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連載コラム

第124回 男子新体操を愛しすぎたオーナーが人生を懸けてオープンしてしまったBar 「KANGEKI NO YOKAN」の本気度がすごい!

[ 2014年3月31日 ]

 「好きなことを仕事にしたい」......そう夢見る人は多い。
 しかし、それを実現するには、困難が伴うものだ。ことその「好きなこと(好きなモノ)」がレアなものだった場合、仕事に結びつけることは、なおさら難しい。

 が、今年の3月、その夢を実現したオーナーがいると聞いて、彼の店を訪ねてみた。
 連れて行ってくれたのは、うちのライタースタッフ。彼女は、近年知名度が上がってはきているが、野球やサッカーのようなメジャースポーツとは比べようがないマイナースポーツ「男子新体操」に、数年前からはまっている。その彼女をもってして、「私をはるかに超えたはまりっぷり!」と言わしめる人物がオープンした、その名も「Men's RG Bar KANGEKI NO YOKAN(かんげきのよかん)」が、その店だ。

看板に、壁面に、箸袋に、男子新体操がいっぱい!

 都営大江戸線・東京メトロ副都心線「東新宿」駅から徒歩5分。新宿の喧騒からはやや離れた場所にその店はあった。が、道路から見えるのは看板だけ、なので少しわかりにくい。

 エレベーターにのり、ビルの2階で降りると、店名の看板がお出迎え。外の看板も、この看板も、よく見ると男子新体操選手のシルエットだの、競技に使う道具だのがちりばめられている。私にはとうていわからない世界だが、コアなファンだとこのシルエットだけで、「●●選手!」とわかるのだそうだ。

 

 扉を押して店内に入ると、そこには、案外落ち着いた雰囲気の空間が広がっていた。

 最大でも20人くらいのキャパの店内は、ほどよい広さで居酒屋ほどざわざわした感じもなく、Barらしい空気が流れている。
 しかし。
 流れているのは、それだけではない。
 壁面の2つの大きなプロジェクターでは、私には初見となる「男子新体操」の映像が、延々と流れているのだ。さらに、店内を見渡してみると、この店が「男子新体操」というマイナースポーツに憑かれてしまったオーナーさんの情熱の結晶だということが、そこかしこから伝わってくる。

 ファンにとってはお宝だという選手たちの演技写真が、壁面にふんだんに飾られている。そして、テーブルに目をやれば、看板に続きまたしても、選手のシルエットの入った箸袋(この箸袋は全部で4種類あって、ファンはシルエット当てクイズをするんだそう)。オープン記念品のタンブラーにも、このシルエットがほどこされているが、これは男子新体操ファンの中では「プレミアもの」と言われているのだそうだ。
 ほかにも、来店した選手や指導者などが記名する「芳名帳」もあり、好きな人が見れば、「きゃー!」と興奮するような名前が記されている。そして、その数は日々増えているそうだ。

 

脱サラして、このBarを立ち上げたオーナーの男子新体操愛

 注文したカクテルを作ってくれた若い男性スタッフさんは、なんと男子新体操経験者。来ているポロシャツにも新体操シルエット。
 ここまでされると、「男子新体操ってどんな?」と興味もわいてくる。この店のオーナーである鬼窪氏は、もともと一般企業勤めのサラリーマン。それが、いわゆる脱サラをして、未経験の飲食業を始めてしまったのだ。それもこれも、「男子新体操ファンや関係者が集まれる場所がほしかった」そして、「より多くの人に、このスポーツを知ってほしかった」からだと言うのだから。
 そこまで夢中にさせる魅力が、「男子新体操」にはあるのだろうか。

 店には2時間ばかり滞在し、大画面に映し出される「男子新体操」の演技を堪能してきた。たしかに、ド素人の私が見ても、彼らの演技がすごいことはわかったし、かっこいい! とも思った。しかし、残念ながら、職業柄、より私が関心をかきたてられたのは、男子新体操よりもこの店の存在そのもののほうだった。
 男子新体操の競技人口は、2000人足らずだとか。となると、そのファンと言っても、数は限られる。当然、それだけを相手にしては商売が成り立たないだろう。

 

男子新体操ファン以外も取り込むことで売り上げ向上と、男子新体操の拡散を目指す

 オーナーの鬼窪氏は、「もちろん、ここでは他のスポーツ中継もやります。普通にスポーツバーとしても使ってもらえればと思っています。今年は、サッカーのワールドカップもありますし、その時期は、サッカーファンにもぜひ集まってほしいです。」と話す。たしかに、この100インチプロジェクター、男子新体操だけに独占させておくのは惜しい。
 スポーツに限らず、たとえば結婚式の二次会やクラス会など、映像を流せば盛り上がりそうなイベントには使えそう、と思って聞いてみたら、もちろんそれも大歓迎! とのことだった。
 「映像を見ながら飲食したいという要望があれば、貸切なども可能な限り対応します」という鬼窪氏。どんな理由でも、店に一度、足を踏み入れてもらえれば、店全体に散りばめられた「男子新体操推し」の仕掛けにかかる人も少なからずいるだろうから、と鬼窪氏は企んでいるのだ。

 好きなことを仕事にするのは難しい。
 しかし、その困難をクリアする方法もしっかり考えられたうえで、じわじわと染み込ませるように「男子新体操」を広めていく。これは、アリなんじゃないかと思う。
 私のように、まだ見たことない! という人が大多数であろう「男子新体操」には、こういう支援がまだまだ必要なのだろうから、このスポーツの発展のためにも、この店が繁盛して長続きしてほしい、成功してほしいと思った。
 それは、こういう「好きなことを仕事にしたい」という夢をもつ人たちにとっても福音になるはずだからだ。「こんなの需要あるの?」というようなものでも、やり方によっては商売になる、その成功モデルになってもらいたい、と思わせる店だった。
http://www.danshi-shintaisou-kangekinoyokan.jp/

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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