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連載コラム

第115回 多摩ニューマダムに大人気のカフェ『バーゼル』に見る、くつろぎ空間のつくり方

[ 2013年7月9日 ]

「ファミレスじゃなく、お茶できるカフェ」を多摩ニュータウンで探せ!

 私たちの住む街であり、キャリア・マムの本拠地でもある多摩ニュータウンは、緑も多く、道路も住宅街も整理されている。都心からはやや遠い感は否めないが、住むにはとてもよいところだ。
 とくに子育て中のファミリーにはやさしく、ベビーカーを押して出かけやすい。今や子育てが終わりかけているアラフィフママたちと話をすると、「子育て中、この街に住んでいたのは本当によかったわね」という話になる。
 
 つい先日も、ある座談会で多摩ニュータウンについて話をする機会があり、ひとしきり盛り上がったのだが、そのときに、「多摩ニュータウンに足りないもの」という話になった。そして、そこで足りないものとして、あがったのが、「おしゃれなカフェ」だった。
 いわく「ドリンクバーのあるファミレスじゃなくて」「スタバやドトールやミスドじゃなくて」。
 
 おしゃれな内装、おいしいケーキやランチ、そしてお茶がいただけて、お友達とのランチやティータイムにつかえる、ちょっとおしゃれな店。できれば、車も停められて......。「アフタヌーンティーとか、そういう雰囲気の店がほしいんだけど、多摩ニュータウンにはないよね」。そう、子育て環境のよさで多摩ニュータウンを賞賛したときと一転、愚痴となった。
 
 すると、あるスタッフが、「え、ありますよ。」と、こともなげに言うではないか。「南大沢駅からちょっと歩くんですけど、『バーゼル』ってお店です。毎日、多摩のマダムたちで大繁盛してますよ。」
 
 なんてことだ!!! 不覚にも、私は行ったことがなかった。これは、行くしかない! 多摩のマダムが集うおしゃれカフェを知らないなんて、私としたことが!

ペット連れもOKの明るいテラス席が人気

 というわけで、さっそく翌日、『バーゼル』に行ってみた。多摩センターから野猿街道を橋本方面へとひた走り、南大沢駅に行く交差点で左折するとすぐ右手にその店はあった。
 店の前にはしっかり駐車場もある。ただし、あまり広くないので、ランチタイムともなれば、車が入りきれないこともあるのだそうだ。
 
 店の外観は、ごくシンプルな平屋。太陽の光を浴びてまぶしいくらいの白っぽい壁が清潔感を演出している。扉を開けて店内に入ると、正面にケーキ用のショーケースがある。左手にもショーケースがあるが、こちらは焼き菓子やゼリーなど贈答品中心のラインナップだ。どのケーキもおいしそうで思わず惹かれてしまうが、ここはまだほんの入口。
 
 店内右手に目を向けると、ショップスペースから一段高くなったフロア面にカフェスペースが広がっている。ウッディで大きなダイニングテーブルがどかんと2つ置かれているほか、店の外に向けてソファを並べた席もある。大勢で行ったときにはダイニングテーブルもいいが、1人か2人だったら、このソファ席も落ち着けるだろう。

 そして、この店の特徴であり、人気の秘密でもあるのが、太陽の光がさんさんと降り注ぐ、屋根つきのテラス席だ。ここはもともとこの建物にあったのではなく、建て増しして作られたスペースで、それだけに独立感がある。屋根も壁もしっかりあるが、とにかく光を遮らない造りになっているので、なんだか外にいるような気分になれる空間だ。
 天気のいい日は、やはりこのテラス席が人気だというが、それにはもうひとつ理由がある。この店は、テラス席に限り、ペット連れの入店可なのだ。
 
 私が行った日も、かわいらしいわんちゃんとお散歩の途中で立ち寄ったという風情のおばあちゃんや、2人ともわんちゃん連れというマム世代のマダムもいた。
 この店は駅前ではなく、駅からは少し離れた住宅街にあるため、朝夕は犬の散歩をさせている人が多い。そういう人たちにとっては、わんちゃんと一緒に一息つけるこの店は、貴重なオアシスなのだろう。

 もちろん、飲食店にペットを連れ込むことをよしとしない人もいるだろうが、そういう人はテラス席を選ばなければよいのだ。店内のごく一部であるテラス席を、ペット連れのお客様のために開放している。共存の仕方を模索している最中なのだろう。

スイーツだけではなく、雑貨類も充実。そのおしゃれ感がマダムをその気にさせる。

 「多摩のマダムたちに大人気」の理由は、一度店に行ってすぐにわかった。おいしそうなケーキ達はもちろんのこと、店内には、マダムたち(元女の子たち)なら絶対好きだろうな、というものが散りばめられているのだ。
 『バーゼル』は、もともと多摩地区にあった老舗の洋菓子屋だったが、この南大沢の店は、パン、ケーキ、焼き菓子などに加えて雑貨類がじつに充実している。飲食店らしくキッチン雑貨も多いが、アクセサリーなどもあり、このディスプレイを見ているだけでも楽しい。その1つひとつの商品が見事に、「多摩ニューマダム」の心を揺さぶるのだ。

 しかも、店がまるで「誰かのおうち」という雰囲気に演出されているから、この空間にいると、なんとなく「家に帰ったら、少し片づけ、ちょっとおしゃれな部屋作りをしちゃおうかな?」という気分になる。
 とくに秀逸なのが、ダイニングスペースの一番奥に設えられたカウンターキッチンだ。本格的な調理場は、さらに奥に部屋があるのだが、ドリンク類を用意したりするキッチンスペースは、客席と同じフロアの片隅にある。そして、このキッチンが見事にオープンで、ちょっとのぞきこめば中までよく見える。チラ見せされたその収納ぶりが、マダムたちがいかにもあこがれそうな、「見せる収納」になっている。
 気分よくおいしいランチをして、こんなすてきな、それでいてあたたかみのあるお部屋造りを見せつけられたら、自分のおうちもステキにしたいー! と、うずうずすることまちがいない。かたづけ下手を自認する私だって、すっかりその気になってしまったのだから。

 先日の座談会で話題になった、「ファミレスでもスタバでもなく」というのは、つまりこういうことなのだ。誰かのおうちにおじゃましているみたいなアットホームな雰囲気でありながら、自分たちにも手が届きそうな、真似できたら気分がよさそうなおしゃれな空間。そんなカフェで、私たちはくつろぎたいのだ。この先、今までほど、仕事や子育てに追われることがなくなってきたときには、なおさら。
 それも、子育てをして、ママ友と語らってきた「自分たちの街である多摩ニュータウンに、そんな店がほしかったのだ。『バーゼル』は、そんな希望をかなえてくれる店。だからこそ、駅から離れた立地ながらも、繁盛店としての地位を確立している。

 そろそろ高齢化も進んでくる多摩ニュータウンには、こういう店がもっとあっていいと思う。もちろん、それは多摩ニュータウンだけでなく、似たような特性をもつ他のベッドタウンにも言えることだろう。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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