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連載コラム

欧州のトラステック展でも注目を集めたバーコード決済 コンビニ全店対応で日本でも大流行なるか?

[ 2017年2月16日 ]

本連載のタイトルにもなっている「ICカード」関連の国際イベントといえば、毎年11~12月頃にフランスで開催される「トラステック(Trustech)」を外すことはできません。今回からカンヌに開催地を移した同イベントですが、その会場の各所で紹介されていたのがバーコードを利用したモバイル決済サービス。今回は、日本でも最近流行りのバーコード決済について筆者の体験談を交えて紹介します。

文・多田羅 政和(電子決済研究所 代表)

欧州にもアリペイ旋風、展示会場にバーコード対応製品も続々

 昨年の11月29日から12月1日までの3日間、カードビジネス関連では世界最大級の展示会/カンファレンスイベント「トラステック(Trustech)」が開催され、筆者も参加してきました。昨年までは「CARTES(カルテ)※カードの意味」の名称で長らく親しまれてきた展示会ですが、今回から装いも新たに、フランスの高級リゾート地としても有名なカンヌの会議場にて開催されることになりました(写真①)。

写真① トラステックの会議場はカンヌ国際映画祭のメイン会場としても知られる「パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ」
写真① トラステックの会議場はカンヌ国際映画祭のメイン会場としても知られる
「パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ」

 開催地がフランスですから、例年ヨーロッパ企業の出展が最も多く見られるのですが、今年は意外なことに、中国、韓国などアジア系企業の存在感が大きく増していました(写真②)。決済端末やスマートカード(ICカード)、ウェアラブルデバイスなど、バリエーション豊かな展示は見ているだけで楽しくなってくるほどです。

写真② 中国をはじめアジア系企業の出展が目立ったトラステック会場
写真② 中国をはじめアジア系企業の出展が目立ったトラステック会場

 さて今回のトラステックでは、出展企業の顔ぶれに加えて、もう一つ、アジアらしい技術トレンドが目立って見られました。それは、中国発のバーコード(本稿では「QRコード」を含む総称として用います)を利用したモバイル決済サービス「アリペイ(支宝付)」(アントフィナンシャルが提供)、「ウィーチャットペイ(微信支付)」(テンセントグループのテンペイが提供)への欧米諸国の対応ぶりです(写真③、写真④)。

写真③ フランスの端末ベンダーFAMOCOのブースではアリペイ対応のデモを披露。バックエンドはBanque Edelが担当
写真③ フランスの端末ベンダーFAMOCOのブース
ではアリペイ対応のデモを披露。バックエンドは
Banque Edelが担当
写真④ アメリカの決済端末ベンダー、ベリフォンもアリペイ対応機種を発表
写真④ アメリカの決済端末ベンダー、ベリフォンもアリペイ対
応機種を発表

 バーコード決済自体は欧米でも珍しいサービスではありません。例えばアメリカには前回の本連載でご紹介した「ウォルマートペイ」(写真⑤)がありますし、イギリスでも「YoYo Wallet」(写真⑥)などのサービスがこぞって利用者を増やしつつあるようです。

写真⑤ ウォルマートペイはQRコードをスマートフォンで撮影して決済する
写真⑤ ウォルマートペイはQRコードをスマートフォンで撮影し
て決済する
写真⑥ YoYo Walletはイギリスで普及しつつあるバーコード決済(一部修正しています)
写真⑥ YoYo Walletはイギリスで普及しつ
つあるバーコード決済(一部修正しています)

 それでも、後述しますが、事実上、中国人専用のモバイル決済サービスであるアリペイ、ウィーチャットペイに対応するお店がアジアを飛び出して欧米にまで拡大していくさまは圧巻で、中国人旅行者の威力を感じます。
 ここ日本でも、決済サービス事業者やクレジットカード会社などが積極的に取り扱いを始めたことで、利用できるお店が急速に広がりつつあります。先月下旬からはコンビニ大手のローソンが全店対応しましたので、アリペイのサービスカラーであるブルー地ののぼりを日本全国に約1万3,000店あるローソンの店頭で目撃して知った方も多いのではないでしょうか(写真⑦)。

写真⑦ 今年1月24日からは日本全国のローソンでアリペイ対応がスタート
写真⑦ 今年1月24日からは日本全国のローソンでアリペイ対応がスタート

 ローソンによれば、1月24日より2月5日までの13日間で累計利用件数は5万2,000件に上ったそうです。平均利用単価は800円から900円で、牛乳(200ml、500ml)、おでん、肉まん、お水などが売れ筋とのこと。まさに日常使いの決済なんですね。

アリペイ、ウィーチャットペイは中国人専用?

 アリペイの使い方は決して難しくありません(今回は省略しますが、ウィーチャットペイもほぼ同様の使い方です)。利用者はあらかじめスマートフォン向けのアリペイアプリをダウンロードし、個人情報を入力することで利用者登録を行います。その際、新規に開設される自分の「アリペイ口座」に、自分が所有している中国銀聯ブランドのデビットカード情報を登録する点がポイントです。これによりアリペイ口座と、銀行口座にある自身の預金残高とが紐付けられます。
 さて、お店で使う際にはまずアリペイアプリを起動して、バーコード画面を表示した状態で会計の順番を待ちます(写真⑧)。焦らない方はもちろんレジ前でアプリを起動しても問題ありません。そしてレジでは店員さんが手にしたハンディ型のバーコードリーダーや、専用タブレットのカメラなどを使ってバーコードを読み取ってもらいます。すると、アプリに今買い物した内容がレシートメッセージとして瞬時に表示され、確かに買い物できたことを確認できます。支払ったお金はどこから? はい、先ほど紐付けした銀行の預金口座からの引き落としになるんです。

