日経メッセ > リテールテックJAPAN > 連載コラム > 電子決済・ICカード国際情報局 > 第17回 拡大する日本の電子決済マーケット、2016年の市場規模は?

連載コラム

第17回 拡大する日本の電子決済マーケット、2016年の市場規模は?

[ 2011年9月8日 ]

文・多田羅 政和(電子決済研究所 代表)

 『NFC & Smart WORLD』ウェブサイトをご覧の皆様、こんにちは。電子決済研究所の多田羅です。
 電子決済研究所のミッション(使命)にはいくつかありますが、中でも比重の大きなテーマとして"電子決済サービスのさらなる普及"があります。ではなぜ今、私たちは電子決済の普及を進めなければいけないのでしょうか?
 今回は原点に立ち戻って、そんな素朴な疑問について考えてみたいと思います。


2016年の電子決済市場規模は最大89.3兆円に

 先ごろ、日本の電子決済市場の現状と今後を占う調査結果が明らかになりました。電子決済研究所と山本国際コンサルタンツ、および、SBIリサーチの3者は共同で、2011年から2016年までの国内における電子決済サービス(クレジット・デビット・プリペイド ※注)の市場規模推移予測を発表しました。
 調査の結果、日本国内における2016年の電子決済取扱高の合計は最大で89兆円、個人消費支出に占める比率は31%を超えることが予想されています。そのうち最も取扱高の大きい「クレジット決済」は、2011年現在で50兆円弱の市場規模が、今後も順調に拡大を続けた結果、最大で81兆円の市場へ急成長することが見込まれます。

図1 日本国内における電子決済サービスの普及予測
出典:『電子決済総覧2011~2012』(※2011年は中間値、2016年は最大値)

※注
同調査では「電子決済(ePayments)」という言葉について、「物品の購入、サービスを受けた際に発生する支払いについて、現金を用いずに、電子的なデータで処理すること」と定義。これに該当する決済サービスとしては、①クレジット決済、②デビット決済、③プリペイド決済、の3種類がある。なお、金融機関の預金口座からの自動引き落とし(口座振替)や銀行振込などは、「電子的な支払い」として区別し、原則として電子決済のカテゴリには含んでいない。

新技術の活用や規制緩和が市場拡大の追い風に

 上記の調査結果を決済手段別に見ると、クレジット決済市場が50兆円(2011年)から最大81兆円(2016年)へ、デビット決済市場は8,500億円(2011年)から最大1.6兆円(2016年)へ、Edy、Suica、nanaco、WAONなどの電子マネーを含むプリペイド決済市場は、4.9兆円(2011年)から最大6.6兆円(2016年)へと利用規模が拡大することが予測されています。
 国内の電子決済市場は、日常の支払い分野をはじめとするクレジットカード決済のさらなる普及のほか、2010年4月に施行された資金決済法による新たなビジネス機会の活用、NFCを搭載したスマートフォンの普及・浸透などを追い風として、今後も幅広い場面での利用拡大が進むでしょう。
 なお、調査結果を収録した『電子決済総覧2011~2012』では、日本国内における電子決済手段別の市場規模推移のほか、関連マーケットの最新動向、世界(7地域・31カ国)の電子決済サービス市場規模なども掲載しています。

私たちが電子決済を推進する理由

 さて、電子決済サービスに関する日本の現状と将来展望を見たところで、冒頭に挙げた問いかけに立ち戻りましょう。私たちはなぜ、電子決済の普及を進めなければいけないのでしょうか?
 「そのほうが何となく見た目がカッコイイから」とか、「他社に先駆けて導入することでその企業がITの先端を走っているように見えるから」などといった近視眼的な理由だけでは、もちろんありません。(まれにそういうケースもあるようですが・・・)
 比較的よく語られる電子決済のメリットには下記のようなものがあります。

・お釣り銭間違いなどロスの解消
・レジでの処理時間短縮
・紙幣や貨幣の取り扱いが衛生的でない(特に飲食店)

 これらのメリットは「削減」とか「短縮」とか、どちらかと言うと受け身の効果です。しかし、その一方にある攻めの効果として、電子決済サービス普及の最も大きな動機付けとなっているのは、ズバリ、その経済効果にあると筆者は考えています。

カード決済が普及するとGDPが上がる

 そんな仮説に明快な答えをくれる調査結果があります。
 アメリカの「Moody's Economy.com」という調査機関では、現金・小切手がカード決済(クレジットカードおよびデビットカード)に移行した際の経済効果について、世界51カ国を対象に調査分析を行いました(調査対象年は2003年~2008年の6年間)。
 その結果、カード利用が1%増加すると、GDPが平均で0.024%増加することがわかったそうです。これを世界のGDP総額に換算すると、カード利用1%当たり、実に150億ドルが増加する計算になります。(こうした効果は先進国において顕著に見られるそうです)

図2 カード利用の増加によるGDP成長
出典:Economic Impact of Credit and Debit Cards - Moody's Economy.com(2010年1月)

 実際、全世界の消費者支出(個人消費)に占めるカード決済の利用比率は、2003年の16%から、2008年には約25%まで拡大しました。同調査によると、この6年間でカード決済が全世界の経済にもたらした効果は、累計で1兆1,000億ドルに上るとのこと。この金額を雇用に換算すると、調査対象国全体で累計490万件の雇用増加に相当します。
 メリットは数あれど、このような経済効果こそがカード決済をはじめとする電子決済サービスの本領ではないかと筆者は考えます。世界経済を救う――電子決済の普及にはそんな重大なミッションが課されているわけです。

 冒頭にご紹介した通り、国内外の電子決済市場を理解するのに最適なレポートがちょうどまとまったところですので、より詳細な情報にご関心をお持ちの読者の方はぜひご参考にしてみてください。

<参考資料>
・『電子決済総覧2011~2012』(SBIリサーチ/電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ)
・Visa Worldwide資料(ペイメントカードと経済成長:電子通貨がもたらす経済効果―Moody's Economy.com調査結果より)

電子決済・ICカード国際情報局
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

バックナンバー

PAGE TOP