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連載コラム

第98回 厳寒の福島で見つけた「ふくしま屋台村 こらんしょ横丁」が、熱い!!!

[ 2012年2月8日 ]

「昭和のにおい」漂う異空間が福島駅東口界隈に!

2011年、年末に私は福島にいた。昼間の仕事を済ませたあと、夕飯をどこかで食べようと、福島駅東口界隈をぶらぶらと散策した。散策と言っても、この日の福島はものすごく寒く、ときおり雪もちらついていた。「は、早くどこかに入らないと凍えるっ!」と焦る私の視界に飛び込んできた異空間。それが「こらんしょ横丁」だった。
横丁というだけあって、パセオ470という商店街から横に入ったごく短い行き止まりになった通りなのだが、ここだけやたら「昭和のにおい」が漂っているのだ。いや、近づいてよく見てみると、昭和どころか建物そのものはかなり新しい。決して年代ものではないのだ。それなのに、この横丁には、不思議な懐かしさ、温かさがある。なぜだろう?
ゆっくり店をながめてみた。一番入口に近い店は「ふくしま絆亭」。B級グルメで人気のなみえ焼きそばが食べられる居酒屋だ。「五里夢中」は、勢いのある筆文字の看板が印象的。「ひさ乃」「肴菜亭」「はないづみ」と、奥行きのないカウンターだけの店が続く。どこも10人入るかどうかの小さな店。だけど、それだけに店のスタッフとの距離が近く、いかにもおなじみさんになりやすそうだ。昔の映画などで、「お父ちゃんの行きつけの店」として登場しそうな、そんな店が軒を並べている。福島の地元料理、地酒、地ビールなどもそれぞれの店で扱っていて、「福島愛」が感じられる。

奥にある4店(さくら亭、円都、笑time、燃士)は、少しばかり奥行きがあり、屋台というより「店」な雰囲気もある。なかでも、「円都」と「笑time」は、居酒屋というよりパブ?のようで若者ウケもよさそうだ。この日も外からのぞくと楽しそうに盛り上がっている若い男の子たちのグループがいた。東京でも一時期流行した「おしゃれ屋台」のエッセンスも感じられる店だが、こういうおしゃれな店もいかにも一杯飲み屋風の店でも、実にアットホームな感じだ。あまりにもアットホームなので、私のようなよそ者はちょっと入りにくいかな?と躊躇してしまうくらい。いや、でも、こういうところに飛び込んでいくのが旅の醍醐味だっ!と、勇気をふりしぼって1つの店に入ってみた(外にいるのは寒くてもう限界だった......)。すると、外は極寒なのに、店内はぽかぽかと暖かい。かちんこちんになっていた体の中の血液がやっと流れ始めたような感じがする。店が小さいだけに、暖房も効くのだろう。外から見て感じた温かみは、この「暖かさ」にもゆえんするのだろうな、と実感した。

照明効果? まるで「三丁目の夕日」のセットのよう。

全部で9店という小規模な横丁ではあるが、それだけにこじんまりとしたこの空間が見事に1つの「異空間」として成り立っている。ノスタルジックな雰囲気が人気で続編もできた映画「三丁目の夕日」のセットか?という感じだ。1つひとつの店は小さくて狭いが、店の正面にはベンチが置かれていて、暖かい時期ならここで一杯やることもできるようだ。カフェでいえば「テラス席」のようなこの席でも、きっとさまざまな交流が生まれるのだろう。
この横丁が、街中のほかの部分からきれいに切り取られたような雰囲気を醸し出しているのは、照明のせいではないかと思った。いわゆる赤ちょうちん、そして、店の軒先に下がっている照明器具がことごとく白熱灯なのだ。いや、もしかしたらこのご時世だし、実際にはLED電球なのかもしれないが、少なくともあの白熱球独特のオレンジがかった色の灯りではある。この灯りが、この横丁にノスタルジックな味わいを加えているのだ。そう、カラー写真でもセピア加工すると、とたんに「なつかしい写真」に変身するように。
そして、もう1つ。横丁の入口にまるで鳥居のように設えられている店名の入った赤ちょうちんの列。これが、この横丁のシンボルマークの役割を果たしているように思う。「ここから先は別世界だよ」という演出効果をあげているのだ。
店の造りはどこも簡素で、店内も狭い。だからこそ、「ちょっと一杯」でいいし、「一人でふらっと」でもいいのだ。ここは、地元の人も旅行者も気軽に立ち寄れる場所、を目指しているんだということが、その外観を見るだけでもわかる。

屋台村が、復興ニッポンを支える?

あとで調べてみたところ、「こらんしょ横丁」は平成17年10月から半年間のテスト営業を経て、平成18年7月には現在の場所、形態で営業を開始したのだそうだ。すでに、5年が経っているし、その間にはあの大震災もあったが、元気に営業を続けている。
全国にはこういった屋台村(屋台とは言っても可動式ではなく常設の「屋台風商店街」)がけっこう増えているらしい。全国屋台村連絡協議会なるものもあり、屋台村という事業形態の普及・発展を模索しているのだという。2012年1月にホームページで調べた時点では、この屋台村連絡協議会に加盟している横丁は、北海道や東北に多い。なかには、八戸や気仙沼などいわゆる被災地の名前もある。
確かに、屋台村というスタイルは、通常の店を出すのに比べたら出店コストが低そうだ(気仙沼では復興支援として初期費用なしでスタートできる制度があるらしい)。震災によってゼロからのスタートを余儀なくされた人たちにとっては、じつに魅力的で可能性に満ちた事業形態のように思う。あの大震災のあった2011年でも年末には、福島の「こらんしょ横丁」は、元気に営業していたし、賑わっていたのだから。
おまけに、屋台村は基本的に、「地産地消」を推進するため、地域の伝統料理、郷土料理の提供を目指しているという。地場産業や地域の農業の振興のために、被災地はもちろん、被災地ではなくても全国のいたるところに、元気な屋台村ができたらどんなに楽しいだろう。旅先で朝市などを見に行くように、屋台村を訪ねる、そんな観光客も増えるに違いない。私は、ぽっかぽかな店内でラーメンともつ煮込みを食べて、身も心も暖かくなり、気分よく店を出たとたん、凍えるほど冷たい福島の夜の冷気にガツンとやられた。がしかし、全国各地に屋台村という楽しい想像のおかげで、店から出たあとも心はぽかぽかのままだった。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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