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連載コラム

今後伸びる電子決済はこれだ! 2015年までの成長を占う

[ 2010年2月17日 ]

非現金の決済総額は48兆9,723億円
民間最終消費支出の16.88%になる?

 カードや携帯電話、インターネットなどの電子媒介を利用して料金を支払う電子決済のすそ野が着実に広がっている。「nanaco」「WAON」「Suica」「Edy」といった電子マネーや「iD」「QUICPay」「VisaTouch(Smartplus)」といったポストペイの非接触ICクレジットの登場などにより、少額決済分野などでも電子決済を用いるケースが増えてきた。またインターネット決済でも従来は代引きが中心だったが、近年はクレジットカード、「WebMoney」や「BitCash」といったネットワーク型電子マネーが勢力を拡大している。今回は、日本カードビジネス研究会が算出した「New Payment Report 2010」の予測数値をもとに、日本の電子決済がどのように変化していくのかを占ってみた。

 New Payment Report 2010では、電子決済を「クレジット」「デビット」「プリペイド」の3つに分類。2007年から2010年までの実績値をもとに、2015年までの電子決済の成長度を予測している(図)。同レポートによると2010年の非現金決済総額は36兆539億円で、民間最終消費支出の12.61%。2015年の非現金の決済総額は48兆9,723億円で、民間最終消費支出の16.88%になると算出した。

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2007年、2010年、2015年の「現金」、「クレジット」、「デビット」、「プリペイド」の割合

クレジットは成長が鈍化
改正割賦販売法の影響も

 2010年のクレジット決済総額は29兆7,166億円で、民間最終消費支出の10.40%。クレジット決済額は2008年をピークに2009年、2010年と前年対比マイナスで、これは2011年まで続くと予測している。クレジットはリアル、ネットでの決済はもちろん、ポストペイ型の非接触IC決済も含んだ数字だ。クレジットカードの取扱金額は健闘しているが、世界的な金融危機による経済不況などの影響で減少していることは否めない。2009年に施行された改正割賦販売法では年収の3分の1の与信枠が目安になるなど、カード会社にとって厳しいものとなっており、今後、消費者は以前に比べクレジットカードを持つことが難しくなると思われる。

 iD、QUICPay、Visa Touch(Smartplus)の非接触IC決済(ポストペイ)は、徐々に浸透はしているが、カード会社が当初描いていた期待値ほどは普及していないのが現状だ。Visa、MasterCardの国際ペイメントブランドが世界的に展開している「Visa payWave」「PayPass」の普及の可能性は残されているが、あくまでもポストペイは少額中心の決済であり、急激な伸びがあったとしても売上に与えるインパクトはそれほど大きくはならないだろう。

 よってクレジット決済は2012年から若干上向きはじめるが、その伸びは小さいと思われる。2015年のクレジット決済額は32兆9,553億円で、民間最終消費支出の11.28%。百貨店・総合スーパーやその他小売店、飲食店、旅館・ホテルではクレジット決済の成長率は低いが、公共料金やオンラインショッピング、ヘルスケア分野の伸びは期待できる。

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2009年第3四半期現在、世界では約6,600万枚のPayPassカードやデバイスが利用されており、
加盟店舗数は17万4,000を超えた。日本でもブレイクするか?

2012年以降、ブランドデビットが急伸
課題は国内インフラの整備

 全体の売り上げに占める割合は微少ながら、デビットカードは成長すると考えている。デビットカードは、商品の購入時に金融機関の預金口座を照会し、即時に引き落とすカードだ。国際ペイメントブランドが提供する「ブランドデビット」、日本デビットカード推進協議会が運営する「J-Debit」のほか、観光客向けに国内でも加盟店を拡大している「中国・銀聯(ぎんれん)」がある。

 2010年のデビット決済額は8,820億円で、民間最終消費支出の0.31%。2015年のデビット決済総額は3兆7,275億円で、民間最終消費支出の1.30%にまで成長する。

 なかでも注目したいのがブランドデビットで、2012年以降急伸し、2015年には3兆円の市場を形成するとみる。ブランドデビットは、国際ペイメントブランドが運用するクレジットの決済プラットフォームがそのまま利用できる。そのため、外見上はクレジットカードとほとんど変わらない。国内では、イーバンク銀行(5月4日から楽天銀行に商号変更予定)、スルガ銀行などがブランドデビットを発行している。
またジャパンネット銀行も2月25日から「ワンタイムデビット」の愛称で「JNBカードレスVisaデビット」の発行を開始する。

 ブランドデビットのメリットとして、カード発行時は原則として審査・与信がなく、クレジットカードを持てない若年層、高齢者なども所有できる。残高の範囲で利用するため、使いすぎるという心配もなく、なかには年間の累計決済金額が億単位の人もいるという。

 課題は認知度向上に加え、国内インフラ面の整備だ。現状、国内の加盟店の一部はバッチで処理されているケースも多く、フルオンラインになっていない。そのため、金融機関のなかにはブランドデビット発行に懸念を示すところも少なくない。

 ただ、普及の兆しもある。前述のように改正割賦販売法の施行はカード会社にとって厳しいものとなっているが、デビットカードにとってはこの法律に該当しないため、認知度アップに伴い、急速な普及が見込まれる。

