演の中盤には、パネルディスカッションが行われました。最初のゲストスピーカーには、ヨーロッパのICカード産業を代表する工業界である「Eurosmart(ユーロスマート)」から、チェアマン(会長)のオイビンド・ラスタッドさん(写真6)が登壇し、市場の現状と将来性について市場の統計資料を参照しながら総括しました。

写真6 Eurosmartチェアマンのオイビンド・ラスタッドさん

 Eurosmartでは、今後もスマートカードをはじめとする「スマートセキュリティソリューション」の普及進展はとどまることなく、今年(2014年)から来年(2015年)にかけて、市場は対前年比9%の増加、87億9,000万個のセキュアチップが出荷されることを予測しています(写真7)。
 さらにオイビンドさんは、2020年を見据えた展望として、「オンラインペイメントは現在よりもセキュアな決済(環境)に進化する」、「(M2Mなどの)保護されていないIDデータもセキュアになる」などの予言を言い残しました。
「2020年、この世界は間違いなく『ハイパーコネクテッドワールド』になる。未来は明るく、そしてセキュアだ!」----。あまりにもキマリすぎていて、筆者は軽く感動してしまったのですが、お題がスマートカードだけに、締め括りのコメントも実にスマートでした。

写真7 スライドタイトルは「力強い市場の成長性」。金融(Banking)向けが特に伸びています

来年は30周年を迎える「CARTES」 スタートアップの応援企画も

 基調講演の後半には、関連メーカーのエグゼクティブによるパネルディスカッションが開催されました。パネリストの所属会社を挙げますと、Gemalto、Infineon Technologies、Worldline、Ingenico Group、Oberthur Technologies、VeriFone、NXP semiconductorsの7社から7名が登壇、そこに3名のモデレータ(進行役)が加わり、実に総勢10名(!)のパネルディスカッションに(写真8)。紙幅の問題からここでは詳細をご紹介できませんが、「決済&流通分野のイノベーション(Innovation for Payment & Retail)」の大テーマの下で、「Mobile Payments」「Secure Online Payments」、「New Innovation Services」などのキーワードに沿って意見交換が行われていました。

写真8 業界の名立たるキープレーヤーたちが白熱した議論を展開

 また、29年間も開催が続いているCARTESですが、新しいイベントも随時、企画され、プログラムとして盛り込まれています。今年はスタートアップ企業のコンテスト(STARTUP CHALLENGE)を初めて企画実施し、CARTESの開催期間中に受賞者の発表と表彰式を行っていました(写真9)。会期直前にファイナリストとして選出された5社からのプレゼンが行われた後、厳正なる審査の結果、今年の大賞はイギリスのtruRating社が受賞しました(写真9)。同社のtruRating(サービス名)は、決済端末を活用し、決済と利用した店舗のレーティング(評価)を組み合わせるという非常にユニークなサービスです。

写真9 受賞者たちの嬉しそうな表情を見ていると、こちらまで嬉しくなってきます

 さて、CARTES展示会は来年(2015年)、記念すべき開催30周年を迎えます。他のNFC技術に関連する展示会との比較や、開催地であるヨーロッパの存在感、あるいは出展テーマとしての「カード」の永続性などの観点から、展示会としての注目度を下げる方もいらっしゃるようですが、筆者としては、CARTESのある限り、今後も欧州に足を運び続けたいと考えています。
 まずは盛大に30周年をお祝いするところから始めなければいけませんね!

電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

バックナンバー

PAGE TOP