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連載コラム

第108回 ランナー達のベースキャンプ・「musubi cafe」は、秘密基地感が魅力!

[ 2012年12月3日 ]

 私が、仕事で京都に行くことが決まるやいなや、スタッフのKちゃんが、「京都行くなら絶対に取材してきてほしい店があるんです!」と猛アピールしてきた。

 その店は、嵐山にあるカフェ「musubi cafe」だと言う。ちょうど紅葉のはしりの時期ではあるし、嵐山という立地には惹かれるものがあったので、行くこと自体やぶさかではなかったが、Kちゃんがそこまで推す理由がわからなかった。果たしてそこには何があるのか? 聞くと、Kちゃんは目をキラキラさせながら言った。

 「市民ランナーの方がやっているカフェみたいで、お客さんにもランナーの方が多くて、京都のランナーの聖地らしいんです。私も一度、行ってみたいと思ってて。」

 ああ、そうだった。Kちゃんは、今年2月に沖縄マラソンの取材に行って以来、ランニング熱が高まり、すでにいくつかの大会にまで出場してしまったというわがキャリア・マム屈指の体育会系女子なのだ。彼女にとって、あこがれの場所らしい「musubi cafe」は、いったいどんな店なんだろう? 私もおおいに興味をそそられ、京都につくと一目散に嵐山へと向かった。

地産地消を目指した健康メニューが、美味!!

 阪急嵐山駅で下車して、中ノ島公園に向かってやや坂を上っていくと、3分くらいで左手にその店は見えてきた。白いタイル貼りの外壁に、茶色のテントが目印の「musubi cafe」だ。


 大きな窓面があり、明るい店内に入ってみると、まだランチには少し早い時間だったため、空いていた。パッと見、とくに変わったところはない、清潔感のある明るいカフェに見える。だが、メニューにはかなりこだわりが感じられた。
 「楽穀菜食」「地産地消」をテーマにしているだけあって、地元野菜をメイン材料にしたいかにも健康的なメニューが並んでいるのだ。この日、私が注文したのは「身土不二ランチ」。地元産のかぶを葉っぱまで使い、これも地元産の京地鶏とのゆずこしょうソテーがメインディッシュのやさしい味のランチだった。
 うーん、これはおいしい! 思わずほかのランチやスイーツも試したくなるが、悲しいかな小食な私。「身土不二ランチ」だけで十分お腹いっぱいになってしまい、あとはメニューの写真で楽しむしかなかった。

 ここまでで、Kちゃんご推奨の「musubi cafe」の食べ物がおいしいことはすぐに確認できたのだが、さて、本来の目的である「ランナーの聖地」としてのこの店の姿はどこに? と、すっかりお腹が満ち足りたところで、私は店内を散策しはじめた。

ランナー同士のコミュニケーションの場になる壁面メッセージ

 まず目についたのは、壁面の多くを覆っている黒板だ。そこにはおすすめのメニューなどが味わいのある手書き文字で書いてあるのだが、そのほかに、これから出場する予定のマラソン大会の予定や、ランナー向けの講習会、イベントの案内、一緒に練習する仲間の募集などのメッセージがたくさん書きこまれている。
 なるほど。これはKちゃんには魅力だな、とそのメッセージをひとつひとつ追っていく。運動には縁遠い私には、この店ひとつにこんなにたくさんのランナー仲間との出会いが転がっているということがまず、驚きだった。

 世の中には、こんなにも走っている人がいて、走る仲間を求めていて、仲間に対して多くの支援をしようという人がいるんだ、ということにちょっと胸が熱くなった。
 私が壁面の写真を撮っていると、入口近くの席にいた男性が、「どこの大会に出る予定なんですか?」と話しかけてきてくれた。その方も、まさにランニング途中で立ち寄りました、というファッションだった。いや、私が走るわけじゃないんです、と言うと、彼はちょっと残念そうな顔をしたので、「友だちが走ってるんです。だから、この店も彼女の代わりに下見に来ました」と言うと、彼はにわかに嬉しそうな顔になり、「ぜひ下の階も見て行ってください」と勧めてくれた。

ランナーなら間違いなくテンションが上がる わくわく感満載の地下室

 やや急な階段を下りていくと、地下にも部屋があり、そこでも飲食できるようになっているのだが、このスペースがなんともいい! 地下ということもあり、ちょっと秘密めいているし、私には今ひとつ価値がわからなくて申し訳ないのだが、ランナーだったら(Kちゃんも!)きっと興奮するんだろうなあ、と思うものがあちこちにディスプレイされている。

 過去に出場した大会での記念写真や、大会Tシャツも数多く天井から下がっているし、一番目を引いたのは、ガラステーブルに埋め込まれたメダルの数々。貸し切りなどもやっているそうなので、この地下の部屋で大会後の打ち上げなんかやったらさぞかし盛り上がるんだろうなあ、と感じた。大会じゃなくても、練習会や講習会などのイベントは頻繁に行われているようだから、「走る」という共通の趣味をもった仲間と集まる機会は多いだろう。そんなとき、こういう場があれば、そこいらの居酒屋で集まるよりもずっと盛り上げるに違いない。
 これはランナーにはたまらない店だなあ、と思いながら、階段を上がっていくと、店内には小さい子ども連れのママたちがあふれていた。2階にも部屋があるらしく、そこを貸し切っている親子連れのグループだった。大人がしっとり楽しむような店に連れて行くのは躊躇するくらい元気のいいちびっこたちだったが、2階は貸し切っているそうなので、のびのびとはしゃぎ回ることができる。子連れのランチ会にはうってつけの店でもある。おまけに出される食べ物は健康によいものなのだから、ママたちも大満足にちがいない。

 「musubi cafe」の中核は、やはり「ランナーたちのコミュニケーションサロン」というポジションだろう。しかし、どうもそれだけではなさそうだ。京都でも有数の名勝地である嵐山というロケーションで、仲間作り、そして食による健康を提案し続けるというミッションをもった店なのだと思う。だから、ランナーではなくても、この店を自分のベースキャンプのように感じて集まってくる人がいるのだろう。この日訪れていた子連れママたちもそうだし、ここの食事なら、きっと健康食ファンにも支持されているだろうから、健康が気になりはじめる中高年にとっても心強い店にちがいない。

 ただのカフェ(=飲食店)ではなく、仲間作りのできる場所。「musubi」という店名のとおり、人と人とを「結ぶ」場所が、ここなのだ。そのコンセプトを体感できる秘密基地のような雰囲気の地下の部屋に、うちのKちゃんをぜひ連れてきたいと思った。しかし、ここに連れてきたらKちゃん、京都移住とか言い出さないだろうか、それだけがちょっと不安である。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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