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連載コラム

第104回 郊外の駅前にある「大人の隠れ家」的ダイニングバー Cafe Wayは、ごちゃごちゃ感が趣味人ぽくていい!

[ 2012年7月30日 ]

 キャリア・マム事務局からは車で10分ほど。多摩から都心に出るときに便利な多摩急行(小田急線)の始発でもある唐木田駅は、郊外型のこぢんまりした駅だ。駅前商店街もほとんどなく、電鉄系スーパーとホームセンターがぽつんとあるだけ。駅に近いいくつかのマンションの1階にはテナントが入っていたりするが、そんなに多くはないし、案外入れ替わりも激しい。 個人で商売をするのはけっこう難しい立地のようだ。そんな唐木田駅徒歩1分の場所に、先日7周年を迎えたダイニングバーがあると聞いた。でも、唐木田あたりはなじみのあるスタッフの多いわがキャリア・マムでも、誰もその店の存在を知らなかった。迷うほど店はないのに、だ。

外観のアピールはまったくなし! 隠れ家のような立地に驚き

 身近なはずなのに誰も知らない、ということで俄然興味がわいて、ある日のランチタイムに、私は、その店を探してみることにした。地図を調べてみたところ、該当しそうなビルは2つしかない。蕎麦屋はあるようだが、バーやカフェらしきものはないんだけど......。と思ったところに、その蕎麦屋のあるビルの脇にかなり遠慮がちに「ランチ」の看板が出ているのを見つけた! 「これじゃない?」同行していたスタッフと思わずはしゃいでしまった。その店、「Cafe Way」は、唐木田駅から一番近いビル(1階は蕎麦屋)の2階にあった。しかも、ビルの外から見てわかるような看板も出ていないし、窓ガラスに店名をペイントしたりもしていない。これでは、通りかかっただけでは存在にも気づいてもらえないだろう。それなのに、7年間もここで店をやっていられるというのはすごいことだな、と感心してしまった。いわゆる2階建てビルの、そっ気ない外階段を上がっていくと、そこにCafe Wayはあった。が、入口のドアも、何の変哲もない。中が不動産屋だとしてもべつに違和感はない。ビルにある普通のドアだった。

ウッディーでちょっとレトロな内装に、さらに驚き!

 ところが、その「ただのビル」のドアを開けたとたん、そこには別世界が広がっていた。いや、「広がっていた」という言葉は似つかわしくない。なぜなら店自体、決して広くはないからだ。たしかに別世界なのだが、その世界は「広がっているのではなく、この狭い空間に「凝縮されているという表現のほうがふさわしいように思う。

Cafe Wayは、白っぽい無機質な印象のビル外観からはとても想像できないウッディーな内装だ。壁も床もフローリング。それも、かなりダークなブラウンの木材を使っている。窓も少ないし、封じられているのでランチタイムなのに店内は暗く感じる。ランチタイムの人気メニューは三種類のソースがある「ポークソテー」らしいが、「ポークソテーとコーヒー」よりも「バーボンを水割りで」のほうが似合う感じだ。店の入口から右奥を眺めると、これまたウッディーで存在感のあるバーカウンターが鎮座していて、中には「マスター」という呼び方があまりにも似合うマスターがいる。仕事帰りに、ちょっと立ち寄って、マスターに話し相手をしてもらいながら、1杯飲む。そんな使い方をしたくなる雰囲気をもっている、なんだか隠れ家のような店なのだ。
 

「お兄さんの趣味の部屋」みたいな不思議&なつかしい雰囲気

 今風のおしゃれな店、では決してない。むしろひと昔前の造り、のようでもある。レトロ感もあるのだが、最近多い「レトロ」を売りにした内装、というわけでもない。子どものころ、自分よりひと回り年上のいとこのお兄さんの部屋に遊びに行ったときのことを思い出す。お兄さんの部屋には、エレキギターや外国の歌手のレコードや映画のポスターがあり、なんだかとても大人っぽく見えた。すごくおしゃれな部屋ではなく、むしろごちゃごちゃしていたが、その猥雑な感じも含めて、「子どもにとっての大人」に見えた。子どもにはわからない色々なことが、大人になるとおもしろくなるみたい。そんな風に感じていた。

 この店には、そういう空気がある。実際、壁面にアコースティックギターやエレキギターが飾られ、古いレコードジャケットもフレームに入れて壁の高いところに飾られている。外国製らしきお酒や映画のポスターも貼ってある。それらのものは、センスよく配置されているというよりも、好きなものをどんどん置いていったらこうなった、という趣きでそこにあるのだ。室内のいたるところからブルースが聞こえてきそうな、そんな雰囲気とでも言おうか。
 天井から下がっている照明器具もちょっとアンティークな雰囲気だし、壁には水牛の角やモデルガンも飾られている。「音楽好き」な人がやっている店なのだろうということは、カウンターの中で大きなスペースを占めているオーディオ機器からもわかる。
 しかし、それだけではないごちゃごちゃした感じが、この店に「隠れ家」的な空気をかもし出している。

どことなく漂うごちゃごちゃ感は、常連客から店への愛情の象徴

 マスターに少し話を聞いてみると、思った通り、この店には音楽好きな人がよく集まってくるのだそうだ。週末になると、ライブなども開くのだという。店内は演奏スペースをとるとお客さんの座れる場所はほとんどない状態だが、それでもみんなでぎゅうぎゅう詰めになりながら、お酒を片手に演奏を聴いて楽しむのだという。
 壁面にかかっているギターも、マスターが収集したわけではなく、演奏しに来る人が置いて行ったりしているのだそう。その他の不思議な装飾品の多くも、常連のお客さんが、「店に合いそうだから」と持ってきてくれたものが多いらしい。

 少々、ごちゃごちゃした印象になっても、お客さんのそういうあったかい心遣いを受け入れる度量が、この店とマスターにはある。だから、決していい立地とは言えないこの場所で、7年間もやってこられたのだろう。

ベッドタウンならではの、スイッチオフポイント

 お客さんは地元の人が多く、仕事帰りに寄る人がほとんどなので、夜の営業時間がどうしても遅くなりがち、とマスターは嘆いてみせるが、そうやって「仕事からプライベート」への切り替えポイントとして、この店が使われていることを実は歓迎しているということがありありとわかる。中には、電車でわざわざこの店に来る人もいるのだとか。たしかにそうなるのもうなずける、個性とあたたかみのある店。それがCafe Wayだ。なんだか、子どものころに親に内緒で作っては、お気に入りのおもちゃを持ち込んでいた秘密基地を思い出してしまう。そんな「大人の隠れ家」のような店が、わが地元にあったとは! ベッドタウン・多摩ニュータウンの懐の深さを思い知らされた気がする。
 
 多摩ニュータウンも、かなり街年齢が上がってきている。それだけに、こういう「大人にとって居心地のいい店も、確実に求められているのだ。Cafe Wayでは貸し切りも受けているというので、次にうちの会社でなにかイベントをやるときに使ってみようかと思う。うちのスタッフの平均年齢も上がってきているので、「大人の隠れ家」はかなりフィットするのではないか。もちろん、のんべえではない私にとっても、マイホームバーになってしまいそうな、そんな予感のする店だった。


今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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