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連載コラム

第111回 「夢はきっとかなう!」ママたちに癒しと元気をくれる住宅街のケーキ屋さん「カシツクール」

[ 2013年3月4日 ]

 八高線小宮駅は、八王子市のかなり奥まったところにある小さな駅だ。そこから徒歩3分くらい。ゆるやかな坂を上っていくと「菓子工房Cashitsukuru(カシツクール)」がある。駅前ロータリーから続く通りから、住宅街に入る路地の入口の角っこにある、こぎれいな戸建て住宅に見える建物の1階が、店舗だ。

 カシツクールは、多摩のみやげもので競う「T-1グランプリ」に「HACHIねーぜチーズケーキ」を出店していて、敢闘賞を受賞した菓子工房で、この店の素朴でほっとするようなやさしい味わいの焼き菓子やケーキは、今ではすっかり私のお気に入りなのだ。

 しかし、じつは私、大ファンでありながら、買ってきてもらったり、いただきもので手に入れることが多く、小宮にある店舗に足を運んだことがなかった。今回たまたま近くを通る機会があり、いざ立ち寄ってみることにした。

 一見、普通の住宅かと見まがうような外観も、廃材を組み合わせてオーナー自らお店の名前を描き入れたという木製の看板も、私の中ではこの店のお菓子たちのイメージとぴったり重なった。このアットホームな雰囲気は、カシツクールのお菓子に漂っているものと同質だ。

店内に同居する手作り小物達が、あったかい雰囲気をアップ!

 店の中に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、ケーキではなく、かわいらしい手作り小物たちだ。店の右手の壁面には白いこじゃれた棚があり、そのスペースには主に布製の小物がディスプレイされている。キーホルダーカバーや傘のグリップカバー、トートバッグなどなど。どれも、かわいいもの好きな女子(年はとっていたとしても)にはたまらない! そして、これらの小物は、買うこともできるのだが、見た感じ、販売よりも展示に重きが置かれているように感じた。

 もちろん、売れるに越したことはないのだろうが、作り手にとっては、こうして自分の作品を並べて見てもらえるということの価値のほうが大きいのだろう。さらに、この小物たちは、店のイメージ構築にもおおいに貢献している。「カシツクール」店内の温かみのある雰囲気は、この小物スペースに拠る面も大きいのではないか。

 聞けば、この小物たちは、八王子の創業塾などでオーナーが知り合った、女性事業者さんたちの作品らしい。地元のつながり、独立開業した女性同士の縁......、そんな仲間の笑顔も垣間みえるようだ。

 ひとしきり小物を見たあとに、店の左側の焼き菓子の陳列棚を眺めてみると、この日は、夕方に行ったため、商品の種類がやや少なくなっていた。しかし、そのせいだけではなく、お菓子以外のものの存在感が案外大きいことに気がつく。

お菓子だけじゃない! ママたちを応援する情報も届けたい!

 かわいらしいホーローのキャニスターや編み細工の籠などを上手に利用して、さまざまなリーフレットやチラシ、ショップカードなどが陳列棚のあちこちに置かれている。ママ達のパフォーマンス集団、リラクゼーションルーム、ネイチャークラブ、子連れマッサージ、フラワーショップ、ハンドメイドショップなど多岐にわたっているが、子育て中のお母さん達を応援し、癒しになりそうなもの、という点が共通している。

 決して広い店内ではないのだが、小さな丸いテーブルが点々と置かれていて、この店で買ったケーキとお茶を楽しめるようになっている。たくさんのお友だちとわいわいランチやお茶をするには少し狭いが、ここはむしろママが一人になれたわずかな時間、ホッとできる時間を過ごしたい場所だな、と感じた。つまり、「カシツクール」自体が、「子育て中のお母さん達の癒し」になりそうな店であり、同じ志向をもった店や団体を、紹介するという形で応援しているということだ。

 おそらくあの小物販売のスペースも発端はそんな感じだったのかもしれない。小物作りの上手なお母さん達にとっての、励みになる場所を作る。そんな思いから始まったのではないかな。そう思わせる雰囲気がこの店にはある。
 そう大きくない冷蔵ショーケースは、生もののケーキを大量には作っていないことを物語っている。きっと一番おいしくお客さんに食べてもらえる分だけをていねいに大切に作っているのだろう。だから、この店のケーキが私は大好きなのだ。
 「カシツクール」のお菓子もまた、好きが高じて商品になった、仕事になった。そんなものなのだろう。そして、この店で紹介されているショップや団体にも同じにおいがする。

「好きなことを仕事にしている」その充足感が、伝わってくる

 「好きなことを仕事にできる」......それはとても素敵なことだ。
この店のお菓子からも、店内の雰囲気からも「幸せ感」が漂ってくるのは、きっとこの店のオーナーが、好きなことをしているからなんだと思う。そして、同じような仲間を応援していることもわかる。

 今は子育てで手いっぱいのママたちも、ここに来ればホッとできると同時に、いつかは自分も! という元気が出てくるんじゃないだろうか。好きなことを追究して、磨いて仕事にした人って案外多いんだ。ママになってもあきらめなくてもいいんだ。そんな気分になれるんじゃないか。

 この店舗は、いわゆる廃業したパン屋さんの「居抜き物件」だったらしい。それもあって、開業するまでには100万円程度の改装費用で済んでいる。菓子型やボウル、整理ラックなども100円商品利用という、超リーズナブルな身の丈起業だ。
 でも、そんな普通のおうちのような小さな店だからこそ、見せられる夢がある。「カシツクール」の店舗に行ってみてそんなことを感じた。そして、だからこの店のお菓子に、私は惹かれるんだな、ということもわかった。

 かわいらしい店だけど、そこにはオーナーだけでなく、たくさんの人の夢がつまっている。「カシツクール」は、そんな店だ。この日、私もおおいに元気をもらい、買って帰ったチーズケーキをおいしくいただいたのだった。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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