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連載コラム

第112回 高台の古い住宅が、「景観がごちそう」のおしゃれレストランに変身!  和洋折衷な驚きのビフォーアフター『Kura-倉Cafe』

[ 2013年4月1日 ]

 以前、仕事で熊本に行ったときに、少し足を延ばして人吉市に行った。人吉市は、町中に日本三大急流のひとつである球磨川の清流が流れ、人吉城址もある小さいながらも美しい町で、「九州の小京都」とも言われている。
その人吉市に、県内外に多くのファン客がいる素敵なレストランがあると聞いて、行ってみたくなったのだ。

「あずまや」で食事もできる美しい庭園とすばらしい景観にうっとり!

 『Kura-倉Cafe』という名のとおり、敷地内に古い蔵を改装して作ったギャラリーも併設しているそのレストランは、外観からとてもおしゃれだった。いや、なんと言っても立地がすばらしい。
人吉市の町はずれの、かなり高台にあり、駐車場に車を停めて店に向かうと、建物よりも先にその広大な庭園が目に入る。この庭園は、どちらかと言うと「洋風庭園」で、子どものころに夢中になって読んでいた外国を舞台にした小説に出てきた家の庭はこんな感じだったのかもしれない、と想像がふくらむ。
とくに、庭園の一角にある「あずまや」は、これぞまさしく「あずまや」! という雰囲気で、そこにも客席が設えてある。春や秋の天気のいい日中なら、ここで食事やお茶をするのがさぞかし気持ちがいいだろう、と思う。

 おまけに、そのあずまやの席からは、人吉市を見おろすことができるのだ。とうとうと流れる球磨川の周りに広がる小さな町は、高台から見ると、ミニチュアのようにかわいらしく美しい。人吉は盆地なので、周囲を山に囲まれており、私が行った春も十分壮観だったが、夏にはもっと緑が濃くなるのだそうだ。見おろす方向を少し変えれば、人吉市郊外ののどかな田園風景も広がっている。この景色だけでも十分、この店に来る価値がある。

全面ガラス張りの壁面で、「水槽の中にいる」気分のメインダイニング

 レストランに入ってみると、その建物もまたかなりこだわりが感じられるものだった。入口の扉を開けてすぐのエントランスは、グランドピアノが置かれ、壁面はごつごつした石造り、床もレンガ色のストーン張り。やや薄暗い雰囲気になっていて、その薄暗さが「蔵」らしさと高級感を演出している。
ほの暗いエントランスの隣には、一転してサンルームのように明るい部屋があり、ここにも客席がある。スペースいっぱいに光が降り注ぐとても気持ちのいい空間だが、それもそのはず、布がドレープしたようになっている天井が、惜しみなく日光を通しているのだ。おまけに建物に対して突き出したような形になっているため、2面が前面ガラス張りで、壁面からも光が入ってくる。まさにサンルームの明るさと暖かさだ。エントランスがやや暗いだけに、その明るさがより際立っているように思う。

 さらに奥に進むと、メインダイニングというべき部屋が現れるが、この空間も3面が全面ガラスになっていて、客である自分が、水槽の中にいる熱帯魚になったような気分になる。ガラスをはさんですぐ隣にはテラス席があり、テラス席から自分たちの席が丸見えのようにも感じるが、室内からテラス席も丸見えなのだから、おあいこか。

季節ごとに趣が変わるパノラマビューが最高のごちそう

 いや、この席に座ってテラス席の人が食事をする姿を眺める人はまずいない。ガラス張りゆえに、客席に座っていても視界がさまたげられることがなく、自然豊かな人吉市のパノラマビューを楽しむことができるのだから。

地元の食材を駆使したお料理ももちろんおいしかったが、なんと言ってもこの景色こそが「最高のごちそう」であり、また、ここでしか味わえないものだ。県内外からもファンが訪れるという意味がよくわかった。おそらく、春に来た人は夏の景色を見たいと思い、夏に来た人は、「紅葉の時期はどんなだろう」と思うに違いない。四季折々の景色を見てみたくてリピーターになる、そんな人が多いのではないのだろうか。

人吉は美しいけれど、小さな町だ。この店からの景観もすばらしいが、おそらく地元の人にとっては「いつもの風景」なのかもしれない。元はと言えば、個人の住宅が建っていたのだから、なにか特別な場所、というわけではない。

「古いもの」の良さに気づかせてくれるのも、地方都市の魅力

『Kura-倉Cafe』は、「町のはずれの高台にある広い庭付きの古い民家」が、「パノラマビューを売りにした、洋風庭園の中に建つおしゃれなレストラン」に変身した結果、「いつもの風景」にも値千金の価値が生まれた、という好例だ。
地方都市には、こういう店がかなり増えているようだ。ひと昔前には、みんなが「新しいモノ」を好きだった。しかし、今は違う。あえて「団地然とした集合住宅」をリノベーションした集合住宅を好んで選ぶ若者も増えている時代なのだ。
地方都市は、この『Kura-倉Cafe』のように、ひと手間かけるだけで、今、求められている新たな価値を生み出せる前時代の遺産がたくさん残っている「宝の山」だ。このコラムでは、これからもそんな「地元」に根差したすばらしい店を紹介していきたいと思っている。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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