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連載コラム

第122回 子どもの居心地よい空間を作ったら、みんなが集まるようになった! 秘密基地のようなコミュニケーションスペース「しもたカフェ」

[ 2014年2月3日 ]

 京王線と世田谷線の交差点、下高井戸駅から徒歩1分という好立地にある音楽スタジオ「大背戸亜紀子のミュージカルジャーニー」があるコミュニケーションスペース「しもたカフェ」は、ちょっと不思議な空間になっている。「しもたカフェ」はIT企業である株式会社フォルテッシモの社長の新野さんが、理想の空間をイメージして作った、とのことだが......、

 まず、1階を見ただけでは、そこに音楽スタジオがあるということはわかりにくい。ビルの階段を3階までのぼって、やっとたどりつけるのだが、初めて来た人は「ほんとにここなのかな?」と不安になってしまいそうだ。そして、入口の扉を開くと、いきなり目の前に、ボルダリングできそうな突起物のある壁面がお出迎え。さきほどとはまた違う意味で、「え? ほんとにここが音楽スタジオ?」と思ってしまいそうだが、そう、ここはれっきとした音楽スタジオなのだ。

 その証拠に、入口から入って右手には、グランドピアノ2台をしつらえたレッスン室がある。通常はここで 新野さんの奥さんでもある大背戸亜紀子さんのピアノのレッスンが行われている。が、しかし、左側に広がるこの待合室にしてはやけに広々とした空間は何なんだろう。

 

 以前はこのスペースを使ってグループレッスンを行ったりもしていたそうだ。現在はレッスンに通ってくる子どもたち、あるいは送迎をする親御さんたちのサロン的な場所になっているという。
 もとはといえば、このスタジオを主宰する新野さんが事務所として借りていた部屋だったが、子どもが大好きな、でも本業はITエンジニアの新野さんが、レッスンに通ってくる子どもたちが居心地よく過ごせる場所にしたいと、自分のデスクをどんどん奥に引っこめてしまい、内装にも手を加え、現在の形にしてしまったのだそうだ。子どもの声が聞こえる空間は、職場としても理想だと新野さんは言う。

 外から見ると、素っ気ない雑居ビルの一室なのだが、たしかにこの空間には、子ども好き、そして音楽が好きな新野さんの想いがあふれている。

 

天井の低い押し入れ風空間が、子ども心をときめかせる

 窓の下の壁をくりぬいたようになっていて(ちょうど、押し入れの下段だけのような 感じ)、かなり天井は低いものの、子どもなら入れるスペースがある。これは、子どもだったら絶対に 入ってみたくなる秘密基地のような場所だ。しかも、その壁際には絵本や児童書の並ぶ書棚がある。本好きな子どもなら、ここにもぐりこんでずっと本を読んでいたくなるに違いない。
 狭い空間には、人を落ち着かせる効能がある。子どもなら、なおさらだ。こういう、あえて狭さを感じられる場所が、子どもにとってはたまらない魅力なのだ。それに、このスペースが子どもを惹きつけるのは 狭さだけではない。照明と壁の色をブルーで統一してあるため、ここにもぐりこんでいるとなんだか海の底にいるような、そんな不思議な気分になれるのだ。
 ピアノのレッスン前のちょっとした待ち時間、またはレッスンのあとに、このスペースに寝そべってみれば、感性を研ぎ澄ますことができそうだ。

 音楽スタジオではあるが、元気な子どもたちが大好きな新野さん、決して静かに時間を過ごすことだけを推奨はしていない。入口正面の突起のある壁面は、本当にボルダリングができる。ちょっと元気のいい子なら、必ずのぼりたがるのだそうだ。
 案外、指の力が必要なボルタリングは、ピアノの鍵盤を押さえる力を、遊びながらつけてくれるかもしれない。また、サッカーゲームをしたり、プロジェクタで壁面にDVDを流したりもできる。もちろん、部屋の真ん中に鎮座する丸いテーブルで、宿題や勉強をしたっていいのだ。

子どもにも、親にも魅力的な交流の場を提供して、もっと気軽に音楽に親しめるようにしたい

 ここは、子どもにとってはパラダイス、または、ちょっとした隠れ家だ。こんな場所があれば、レッスンの時間よりもずっと早く行きたくなってしまうではないか。実際、この場所に来るのが楽しくなれば、レッスンを休むことも少なくなり、レッスンそのものも楽しくなる。
 おまけに、送迎の親御さん同士も、ここで交流が深まり、子どもをレッスンに連れてくるのが楽しくなる。そんな付加価値は、知らず知らずに子どもたちの豊かな感性の育成につながる。

 

 新野さんは、「日本は欧米に比べて、クラッシック音楽を気楽に楽しむ土壌が少ない」と残念がる。だから、この「しもたカフェ」を基地にして、もっと子どもたちが、 そして親たちが、一緒になって音楽に親しめる環境を作っていきたい、それが新野さんの夢だ。
この部屋のあちこちに飾られている演奏家の人形や、子ども用の楽器、クラシカルなレコードプレーヤーなどが、そんな新野さんの想いを象徴している。

 そんな夢が実現する日のために、まずは、ここを子ども達の居心地のいい場所にしたい。さらに、いずれは地域のママたちや芸術家が働けるコワーキングスペースにもしていきたいと考えている。子どもも大人も一緒に過ごせて、音楽に触れられる場所、「しもたカフェ」を通じて、地域社会に貢献できる企業になれることを、株式会社フォルテッシモは目指している。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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