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連載コラム

第113回 「安心・安全」と「おしゃれ・おいしい」が見事に共存した奇跡のレストラン『木を植えるレストラン オーロラ』

[ 2013年4月26日 ]

 福生市の横田基地と国道16号をはさんだ真正面に、そのレストランはある。
この店のことを何も知らない人、入ったことがない人でも、「16号沿いにある森のような外観のレストラン」と言えば、「あそこね~」とわかってくれる。『木を植えるレストラン  オーロラ』は、その店名も変わっているが、店の外観もかなり個性的だ。

うっそうとした外壁に驚き、手作り感あふれる内装に和む

 建物がすっぽり緑に包まれていて、遠くから見ると、どこが入口かもわからない。そんなうっそうとした外観から、「いったい中はどんな風になっているんだろう?」なんて、入るのを躊躇する人もいそうだが、中に入ってみると、建物を覆うこの緑は決して無精をしてそうなったわけではなく、「緑を育てた」結果なのだとわかる。

 店全体がひとつの異空間のようであり、ほどよい狭さが子どものころに夢中になった秘密基地のような雰囲気を醸し出している。よく見てみると、壁面、そして柱などにほとんど直線が使われていない。壁は手作り感あふれる、塗ったまんま風の凹凸。柱に使われている木材も、四角く削り揃えたものではなく、天然の木の形、風合いが生かされているのだ。
ふと思い出したのが、子どものころに読んだ「3びきの子ぶた」の絵本だ。あの子ぶたの兄弟が建てた家も、こういう手作り感があった。だから、オオカミに吹き飛ばされてしまったとき、とても悲しかったっけ。

 このレストランは、もちろん、オオカミに吹き飛ばされはしないだろうが、そんな絵本を思い出させるくらい、手作りのあたたかみが感じられる内装なのだ。テーブルとテーブルの間の仕切りはそれほどなく、一見すると個室感はあまりないのだが、どの席に座っても落ち着ける。個室ではなくても、壁面のへこみが隣のテーブルとのよい距離感を作ってくれているのだ。さらに、テーブルごとに違った飾り付けが壁面に施されていて、なんだか席ごとの色を感じさせてくれる。

 この、温かくも洗練された雰囲気は、東京都下でありながら、外国人のお客様もかなり多いであろう福生という土地柄に負うところもあると思う。日本の、それも多摩地区ではあるが、どこか外国のような、そんな空気がとても心地よい。

放射能測定器が、店のコンセプトを無言で主張

 しかし、この店がすごいのは、外観や内装だけではない。レストランの入口とは別に入口があり、そこではテイクアウトのお弁当やスイーツが買えるのだが、そこに設置されているものものしい機械は、放射能測定器(ATOMTEX- AT1320A)なのだ。
おしゃれなレストランと放射能測定器、というのはミスマッチな気もするが、つまり、この店は、単なる「雰囲気のいいレストラン」ではなく、すべての食材をこの測定器にかけ、少しでも放射能が検出されればその食材は使わないというほど徹底した「ベクレルフリー
を実践している、日本でも稀有なレストランなのだ。

東日本大震災に伴う原発事故以来、放射能汚染に対する関心は高まっている。自分で食材を買うとき、産地に敏感な人も多いだろう。しかし、ひとたび外食となると、その店がどんな食材を使っているかまでは、なかなか把握しきれず、「えいやっ!」と目をつぶって食べるしかない。ところが、この店では、すべての食材が放射能検査済なのだ。安心なことこのうえない。


押しつけがましくない「妥協しない姿勢」が好印象

 その徹底ぶりから、オーナーがいかに人間を大切にし、食を大切にしているか、が伝わってくる。それでいて、決して説教臭かったり、押しつけがましかったりもしない。ベクレルフリーをうたっているのに「みなさん、もっと放射能による汚染に関心をもって!」と訴えかけているわけではないのだ。
ただ、自分達は、放射能問題で妥協せずにレストランを営み、お客様に安全でおいしい物を提供し、喜んでもらう......それを貫いているだけ、といった潔さが感じられる。でも十分に、ベクレルフリーのよさは伝わってくるし、自分たちの意識も変えていかねば、と いう気持ちになる。それは、この店の雰囲気がよく、さらに出される食べ物が間違いなくおいしいからに他ならない。

 妥協せず、よい食材を選び、それを使って、ていねいに料理する。食材が本来もっている味わいを生かして料理をする。そうすれば、こんなにもおいしい食事になるのだ。

今の日本では大切なことだが、あまり声高に主張すれと偏屈な印象にもなってしまう 「放射能」という問題を、きわめてさらりと、「心配なのは嫌だから自分で測ってみる」というところに行きついた、という感じなのがいい。
だから、この店は、頑ななまでにベクレルフリーを貫きつつも、ごく普通の上質なレストランとしての「おしゃれ感」も損なわず、また、「安全でおいしい料理」を提供するという本分をまっとうできている。外観もコンセプトもたしかに「(他とは違うという意味で)変わって」はいるが、「変」で はない。

「地球と人にやさしい店」だからこそ支持される

   店に設置されている放射能測定器で、持ち込みの検体を測定してもらうこともできる(有料)。 また、「木を植えるレストラン」の名前のとおり、売上の一部を植樹活動に寄付しているという。 押しつけがましさはまったくない、いい意味で「ごく普通のレストラン」でありながら、地球や 人を守る活動は地道に続ける。その姿勢にとても共感できる。こういう活動の仕方が、おそらくもっとも長く続くし、根付いていく。そして、多くの人に広がっていくのだと思う。  福生店に続いて、下北沢にも支店がオープンしたそうだ。それも、こういう店が待望されていたことの証明だろう。  とにかく、一度、この店に入ってみて、この雰囲気を味わい、またおいしい料理を味わってみてほしい。そうすれば、次からは、国道16号を車で北上するたびに、どうしても立ち寄りたくなってしまうに違いないから。
今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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