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オーストラリアでも進み始めたクレジットカードのIC化

[ 2009年11月11日 ]

文・山本 正行(山本国際コンサルタンツ 代表)

 『IC CARD WORLD』ウェブサイトをご覧の皆様、こんにちは。山本国際コンサルタンツの山本です。

 このコラムでは、主に電子決済、ICカードに関する海外情報についてお伝えしていきますが、先月の電子決済研究所・多田羅政和さんとのリレーコラムの第2回目は、山本正行がバトンを受け取りました。どうぞよろしくお願いいたします。

「シドニーはようやく景気が戻ってきたけど、日本はどうだい?」

 本連載は海外情報をテーマとしておりますが、今回はたまたま所用があってオーストラリアに行ってきましたのでご報告したいと思います。

 ご存じの通り、オーストラリアは南半球にあります。日本が晩秋へと向けて樹木が色づき始める今、あちらは春から初夏へむけて希望に満ちた季節にあります。私が滞在したシドニーでは、春を知らせる紫色のジャカランダがとても美しく、温暖な気候も手伝って滞在中はカラッと晴れて連日25度以上もありました。おかげで私はこんがりと日焼けしてしまいました。

ジャカランダの写真
色鮮やかに咲き誇るジャカランダの花(2009年10月第5週にシドニーにて著者撮影)

 さて、そのオーストラリアですが、電子決済やICカードに関する話題に乏しく、「今さら何でオーストラリアへ?」と聞かれるような事もしばしば。今回はたまたま用事がありましたが、それも残念ながら決済やICカードとは無関係の内容です。

 ここでオーストラリアの経済事情を見てみましょう。経済情勢や分野にもよりますが、カードの決済金額の市場規模は中国、日本、韓国に次いで4番目くらい。アメリカに匹敵するほどの大きな国土に比較して人口が少ないので、経済規模は意外に小さいのです。しかし、景気は一度落ち込んだ後でまた盛り返しています。

 それは飛行場からのタクシーの運転手の間で、

「シドニーはようやく景気が戻ってきたけど、日本はどうだい?」

と、景気回復の挨拶が社交辞令になっていることからもうかがい知ることができます。

 文化的にはイギリス移民に始まる西欧文化をベースとしますが、アボリジニなどの原住民と、後になって入ってきたアジア移民の文化が混ざり合い、独特なエスニックを醸し出しています。

クレジットカードIC化(EMV)の課題はここでもやはり・・・

 話を電子決済に戻しましょう。先にオーストラリアでは決済やICカードに関する話題に乏しいと説明しました。確かに電子マネーの普及はまだまだですし、目新しいサービスがあるわけでもありません。しかし実はクレジットカード、デビットカードはとても普及しています。日常の買い物でのカード利用は当たり前ですし、学生が「マエストロ(Maestro)」と呼ばれるデビットカードで普通に買い物をする姿も見られるほどです。

 カードのシステムは欧米の仕組みを踏襲しており、クレジットカードは主に銀行が発行し、加盟契約も全て銀行取引の一環として行われます。加盟店手数料も欧米水準よりも低めの設定となっています。

 ところで、オーストラリアは日本や欧州で導入が進むクレジットカードのIC化(EMVと呼ばれる)がなかなか進まない地域の一つと指摘されてきました。ところが、最近になってクレジットカードのIC化が一気に進んだようです。今回、シドニーで会った知人が、

「最近こちらではカードで決済の際に暗証番号を入れさせられるけど、暗証番号は覚えていますか?」

と注意してくれたくらいです。昨年もシドニーを訪れていますが、話題にはならなかったのでここ1年の出来事のようです。

 クレジットカードがIC化され、決済の際に暗証番号を入れるという話題は、日本ではもう7~8年前のこと。ヨーロッパで今や必ずといっていほどにまで普及しているクレジットカードのIC化の波が、ようやくオーストリアにもやってきたようです。

 そこで知ったかぶりをしたがる私は、知人に少しだけ知恵を付けてあげました。

「暗証番号がどうして必要かご存じですか? カードを見れば分かりますよ。ほら、チップがついているでしょう? 暗証番号はここに入っているんですよ!」

ICカード

 ちょっと馬鹿にしたような話で知人には申し訳なかったのですが、知人は、

「あ、本当だ! 最近はこんなのが付いているんですね・・・」

と、無邪気に喜んでくれました。参考までに暗証番号を忘れた場合はどうなるのか聞いてみると、

「うん、そういう人が多いみたいでサインでもOKですよ!」

...うむ、それではICカードの意味が...。

いかにもオーストラリアらしい、のどかな話でした。

SEPAでもクレジット・デビットカードのIC化を義務づけ

 さて、今月16日からは「欧州視察2009」の団長として、パリ、ロンドンのカード&モバイルペイメント視察に行ってきます。そのご説明を少しだけいたしましょう。

 詳しくは前回の多田羅さんのコラムに紹介されていますが、今回の訪問ではSEPA(Single Euro Payments Area)についての最新情報をヒアリングして参ります。

 SEPAは、EUの中でも、通貨統合からさらに踏み込んで、国を跨いだ預金引出や送金サービスについても統一化しようとする地域の名称です。SEPAでは金融決済取引に関するいくつかの基準を設けていますが、その中で、2011年末までにクレジット・デビットカードのIC化(EMV)を義務づけています。急に専門的な話になり恐縮ですが、先のオーストラリアのように、世界的にはIC化がやっと始まった地域もある中で(別途ご紹介しますがアメリカはまだ始まっていません)、EU地域は世界に先駆けてIC化を推進し、まもなくその終了が見えてきたという話です。

...視察はそれ以外にも話題が盛りだくさんです。詳しくは帰国後のコラムをお楽しみに。

電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

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