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連載コラム

第116回 思わず「ただいま!」と言いたくなる、「わが家」感のある造りの放課後学習室

[ 2013年8月2日 ]

 2013年7月、二子玉川にオープンした「まいらぼキッズ」は、一言で言うなら「放課後学習室(学童機能つき)」だ。放課後の小学生を預かり、希望に応じて習い事を習わせたり、宿題や勉強もさせてくれる。もちろん、おやつも出るし、食事もつけることができる。小学校や駅への送迎も引き受けるという。

 小学生の子どもをもつ働くお母さんにとっては至れりつくせりといった印象だが、いわゆる学童保育所とはどう違うのだろうか? 主宰の真崎今日子さんに聞いてみたところ、従来型の学童保育所との大きな違いは、「子どもを預かる」ことが中心ではなく、「教育との両立」を目指しているところなのだという。
 従来の学童保育所では、「宿題やりなさい」と声かけする程度しか、勉強の面倒はみない場合が多かったのに対し、「まいらぼキッズ」では、チューターを常駐させている。自分で計画したとおりに勉強が進んでいるかをチェックしながら、宿題や勉強でわからないことがあれば、すぐに聞くことができる体制をとり、放課後、親が家にいない子どもたちが安心して安全にすごせる場所を提供すると同時に、そこで「勉強もできる」ようにするのだ。

 それは、働いている親にとっては、非常に心強い話ではあるが、ちょっぴり不安にもなった。うちの子どもも中学受験のころの夏休みなどは、かなり長い時間塾にお世話になっていたが、子どもにとって、家庭以外の場所で長い時間すごす、それも勉強つきで、というのはかなりストレスになるようだった。塾という空間では、なかなかリラックスできる時間もとれないので、疲れてしまうのだ。
 それが、夏休みなどの長期休暇だけでなく、毎日、というのはどうなんだろう? そんな疑問をもったので、実際に「まいらぼキッズ」を訪ねてみることにした。

外観も、室内の雰囲気も「お家に帰ってきた」感じ

 二子玉川駅から歩いて5分、二子玉川小学校のすぐ近くという好立地に、「まいらぼキッズ」はあった。一見すると普通のマンションなのだが、その4階の角部屋が「まいらぼキッズ」になっている。
 エレベーターを降りると、いきなり子どもの元気な声が聞こえた。「ただいま~! せんせい、今日は、帰りがいつもより早かったよ!」
 すでに通所中の小学2年生の女の子だった。扉の前に立った感じもごく普通のマンションなので、お友だちの家に遊びにきたような気分になるが、ここがれっきとした「放課後学習室」なのだ。
 
 玄関も、ファミリータイプのマンションによくあるタイプ。すこし違うのは、大きな靴箱があることくらいか。玄関のすぐ脇には、一般家庭ではよく子ども部屋にあてるやや狭めの部屋があり、そこには少しゆったりめに長机が並んでいた。そして、玄関正面には横長のリビングルームがあり、角部屋だけあって、気持ちのよい光がさんさんと降り注いでいる。

 しかし、第一印象は、「ほんとにここが放課後学習室?」というものだった。あまりにも、普通のおうち、の感じなのだ。

勉強に集中できそうな洋間と、くつろげる和室。メリハリをつけた2間の使い方。

 リビング左手には、振り分けで2つの部屋があり、洋間のほうには、かなりぎっしりと長机が並べられていた。この部屋に入ると、にわかに「学習室」というぴりっとした空気が漂っている。それでいて、わりあい狭めの間隔で並べられた机からは、お友だち同士でときには少しおしゃべりしながら、仲良く楽しく勉強する子どもたちの姿がイメージできる。
 
 自宅の自分の部屋だとそうはいかない。勉強は孤独な作業になり、その孤独に負ければテレビやゲームのわなにはまってしまう。その点、ここなら、自分がくじけそうになっても、同じ部屋で頑張っている仲間の姿が見えることで、踏ん張れそうだ。

 一方で、隣接する和室のほうは、リビング以上に家庭的な雰囲気だ。和室なだけに、そこで寝そべることもできるし、置いてあるソファは、子どもだったら(いや、大人でも)ごろごろしたくなるに違いない。この日、元気いっぱいに学校から帰ってきた女の子は、さっそくこの和室で、先生といっしょに工作を始めた。「これはカーテンなの」「こっちはスカート」と、彼女の創作意欲はじつに旺盛だ。そして、先生もそんな彼女の相手を楽しんでやっているように見えた。

