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アジア初開催! 『CARTES in Asia』現地リポート

[ 2010年5月13日 ]

文・多田羅 政和(電子決済研究所 代表)

 『IC CARD WORLD』ウェブサイトをご覧の皆様、こんにちは。電子決済研究所の多田羅です。

 さる3月16日(火)~18日(木)の3日間、アジア地域では初となる『CARTES in Asia 2010』が香港で開催されました。どのくらいの規模で開催されるのか、どんな企業が出展するのか、アジアのカード産業は盛り上がっているのか等々、業界人であれば気になるところですよね。

 今回は同展示会場の現地リポートをお送りします。

関連業界の116社・団体が参加

 『CARTES in Asia』(以下、カルテ・アジア)は、毎年11月頃にフランス・パリで開催されている世界最大級のカード業界イベント、『Cartes & IDentification』(以下、カルテ)のアジア地域版に当たるものです。

 イベントのスタイルはいずれも、関連企業のブース展示および注目企業のキーパーソンによるカンファレンス(講演会)で構成されるいわゆる展示会形式で、主催はフランスのコムエクスポジウム社(Comexposium)が担っています。

 20年以上の歴史を持つカルテの出展企業数は、多い年には500社を超え、昨年でも400社以上が参加しました。そんなこともあって、アジア地域での開催規模がどこまで本家に迫れるのか注目されましたが、結果的にはやや控えめ(?)な数字に落ち着いたようです。カルテ・アジア出展企業の数は116社・団体、3日間を通じた来場者数は2,800名ほどでした。

第1回アジア・セサミ大賞は・・・?

 カルテ・アジアの会場となったのは、香港の「アジアワールド・エキスポセンター」です。2005年に建設されたこともあり、清潔感の漂うきれいな会場でした(写真1、2)。

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左:写真1 アジアワールド・エキスポセンター、右:写真2 カルテ・アジアのエントランス

 成田からは5時間ほどのフライトで、香港国際空港に到着します。入国審査を終えてたどり着いた先の空港駅には高速鉄道(AirportExpress)が乗り入れており、九龍や香港島といった香港の中心市街地と空港とを結んでいます。そしてカルテ・アジアの展示会場は、市街地へ向かうのとは逆の方向へひと駅、わずか5分ほど乗った先のAsiaWorld-Expo(博覧館)駅にあります。到着当日のアクセスとしては悪くないですね。

 さて、カルテ・アジアの初日に当たる3月16日は、展示会場はオープンせず、カンファレンスルームを会場として夕方4時からオープニング記念イベントとカクテルパーティーが行われました。関連企業のVIPや出展企業の担当者、報道関係者など約200名が席を埋める中、カード業界では著名なニューズレター誌、米・ニルソンレポート発行人のデビッド・ロバートソン氏が登場し、カルテ・アジアの開幕を告げました(写真3)。

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写真3 オープニングカンファレンスの進行役を務めたデビッド・ロバートソン氏(ニルソンレポート発行人)

 開幕記念講演では、香港でICカードといえば知らぬ人のいないオクトパスカードの現状について、同社のアントニー・モリス氏からプレゼンテーションが行われました。オクトパスカードは今や、香港人口(09年末で約700万人)の95%が所有しているそうで、「世界で最もアクセプタブル(利用可能)な商用のICカード」と説明していました。

 実は私も知らなかったのですが、「AAVS」のサービス名称で、お店のレジでのオートチャージ(残高不足時に登録しておいたクレジットカードなどから自動入金する機能)にも対応しているんですね! 今後のオクトパスの機能進化や海外展開などの見通しなども同氏から語られました。

 その後、有力企業の担当者によるパネルディスカッションなどをはさんで、カルテ名物の「セサミ大賞」の発表が行われました。セサミ大賞は、その年に発表された優秀な製品やソリューションを表彰するもので、本家のカルテでも継続的に実施されている企画です。

 その最終選考には、ベリフォン社のiPhoneを決済端末化するアタッチメント・ソリューションや、携帯電話に貼りつけるだけでNFC(Near Field Communication)の機能をエミュレートできるTWINLINX社のモバイルNFCステッカーなど5つの製品が残っていましたが、記念すべき第1回アジア・セサミ大賞は、中国・WATCHDATA社の「DBS Live Fresh 3-in-1 Visa credit card」(写真4・※1)が受賞しました。

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写真4 セサミ大賞を受賞した「DBS Live Fresh 3-in-1 Visa credit card」

