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連載コラム

第100回「古きよきアメリカ」を沖縄・美浜で見つけた! depot's Gardenのノスタルジー演出術

[ 2012年4月4日 ]

 取材で沖縄に行ってきたうちのスタッフ2名が、「沖縄はよかったですよ~!」とあまりに言うものだから、だんだん沖縄に行きたい! という気分が 盛り上がってしまった私。とうとう......プライベートで行ってきてしまった。ほんの短い時間ではあったが、すでに暖かくなっていた沖縄はじつに快適で、ゆっくり休養することができた。

 と言いつつ、街中を歩きながらも「仕事のネタ」を探してしまう私。だって、沖縄ってほんとに不思議な街で、純沖縄風から、和風、そしてアメリカ的なものまで、魅力的なお店がたくさんあるんだもの!

 というわけで、そんな魅力的なお店の中のひとつ、北谷町の美浜アメリカンビレッジの中にある「depot's Garden」に、行ってみた。ここは沖縄取材から帰ってきた2人が、「かわいい店でした~」「スイーツもおいしかったです!」「美浜シュークリームはぜひ買ったほうがいいですよ」と言っていた店なのだ。

テーマパークのようなアメリカンビレッジ その一角にあるダイニングバー

 まず、この美浜のアメリカンビレッジ自体が、かなりいい。大規模ショッピングエリアなのだが、ビレッジ 全体がアメリカンな雰囲気で、共有する コンセプトのもとに集められた店の集合体だから、ある意味、ディズニーランド的な「異空間」になっている。
 修学旅行生などに大人気のスポットだというが、それはそうだろう。沖縄土産によくある「ちんすこう」も、ここで買えば、なんだかアメリカン♪ な感じに思えてくるから不思議だ。

 そんなアメリカンビレッジのもっとも外側、車の走っている道路から見える位置にあるのが「depot's Garden」だ。いわゆるダイニングバー。食事もできる、お茶も飲めるし、お酒もある。

ほんとに古いの? それとも演出? 古びた外観にニューオーリンズ の香りがする

 まず、この店は外観がいい! ぱっと見て、「いつからここにあるの?」と思うような古めかしさ。外壁には無造作にトタンが打ちつけてあるような感じ。美浜は、海にも近いので、「このへんはやはり海風でさびつくのかしら?」なんて思ってしまうような風貌なのだが、これは演出のうち、だ。
 少し後ろに下がって、この店を見ると、店の後には観覧車が見える。このバックに観覧車をしたがえた景色がなんともアメリカっぽいのだ。昔、映画などで 見た南アメリカの街・ニューオーリンズってこんな雰囲気だった。古きよきアメリカ、な空気がこの店の外観にはある。おそらくこのところブームの昭和レトロ、日本でいえばそんな感じなのかもしれない。

「昭和レトロ」みたいなもの?  という私の予想は、店内に入って確信に変わった。たしかに店内とてもいい雰囲気なのだが、根底にあるのは「ノスタルジー」だ。計算されたおしゃれな店であることは間違いないが、その「おしゃれさ」は、すべて「古きよきアメリカ」への愛に貫かれている。

 ウッディな内装だが、テーブルやベンチは明るいブラウン系なので、あまり重さは感じさせずカジュアルだ。店内入ってすぐ左手にはカウンター席があるが、その一角には昔なつかしい黒電話 (それもアメリカのもの?)や、レシピ 本が置いてある。どこかのお家の玄関先にお邪魔したような雰囲気だ。

 その奥には真ん中に通路をはさみ両側にテーブル席が並び、道路に面した側には広々としたガラス窓があり、開放的な空間が広がる。よく見てみると、造りそのものはじつにシンプルで、とりたてて特徴はないのだ。しかし、この店の空気は間違いなくアメリカン! いったい何がそうさせているのか?

徹底してアメリカンノスタルジーを貫く 壁面装飾が、技アリ!

 答えは、壁面にあった。depot's Gardenは、広々とした壁面をじつにうまく利用して、ノスタルジックなアメリカンの雰囲気を演出している。壁にたくさん掛けられているフレームには、いろいろなものが入っているが、どれも 昔のアメリカをイメージさせるものだ。 古い雑誌の表紙であったり、セピア色の写真、ノーマン・ロックウェルのイラスト。「ESPRESSO・BEER・WINE」と書かれた看板。どれもアメリカンノスタルジーにあふれている。
 昭和レトロ風の店に、由美かおるのキンチョールや松山容子のボンカレーの看板がよく飾ってあるが、あれに通ずるものがある。

 さらに、奥に進むと、やや個室風に仕切られた客席があり、そこは観音開きの窓風に作られたフレームの中に子ども向けのメニューが掲示されていたり、黒板型のPOPに手書き風の文字でおすすめメニューが紹介されていたりする。麻ひもに木製クリップでポストカードをはさんで飾ってあるあたり、この空間は、どこかの家庭の子ども部屋にまぎれこんだようでもある。それも、とびきりあったかい家庭の子ども部屋だ。

 古きよきアメリカの家庭。
 この店には、そんな空気が漂っている。外観から内装までぶれることなく、その空気が貫かれ、だからこそ感じられるぬくもりがあるのだ。

外観の素材感+掲示物で、店のコンセプトが表現される

 しかし、アメリカ風にせよ日本風にせよ、レトロ感の演出には掲示物がおおいに効果あり、ということが感じられる。それから、外観の材質。depot's Gardenは、さびついたトタン風の壁でうまく古さを演出していたが、日本のレトロ風お好み焼き屋「ぼちぼち」なども、あえて古びたモルタルを外壁に使ったりしている。
もとは最近の建物でも、表面加工でかなりノスタルジックな仕上げになるものだ、と感心しつつ店を出た。
 中にいるとここがどこだかわからなくなりそうなくらいの完璧な演出。アメリカンな雰囲気にひたりきってしまったおかげで、スタッフにすすめられていた「美浜シュークリーム」を買い忘れてしまった! ......これもdepot's Gardenのノスタルジー効果か。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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