写真⑧ アリペイアプリからバーコードを表示した画面(一部修正しています)
写真⑧ アリペイアプリからバーコードを表示した画面(一部修正しています)

 この使い方はいたって簡単で、特にコンビニやスーパーなどで支払う場面を想像してみてください。コンビニでは買おうとして持っていった商品を「ピッ」「ピッ」と店員さんがスキャンしてくれますよね。それがすべて終わったタイミングでスマートフォン(以下、スマホ)のバーコード画面を提示すれば、店員さんが余力で「ピッ」と読み取って、はい終了。お財布を取り出す寸分の隙もありません。
 実は、筆者のiPhoneにはアリペイアプリをインストール済み、中国のデビットカードの登録も済ませておりまして、昨年の夏に上海を旅行した際にはとっても便利なアリペイ決済を体験することができました。最初こそ恐る恐る「試しに・・・」のつもりでしたが、上海の市内では何しろほとんどのお店がアリペイに対応しているので、まさしく実用的でした。
 そこで昨年末のトラステックのための渡欧の際には、この便利さをぜひヨーロッパでも味わってみたいと思い立ちました。舞台はイギリスの老舗百貨店ハロッズ(空港の店舗)。こちらでは通常使っているPOSレジではなく、おそらくアリペイの受け入れ専用に使用していると思われるタブレットを用いての処理になっていました。新しい決済サービスが始まる際には世界中でよくある光景ですが、筆者がお店に掲示されたマークを指さしながら「アリペイで支払いたい」と告げると、店員さんが慌てて「店長~っ(※実際は英語)」と呼んでくれました。そこから決済を試すまでの店内のすったもんだは省きますが(笑)、店員さんにもご協力いただき何度かトライしたものの、残念ながらお店のタブレット側にエラーメッセージが表示されてしまい、使うことができませんでした。
 その場では使えなかった事実だけを持ち帰ることとなったのですが、後からアリペイで登録済みの携帯メールアドレスに飛んできたメッセージを見ると、「このサービスは中国のID所有者だけが利用できます」(写真⑨)と書かれており、原因が判明しました。それからも日本のアリペイ対応店舗で何度か試してみましたが、結果はやはり同じ理由で失敗に。アリペイは事実上、中国人専用のモバイル決済サービスだということなのでしょう。

写真⑨ イギリスでアリペイ決済失敗後にSMSで飛んできたエラーメッセージ
写真⑨ イギリスでアリペイ決済失敗後にSMSで飛んできたエラーメッセージ

LINE Payはプリカ口座に加えてクレジットカードにも対応

 さて、ここまで読み進んだ読者の皆さんもバーコード決済を体験してみたくなったのではないでしょうか? 日本人の私たちがバーコード決済を体験することはできないのでしょうか? いえ、とんでもない。世界的な流れに反応して日本でもバーコード決済を提供する事業者が相次いでいます。「楽天ペイ」、「LINE Pay(ラインペイ)」などが有名どころですが、対応しているお店の多さという点でLINE Payを紹介したいと思います。
 本稿の最初のほうで「コンビニのローソンが全店でアリペイ対応」という話をお伝えしましたが、それと同時にLINE Payのバーコード決済にも全店で対応したんです。本稿執筆時点で日本人が利用できるバーコード決済としては、おそらく最大規模のサービスではないでしょうか。
 LINE Payは、無料通話やSNSとして利用者の多いLINEの一つのサービスです。仕組みはアリペイなどと似ていて、やはり銀行口座ではない「LINE Pay口座」を利用者登録や所定の本人確認作業を経て開設する必要があります。その上で、スマホのLINE Payアプリ画面からバーコード表示を選択し、レジで読み取ってもらって決済を完了します(写真⑩)。

写真⑩ LINE Payのバーコード表示画面(一部修正しています)
写真⑩ LINE Payのバーコード表示画面(一部修正しています)

 LINE Pay口座はいわゆる「プリペイド口座」で、銀行送金やコンビニ払いなどの方法であらかじめお金を入金しておきます。入金した残額の範囲内であればバーコード決済に利用できます。ちなみにこの口座には、JCBブランドの付いたプリペイドカード(LINE Payカード)」も登録されていて、バーコード決済に対応していないお店でもJCBカードの使えるお店であればこのカードを通じてLINE Pay口座の残額範囲内での支払いが可能です。
 さらに、LINE Payにクレジットカード情報を登録しておけば、LINE Payの口座残高を気にすることなく、登録したクレジットカードの利用可能額の範囲でバーコード決済ができます。クレジットカードをお店で提示して処理してもらうよりも、バーコード読み取りなら、よりスピーディに支払いを済ませることができそうですね。この違いは、ぜひローソンで試して体感してみてください。

 今回は話が複雑にならないようにあえて説明しませんでしたが、バーコード決済にはスマホ画面にバーコードを表示して使うだけでなく、スマホアプリのカメラ機能を使ってお店に掲示された(もしくはお店のタブレットなどに表示された)バーコードを読み取る方式も併用されています。この場合、決済の処理はお店のレジ側ではなく、利用者のスマホのネットワーク通信を利用して行われることになります。お店にいながらにして、オンラインショッピングの際のような「ネット決済」をしている感覚ですね。
 「でも大切なお金のやり取りにバーコードを使うって言っても、画面をコピーされたら他人に使われちゃうんじゃないの?」とか、「セキュリティの高いICカードなんかと比べて情報の安全性はどうなの?」なんて疑問が次々湧いてきて、まだ半信半疑な方も多いのではないでしょうか。
 そんな心配性な皆さんも、まずは少額でも良いので入金してみて、ぜひバーコード決済を試してみてください。いま、電子決済の世界に起きているダイナミックな動きを体感いただけると思います。

電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

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