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SURUGA Visaデビットカード。2010年1月現在、発行枚数は約53万枚。現状の稼働率は月25~26%。
同行の会員の場合、平均単価はクレジットの4分の1程度

 中国人観光客などをターゲットにした銀聯も加盟店の売り上げに多大な貢献をしている。銀聯は中国を中心に20億枚以上のカードが発行され、その多くがデビットカードだ。銀聯の決済を導入している百貨店などでは、平日など比較的来客が少ない日に中国からの団体客が来店すれば、その日の売上の大半を占めるケースもある。三井住友カードによると、国内での2008年度の銀聯決済の売り上げは130億円。インフルエンザなどの影響で訪日外客数は減少したが、2009年度の売り上げは前年を上回っており、2010年以降もさらなる成長が期待できるという。

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銀聯のアクセプタンスマーク。百貨店や家電量販店で目にする機会も多くなっている

プリペイドは11兆円の市場に
電子マネーは端末の共通化に期待

 プリペイドに関しても、まだまだ全体のパイは小さく今後の成長が望める分野だろう。プリペイドは電子マネーなどのように券面に価値(バリュー)を持つカード、サーバ管理型のカード(プラスチックギフトカード、ネットワーク型電子マネー)などを対象としている。2010年のプリペイド決済額は5兆4,553億円で、民間最終消費支出の1.91%。交通系電子マネーの伸びがプリペイド決済を牽引している。ギフトカードなどのサーバ型や国際ブランド付きプリペイドは黎明期である。

 2015年のプリペイド決済総額は12兆2,894億円で、民間最終消費支出の4.30%。電子マネーは順調に伸びて4兆8,574億円、サーバ型も含めると7兆5,494億円になる。事業会社が発行する国際ブランドプリペイドは2012年以降拡大し、2015年には2兆円の市場を形成するとしている。

 電子マネーに関しては、簡単に決済ができる利便性、ポイントやマイルと組み合わせた"お得感"を武器に市場を拡大してきたが、各社のインフラが整った2009年以降はその勢いも若干鈍化している。ある電子マネー事業者も、「このままでは電子マネー市場全体としての展開に行き詰まり感が出てくるのではないか」との見方を示している。

 ただ、クレジットカードなどに比べるとまだ加盟店は少なく、今後も各社から新サービスが登場すれば、まだまだ成長する可能性は残されている。また、ポストペイのクレジットも含め非接触ICは仕様が乱立しており、消費者にとっては利用できる店舗が限られるなど制約が多い。今後は消費者がどんな決済方式でも当たり前に利用できるプラットフォームの確立が普及のカギを握りそうだ。

 サーバ管理型のプラスチックギフトカードに関しても、まだまだ市場としては黎明期で、成長が期待できる分野だ。プラスチックギフトカードはこれまで個社ごとのクローズドな環境で発行されることが多かったが、消費者への認知度向上、さまざまな会社のカードを陳列して販売する「ギフトカードモール」が普及すれば一気に市場が拡大するだろう。国際ブランドのプリペイドカードはブランドデビット同様にインフラの問題が指摘されているが、それが整備され、認知度が向上するにしたがい、受け入れられていくとみている。

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西友LIVINよこすか店では「iTunes Card」と「NEXONポイントカード(POSA版)」が陳列されている。
ギフトカードモールはプラスチックギフトカードの市場を変えるか?

 一方、ネットワーク型電子マネーは、オンラインゲームやオンラインショッピングなどで、若年層を中心に利用されている。オンラインゲーム市場は現在も伸長しており、今後数年はその傾向が続くと予想されることから、利用者もそれに伴い急伸すると思われる。

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ネットワーク型電子マネー「BitCash」はコンテンツの決済手段としてスタートし、最近では物販にも広がってきている。
「BitCash冬の陣」など、加盟店と連携した販促施策も年に数回特集を組むなど積極的に展開

米国は約半数が非現金
キャッシュレス化は経済を活性化

 日本カードビジネス研究会が算出した市場予測は若干堅実に見積もったものだ。ニルソンレポートによると、米国では2008年の非現金の決済総額(クレジット、デビット、プリペイド)は3兆5824億ドルで、個人消費支出の45.68%、2013年には4兆4864億ドルで、個人消費支出の49.77%になると予測している。日本では2015年で16.88%とそれに大きく及ばない。インターネット決済や企業間決済、あるいは政府の購買調達など、キャッシュレス化は経済を活性化する。その意味でも、同予測を上回るキャッシュレス化の波が訪れることに期待したい。


※「New Payment Report 2010」では対象を決済とするため、いずれの支払方法でもショッピング利用に限定。キャッシング利用やATMからの現金引出しは除外した

ポイント&電子決済 最前線
執筆者:池谷 貴

株式会社TIプランニング代表取締役。
コピーライター、編集などの仕事を経て、カード業界誌の版元に入社。ディレクターとして雑誌編集、プランニング、セミナー、展示会などの運営に携わった。雑誌に関しては、電子決済、PCI DSS/カードセキュリティ、ICカード、ICタグなどのガイドブック制作を統括する。2009年11月にマーケティング、カード・電子決済、IT・通信サービスなどのコンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営、ポータルサイト運営などのサービスを手掛ける株式会社TIプランニングを設立した。

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