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連載コラム

第103回 長良川沿いの情緒あふれる街並みにたたずむ由緒正しき隠れ家風カフェで静寂を楽しむ「川原町屋」

[ 2012年6月28日 ]

 岐阜に行く用ができたので、「せっかくならどこか素敵なカフェとかないかな」と、出かける前にネットで検索してみた。それでヒットしたのが「川原町屋」だ。
とにかく写真を見ただけで、「ここに行ってみたい!」と思わせる力をもった店だった。

長良川の風が心地よい。風情満点のロケーションのカフェ

 川原町屋は、その名のとおり、長良川沿いにある。店から少し離れたところに車を停めてもらい、歩いて店に向かったが、この街並みがまた風情たっぷりなのだ。春に行った松本の中通りは、白い土壁が続いていたが、ここは木造建築。それも、まだちょんまげを結った人が闊歩していただろう時代の雰囲気を残す建築物が道の両側に並んでいるのだ。2階建て以上の高い建物はなく、空がとても広く感じる。この日は、ちょうど天気もよかったので、空の青さが胸にしみる感じ がした。背の低い街並みって、それだけで豊かな気持ちになれるから不思議だ。
  道の両側をきょろきょろしながら、歩いていくと、「川原町屋」についた。今では珍しくなった地面に生えている円筒型の郵便ポストの脇の引き戸を開けて、中に入ると、左手には意趣を凝らした水うちわが展示してある。カフェというよりはギャラリーのような雰囲気だ。のれんをくぐって奥に進むと、紙製品を中心に雑貨が並んでいる。え? カフェじゃなかったの? と思うが、この店、間口は広くないのだが、奥に広くなっている。いわゆる「うなぎの寝床」型だ。

 さらに奥に進むとやっとカフェらしい空間が見えてきた、右手にカウンターがあり、きれいに磨かれたグラスがホルダーに下げられて、きらきらしている。が、このカウンターは客席ではないようだ。カウンターの中で働いている店員さんから「いらっしゃいませ」とにこやかに声をかけられ、さらに奥に進むように促される。まだ、奥があるんだ...。

 突然、光の降り注ぐ中庭に出た。そこには、赤い大きな番傘が設えてあり、心地よい日陰を作ってくれている。しかし、ここがテラス席になっているわけではない。いったい、客席はどこに? とさらに奥に進むと、「これは明らかに蔵だよね」という建物が現れた。開かれてはいるが、いかにも重そうな観音開きの扉の奥に、ひっそりと客席があった。

元・蔵らしい暗さが隠れ家的な落ち着きを与える客席スペース

 このスペースのもつ雰囲気は、ちょっと表現しにくいものがある。ただ、落ち着けることは間違いない。
  元は蔵だけあって、窓がほとんどない。一番奥の高いところに明かり取りの窓がひとつあるが、その少ない窓が、より中の暗さを際立たせている。心なしか、空気もすこしひやりとしているような気がする。岐阜の夏は猛烈な暑さだと聞いているが、ここは夏でも涼しいのではないか、そう感じさせる空気がある。
 「ほどよい暗さ」はなぜか人の気持ちを落ち着かせる効果があるように思う。この店で、わいわいきゃあきゃあ騒ぐということは、イメージしにくいのだ。
  メニューを見ればおいしそうなスイーツも目につくが、とりあえずコーヒーや紅茶をオーダーした。すると、「モーニングはおつけしますか?」とさらっと聞かれたのだった。なんと! さすが「モーニング王国・東海」! こんなおしゃれなカフェでも、しっかりモーニングサービスをやっている。
  名古屋など東海地区の喫茶店は、モーニングタイムはドリンク料金だけで「トースト&ゆで卵」などのモーニングセットがついてくることが多いのだが、ここでもいただけるとは! しかも、川原町屋のモーニングは、おいしいクロワッサンにフルーツ、卵のサラダという、とてもおいしい組み合わせだった。
 おいしくいただいた後は、腹ごなしとばかりに、私は、店内を探検してまわることにした。

 まずは、客席スペースの2階に上がってみた。2階は、ぐっと天井が低く、斜めになっている。ゆったりと座れるソファなどもあり、いちだんと隠れ家風だ。ここのソファに座ったら最後、もう仕事には戻れないんじゃないか、と思うほど居心地がよい。

長良川の見えるテラス席も涼味満点!

 さらに店内を歩くと、川のほうに降りて行く階段を発見した。川沿いのに降りきる寸前の左手に、気持ちのよさそうなテラス席があった。この席からは長良川を 眺めることができて、この店のロケーションの良さを満喫できそうだ。もっとも地元民に言わせると、「岐阜は暑いから、夏はとてもテラス席にはいらない」とのことだが。季節を選べば、目では涼しさが楽しめそうなテラス席だった。

 個人の住宅と考えれば、かなり贅沢な造りのような気がするが、いったい、ここはもともと何だった建物なのだろう? と店員さんに聞いてみると、「紙問屋でした」という答えが返ってきた。
 しかし、この店は、かなりのインパクトを私に与えた。歴史を感じさせる建物も味わいがあって素敵だし、モーニングもおいしかった。長良川沿いという立地もすばらしい。
 だが、それだけではない。カフェ、喫茶店に本来求められていた「落ち着ける空間」の理想像がここにあったから。それが最大の驚きであり感動だった。
  「ずっといたい」という気分になるという店には、なかなか巡り合えるものではない。それが、ここにはたしかにあったのだ。おそらく、この奥へ奥へと入っていく造り、そして、蔵独特の暗さ、木造建築、そういったものすべてが、この空間の不思議ななつかしさと少しばかりの妖しさを作りだしているのだと思う。 これは新しい建物では出せない味だ。
「川原町屋」があるのが、めったに行けない岐阜だということが残念な反面、近くにあったらしょっちゅう、行ってしまいそうだから危ないな、とちょっとほっとするような。そのくらい、居心地のいい「クセになりそうな店」だった。  

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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