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連載コラム

第102回 通りそのものがテーマパーク! 白壁の蔵が並ぶ風景がなつかし、美し! 「松本市中町通り」

[ 2012年6月5日 ]

 今年は、桜を見にけっこうあちこちに出かけた。東京の桜が終わってからは、桜を追いかけ、なんと長野県松本市まで足をのばしたりもした。松本城でのんびり桜見物をしたあと、普段は車生活でゆっくり散歩なんてする機会がないから、と松本駅まで歩いてみることにした。多くの観光客は歩く距離だと聞いて歩き始めたのだが、日ごろの運動不足がたたって、かなり疲れてしまった。「そろそろ駅につかないかなあ......」とへばっていた私だが、本町通りの交差点で信号待ちしているとき、なにげなく左手を見ると、そこに広がっている風景に度肝を抜かれた。
「え? これなに? 映画のセット?」 本気でそう思った瞬間だった。
 その通りの両側に立ち並ぶ建物は、ほとんどが白壁の土蔵。そのまま時代劇のセットとして使えそうな街並みなのだ。「なに、なに、ここは......!?」と、疲れも忘れて通りに入っていく私。(駅から遠ざかるのに~)あとで知ったのだが、ここは松本市が誇るタイムスリップスポット 「中町通り」だったのだ。

 呉服屋、漆器屋、民芸品店、漬物屋など、店舗が土蔵であることが「いかにも」な店もいくらかあるが、内装は、ぴかぴかにおしゃれで最先端なショップなのに、外観は古めかしい土蔵、という店も少なくない。通りの中ほどには、「中町・蔵シック館」という大きな施設もあり、ここはほんとにそのまま時代劇の撮影ができそうだ。もとは宮村町にあった造り酒屋の母屋・土蔵・離れの3棟を移築したものだそうだが、この中町通りにぴったりマッチしている。広場でコンサートが開かれたり、母屋を使って骨董市が開かれたり、土蔵は喫茶店になっていたりと、いわゆる「町おこし」の拠点といった役目を果たしているようだ。
 なにより、本町通り側から入っていくとすぐに、この「蔵シック館」が見えてくるので、通り全体のコンセプトがよく伝わってくる。私は、「あ~、駅から離れていく、歩く距離が増える......。」 などと考えるのはやめて、しっかりこの中町通りを満喫しようと決意したのだった。
 どの店も間口は狭めだが、1軒1軒とても個性的でおしゃれ。だから、見て回っていても飽きない。靴屋さんあり、貸しギャラリーあり、古美術店、家具とクラフトの店あり、木のおもちゃ店あり。うーん、挙げればきりがないのだが、バラエティーに富んでいながらも、やはりこの町の雰囲気によく合ったラインナップになっている。

飲食店がいっぱい! 外国人旅行者に人気の古風な旅館も!

 なかでも、目立つのが飲食店。本町通り側から順に、スナック、ラーメン、カレー、料亭、そば処、居酒屋、郷土料理、レストランバー、地中海料理、ビストロ、と、かなり充実している。こういう街は、やはり徒歩で探索したくなるものだから、一休みして飲食できる店がやはり必要ということだろう。それにしても、ジャンルはさまざまなのに、どの店も外観は白壁の土蔵で、どの店もしっくりそれが馴染んでいるのがおもしろい。
 わがままを言うなら、気軽に入れるカフェがあればいいのに、と思うが、この通りに出店するなら、スタバでもミスタードーナツでも、白壁になるんだろうな。でも、白壁のスタバなんてなかなかおしゃれ! な気もする。見てみたいものだ。

 もう1軒とても気になったのが「布屋旅館」。建物も昔ながらだが、小ぢんまりしていて、いかにも昔風なおもてなしが受けられそうな旅館なのだ。調べてみたら、宿泊料金も格安(素泊まりのみ)! 松本を堪能する旅には、ここを拠点にするとよさそうだ。近くには、同じように土蔵造りの「まるも旅館」もあり、ここも格安料金でレトロな気分を味わうことができる。なんでも、どちらも現在は日本人より外国からの旅行者の宿泊のほうが多いのだそう。たしかに、こういう日本の古い建物の古風な旅館って、外国の人から見れば、「異国情緒あふれる」ものなんだろう。日本人もヨーロッパに旅行したら、石造りの洋館を使ったホテルに泊まってみたいな、と思うだろうし。

「通り自体が財産」という意識が、街を活性化する

 松本市では、明治21年に大火事があり、かなり多くの家屋が焼失したのだそうだ。しかし、火事をかいくぐって焼け残ったのが蔵で、その耐火性が注目されて、のちに多くの蔵が建てられたのだとか。とはいっても、それを平成24年の現在まで受け継いできたというのがすごい!
 この20年は不況が長引いていて、バブル期のように「古い家はつぶしてビルやマンションに!」という時代ではないが、長野県でも有数の都市である松本の中心部なのだから、バブル期にはかなり地価も上がっていただろう。それならば、さっさと土地ごと売って儲けようという人だっていそうなものだ。でも、そんな人はきっといなかったんだろうな、とこの通りを見ていると思う。すこしばかりお金が儲かることより、ここの景観を守るほうを松本の人たちは選んだんだろうな、と感じるのだ。

 いろいろな店がありながら、外から見れば、見事に調和がとれていて、統一感がある。それは、ここに店を連ねる人たちが、みんなこの町を、この通りを愛しているからなんだろう。
 この通りからは、「故郷を誇りに思う」気持ちが伝わってくる。だから、ひと目見たときに感じた「映画のセットみたい」という印象はすぐになくなる。ここに流れている空気はまぎれもなく「ホンモノ」であり、昔風、レトロ風といった安っぽさがないのだ。
 歩くのは苦手な私でも、あまりに楽しくて、どこまでも歩いて行きたくなる。松本中通りは、そんな魅力をもった通りだった。


今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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