 やや文化祭的なノリではありますが、こういう企画や演出はなかなか盛り上がりますね。

際立つ、中国メーカーの存在感

 さて、写真5はカルテ・アジアの会場内マップです。こちらをご覧いただくとイメージが掴めるかと思いますが、『IC CARD WORLD』のちょうど2倍くらいの規模でしょうか。

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写真5 カルテ・アジアの会場内マップ

 先ほど、出展企業は全体で116社・団体と紹介しましたが、その実に半分以上が中国をはじめとするアジア出身の企業でした。中国本土の会社、シンガポールの会社、韓国の会社、もちろん香港の会社などが軒を連ねており、恥ずかしながら知らない名前の企業も多く出展していました(しかもかなり大きなブースを!)。

 いくつか企業名を挙げてみましょう。中国ではWATCHDATA、CEC(中国電子)、HENGBAO、CIITA、Beijing Huahong IC Design、Nationz Technologies、Shanghai Expo Tickets of Huahong Chips、SHANGHAI CHINA CARD SMART CARD、CHINA NATIONAL IC CARDS QUALITY、Invengo Information Technology、Eastcompeace Smart Cardなど。香港ではSPECTRA TECHNOLOGIES HOLDINGS、GOLDPAC Datacard Solutions、Advanced Card Systems、PAX Technology等々の企業が出展していました。読者の皆様はどれくらい知っている企業がありましたか?

 もちろんこの他にも、カード発行機のデータカード(Datacard)や決済端末メーカーのベリフォン(Verifone)、国際ブランドではMasterCardなど、グローバルなメジャー企業の出展が見られました。全体的には、中国本土をはじめとするローカル企業の出展は積極的、他方グローバルメーカーらは初開催の展示会とあって様子見のスタンスを決め込んだ、というのが実態かもしれません。

 では、出展企業を国別に見てみましょう。数の多い順では、中国=31、フランス=18、香港=16、イギリス=9、ドイツ=8、シンガポール=8、アメリカ=5、マレーシア=1、韓国=1、台湾=1――と続きます。

 ちなみにわれらが日本ですが、出展企業はソニーと東芝の2社でした。非接触ICカードやおサイフケータイの導入ではアジアでも最先端を誇る日本の存在感としては、少し淋しい印象が残りました。

地味な展示も商談ムード漂う会場

 会場の混雑状況は、特に展示会場がオープンした初日(17日)の来場者はかなり多かった印象で、興味のあるブースを縫うように会場を歩いていると、普通に他人の肩に当たるような盛況ぶりでした(写真6、7)。しかし、2日目(18日)になると雰囲気は落ち着き、ゆったりと会場内を見て回ることができました。率直に、会場に対して来場者の数がやや少ない印象を持ちました。

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写真6、7 カルテ・アジアの会場風景

 また各社の出展内容については、NFCケータイやデジタルサイネージ連動といったきらびやかな展示・ソリューションが少なく、カードメーカーが銀行カードや保険証、パスポートなどを一面に配置していたり、ずらりと並べられたカード決済端末、カード発行機の実機展示など、比較的地味な展示が多かったようです。これは、派手な演出で来場者の目を引くことだけが目的ではなく、具体的な商談につながるような出会いを、出展者も来場者側も求めていることの表れなのかもしれません。(元々カードビジネスの展示会ですから、地味で当たり前なのですよね)

 カルテ・アジアは早くも来年の開催が決定しています(2011年3月29日~31日、開催地:香港アジアワールド・エキスポセンター)。本当に近いですから、機会がありましたらぜひ、日本と海外の展示会の雰囲気の違いを体感してみてください。


 記事前半でご紹介した本家の『Cartes&IDentification 2010(パリ)』ですが、次回は記念すべき開催25周年を迎えるそうです。例年11月に開催されてきた同展ですが、今年は12月7日(火)~9日(木)の3日間にわたって開催されることが決定いたしました。

 電子決済研究所ではこの開催期間に合わせて、今年も欧州視察団への参加者を募集・実施する予定ですので、ご関心のある読者の皆様はお気軽にお問い合わせください。


※1 「DBS Live Fresh 3-in-1 Visa credit card」・・・シンガポールのDBS銀行(旧シンガポール開発銀行)が発行する接触・非接触両対応のデュアルインターフェースICカード。1枚のカードで、Visa決済(接触EMV/磁気ストライプ)、Visa payWave(非接触)、ez-link(シンガポールの非接触交通カード)の3つに対応可能。


電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

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