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連載コラム

世界最大級のカードビジネス展示会「Cartes 2009」が閉幕

[ 2009年12月10日 ]

文・多田羅 政和(電子決済研究所 代表)

 『IC CARD WORLD』ウェブサイトをご覧の皆様、こんにちは。電子決済研究所の多田羅です。
 本連載も3回目の更新となりました。回を追うごとに更新日が遅れているような気もいたしますが、そこはあまり突っ込みをなさらず(笑)、何とぞお付き合いのほどよろしくお願いします。
 さて、前回の更新の直後に当たる11月17日~19日には、フランス・パリで世界最大級のカードビジネス展示会『Cartes & IDentification 2009』が開催されました。今回はこちらの模様を簡単にレポートいたします。

400社・団体を超えるブースが出展

 スマートカード(※1)普及・発祥の地で開催される『Cartes & IDentification 2009』(カルテ・アンド・アイデンティフィケーション。以下、Cartes 2009)は、カードビジネス関連の展示会では世界最大規模のものです。世界不況の影響はありますが、それでも本年も427の企業や組織・団体がブースを出展しました。日本の『IC CARD WORLD』の出展社数が約50ですから、それと比べても世界最大級といわれる所以です。

 Cartesの出展対象企業は、カード印刷メーカー、ICチップサプライヤー、端末メーカー、発行機メーカー、システムインテグレーター、通信事業者、規格関連団体、出版・メディアなど、カードビジネスに携わるありとあらゆる業態にわたります。開催地であるヨーロッパの企業が多いことは事実ですが、米国を拠点とする端末メーカーや、アジアのメーカーなども例年こぞって出展しています。今年は全体の78%の企業・団体がフランス国外からの参加だったそうです(下の写真)。

 展示会は主に、ブース展示と有料カンファレンス、そして協賛企業によるワークショップで構成されています。加えて年間ベストプロダクトの表彰なども企画され、お祭りムードを演出していました。

 こちらの展示会の印象として、派手なデモンストレーションやワークショップが目立つわけでもなく、淡々とブース展示が立ち並んでいる雰囲気があります。物見遊山で訪れたような参加者はほとんどなく、各ブースでは商談ベースの打ち合わせが繰り広げられているように見え、真剣ムードが漂っていました。しかし、夕方4時を過ぎた頃から雰囲気は一転します。ブースでワインやビールを来場者に振る舞う企業も多く、会場全体がなごやかなムードに包まれていました。

 大日本印刷(DNP)など日本企業の出展も見られましたが、数は少なく、ここ数年ではおそらく最小の出展社数だったのではないかと思われます。日本は非接触ICの展開では先をゆく存在なだけに、少し淋しい気がいたしました。

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『Cartes & IDentification 2009』の会場内風景

展示会と連動した特別な交通カードもお目見え

 さて、Cartes 2009の開催会場ですが、過去にはいくつかの地域を点々とした経緯がありましたが、ここ数年はパリの北東、シャルル・ド・ゴール空港へと向かう途中にあるパリ・ノール・ヴィルパントのエキシビジョンセンターで行われています。会場は広大で、日本に例えるとちょうど幕張メッセのような印象です。

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『Cartes & IDentification 2009』の会場入口

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展示会フロアマップ。Cartes 2009では2ホールを利用

 ところでパリでは、あたかもCartes展示会に合わせたように、毎年大規模な交通ストライキが決行されます。昨年は小規模な鉄道のストで済みましたが、特に一昨年はほとんどの公共交通機関がストップし、大混乱が生じました。そうなると展示会に向かう人々にとってタクシーやレンタカー等の足だけが頼りになりますが、皆さんとも同様の事情ですから、結果として会場へ向かう道路は大渋滞に。中にはお気の毒に、出展企業の担当者が会場までたどり着けないという珍事もあったようです。

 幸いにも今年はこの交通ストライキがありませんでしたので、RERなどの鉄道を使っても会場までスムーズに足を運ぶことができました。さらに今年は現地の公共交通機関を司るRATP(パリ市交通営団)がCartes展示会向けにひと肌脱いでくださいました。

 報道機関など一部の関係者に限られたようですが、Cartes展示会の参加者向けとして写真のようなグッズが配布されました。IDカードのアタッチメントとしてプラスチックのお守りのようなものが付いていますが、実はこの中に非接触ICチップが組み込まれており、鉄道に乗れるようになっていたのでした。

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関係者限定で配布された「NaviGo」互換USBキー

 Cartes開催期間とその前後、11月16~20日の期間中はパリ市内の一定区間(ゾーン)の公共交通機関が利用可能という気前の良さ。パリ市内から展示会場への移動はもちろん、電車やバスにも乗り放題(!)になっていました。

 RATP、太っ腹っ!

 ところで、パリの自動改札では日本のSuicaと同様の仕組みで動く非接触ICカード「NaviGo(ナビゴ)」が導入されています。このアタッチメントにもNaviGoのチップが組み込まれ、上記の利用権利が書き込まれていたわけです。今回は実験的な配布でしたので機能していませんでしたが、将来の商用化の際には、USBキー部分をパソコンに差し込んむことで、チケットのオンライン購入なども可能になるそうです。

 少し気が早いですが、来年のCartesは12月7日~9日の日程で開催が決まっています。次回はCartes開催25周年だそうなので、初めての方もぜひ、ご参加を検討されてみてはいかがでしょうか。

※1 CPU付きICカードを指す。

電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

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