リビングルームは、食事をしたり、おしゃべりしたり、ときには勉強も。

 細長いリビングルームの端には、キッチンがあるが、リビングからはキッチンが見えないように間仕切りの棚が設えられている。カラフルな布ボックスを使ったポップな雰囲気を出しているが、棚そのものはごくプレーンな実用的なものだ。
 しかし、この棚には背板がなく、両方向からものが出し入れでき、またキッチンに立っていても、振り返れば棚のすき間から、リビング、さらにはドアを開けていれば、洋間、和室の様子まで見えるようになっているのだ。これも、ある意味、じつに家庭的な心遣いが感じられるレイアウトだ。
 
 「リビングは、おやつや食事、それから勉強だってしてもいい。いろいろな使い方をすると思うので、キッチンの目隠しをすると同時に、子どもたちに目が届くように工夫してあります。」と、真崎さん。

 「まいらぼキッズ」では、小学生は1年生から6年生までを受け入れる。低学年の子どもだと、家庭と同じで、どうしても人目のあるところで、人に相手をしてもらいながら勉強もしたいものだ。そういう子たちのために、この広々としたリビングはある。机こそは、実用的でシンプルなものだが、ぶつけて怪我をしないように角にはかわいらしい保護シールが貼ってあり、そんなところにも、実際に2人の子どもを育てた経験のあるお母さんらしい真崎さんの心遣いが感じられる。

子育て期の自分がほしかったもの、を実現して、次の世代のママたちをサポートする

 すでに成人した2人の子どもを育てた真崎さんは、子育て期間のほとんどをワーキングマザーとしてすごした。働き続けることを望んだものの、子どもの教育が自分の仕事の犠牲になるのは困ると感じることはあったそうだ。忙しく仕事をして家に帰ってから、子どもの宿題の面倒まで見なければならないという生活が親と子どもたちを疲弊させることも実感していただけに、「放課後から午後8時まで、子どもを預かって勉強もさせてくれる場所」の必要性を感じていた。
 
 そして、子どもにとっても、勉強を優先すれば、長時間塾に通わされるということになり、かなり疲れることだということがわかっていた。しかし、現実的には、子どもの預け先として塾を選んでしまう親も少なくないのだ。
 
 子どもたちにとっては、塾よりももっと家庭的で、くつろげる場所が必要だ。そう考えていた真崎さんが作り上げたのが、この「まいらぼキッズ」なのだ。決して広々としたスペースではないが、これくらいがちょうどいい、という。規模を大きくすれば、受け入れる子どもの数も増やさなければならない。それより、さほど人数を集めなくても成り立つような規模にしておいて、入所希望者が増えたら、学習室の数を増やしていくことを目指したいのだそうだ。だからこそ、このファミリータイプのマンションを、あえて家庭的な雰囲気を残したままにしているのだな、と感じた。

 「まいらぼキッズ」には姉妹校がある。渋谷にある「さくらぼキッズ」だ。こちらには30畳の広々リビングがあり、最高のコミュニケーション空間となっている。のびのびと過ごす子どもたちの笑顔は、居心地のよさをあらわす何よりのシンボル。真崎さんの信条は、姉妹校にも伝わっているのだなと感じさせられる。

「子育て完了世代」にとっての生きがいも創生

 勉強の面倒を見るチューターとしては、大学生だけでなく、自分の子どもはもう手が離れたという「子育て完了世代」の主婦に、おおいに期待していると言う。
 そういうお母さん先生たちにとっても、まいらぼキッズのような家庭的な造りならば、自分の家と同じような感覚で、子どもたちに接することができるに違いない。
 
 「これから子育てをする世代は、本当に忙しい。だったら、もう子育ては終わったという世代のママたちで、下の世代の育児をシェアして、サポートしてあげられたら、と。そうすれば、子育て完了世代にも生きがいができると思うんです。」
 
 自身も子育て時期を働きながら駆け抜けてきた真崎さんが、子育てがひと段落した今だからこそ、次の世代のことを考えて、考えて動き始めた「まいらぼキッズ」には、子どもたちとママたちに対するやさしさがつまっているように感じた。
 この「わが家そのもの」の造りがその思いを象徴しているのだ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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