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連載コラム

第125回 タイムトラベルができる秘密の場所「マーチエキュート神田万世橋」

[ 2014年5月15日 ]

 エキュートといえば、言わずと知れた、JR東日本のエキナカにある商業施設。乗り換え時の時間つぶしや待ち合わせに、私もよくお世話になっている。といっても、近くのエキュート立川が多かったりするけれど。
そのエキュートに、ニューフェイスが誕生したのが去年の9月。場所は神田、万世橋だ。かねてから気になっていた「マーチエキュート神田万世橋」に、打ち合わせの帰りに立ち寄ってみた。

 工事中の地下鉄神田駅を出ると、ほどなくあの万里の長城......ちがった、レンガ造りの高架橋が見えてきた。この高架橋のもっと先がマーチエキュート神田万世橋として開発された訳だが、開発されていない他の高架下エリアは、まだオフィスや駐車場に活用されている。ひとつのアーチ、一区画で車4台分といったところか。意外と広いな、なーんて考えながら、「使用前」の高架橋に沿って歩いて行った。

 

 5分ほどで万世橋に到着。すると橋の向こうに、長い長い見事なレンガの高架橋があった。そして、きれいにつくられたマーチエキュート神田万世橋のエントランス。......と言っても、すぐそばには、なつかしい「電車でGO!」のアーケードゲームが置いてある立ち呑み屋なんかがあるし、橋の反対側はオタクの聖地、秋葉原。万世橋にかかる汽車のガードレール。おもしろい立地におもしろいモノたちだわと思いつつ、何故「立ち呑み&電車でGO!」なのか、とふと考えた。

 そして、そのとき私ははじめて気づいたのだ。こ、ここは、交通博物館があったところ! 今はもう大学生になった息子と一緒に来て、旧型新幹線と写真を撮った思い出の地じゃないの!! 文明の利器スマホを持っていながら、ここにくるまで気づかなかったなんて。
 そう、その昔、中央線の神田駅~御茶ノ水駅間には「万世橋駅」という駅があったのだが、1943年に「万世橋」駅は閉鎖。そしてすぐそばにあった「交通博物館」が閉鎖された後、その跡地と万世橋高架橋が、2013年に「マーチエキュート神田万世橋」としてリノベーションされたのだ。ああ、長い歴史と私の記憶がやっとつながってきた。

 

高架下の奥行きを活かした空間に吸い込まれる!

 なつかしさで胸をいっぱいにしながら、内部へ。エントランスからいざ、と言いたいところだが、ちょっとストップ。この入り口を万世橋ポーチと言うらしい。なんか、玄関みたいじゃない? 「いらっしゃいませ感」にキュンとする!

 入ってすぐにあったセレクトショップは、雑貨店。平日だからかここの雰囲気か、中央線の高架下とは思えない、ミュージアムのような静けさがある。高い壁をふんだんに使って商品をレイアウトしているからかもしれない。高架下ってこんなに広かったのか、としばし感心。
 ふと目をやると、ショップとショップの間はアーチ型を活かした細い通路になっていて、そう、まるで京都の南禅寺の水路閣のように、通路の中に通路が見える! なんだか合わせ鏡の中にいるような不思議な気分ではないか。

 

 南禅寺効果(?)か、通路からチラリと見えるお隣りのショップがすごく気になってしまう。でも目の前のココも見たい!! ......はやる気持ちをおさえつつ、目の前の雑貨をチェックした。和もの、季節もの。日本、東京そして神田のモノづくりにこだわった、品のよい雑貨がきれいに置いてある。

「ごゆっくりどうぞ」な、おもてなし感!

 このマーチエキュート神田万世橋、1階の川沿いはすべてガラス張りになっていて、窓ぎわには椅子が置いてある。スペースごとにちがう椅子というのも、趣を感じる理由だろう。椅子は自由に座っていいので、ちょっとした休憩にはもってこいだ。いや、休憩と言っても、最近の郊外型ショッピングセンターで買い物に疲れたパパたちが座るソファとはまたちがった、なんというか、余裕を感じるスペース。神田川を行き交う舟をながめながらひなたぼっこ? あるいは、待ち合わせに使ったりもできるかも?

 

 ......そんなくつろぎスペースは、窓際だけではない。1階の中央付近にあるギャラリー&ショップ「LIBRALY」は、万世橋高架橋が駅として稼働していた大正時代から昭和初期までの日本文化を発信する場になっていて、さまざまな書物が閲覧できる。ジオラマのそばで歴史を感じながらカウンターに座ってゆったり。「いそがなくていいよ、ここで神田・万世橋をじっくり味わってね」と言わんばかりの空気感だ。
 マーチエキュート神田万世橋は、ショップのディスプレイよりも、くつろぎスペースのほうが多いのではないかとさえ思う。一人でも、友だちと一緒でも歓迎してくれそうな、落ち着いた空間。事実この日も、いろいろな層のお客さんが、思いおもいに書物を手にしていた。
 そして、内装。コンクリートの打ちっぱなしの壁にアーチ型の高い天井は、まるで異国の地にいるような不思議な雰囲気をかもしだしている。空調などはアースカラーの扉に覆われていて、違和感がない。床はあたたかみのあるフローリングで、歩くとコツ、コツと音がするのがまたなんとも言えない情緒を感じるのだ。ここが高架下であることを忘れてしまいそうな。

 

 もちろん、ここにしか売っていないこだわりのグッズやスイーツ、家具、それに電車グッズなど、ショップのラインナップも見逃せない。壁を活かしたスライドの上映や、イベントスペース「佇マイ」で開かれるアットホームな催しも魅力だ。

息子たちとの、永遠のデートスポット!?

 いちど外に出て、「1912階段」から2階にあがってみた。この1912階段は、文字通り1912年につくられた階段。引き算すると、なんと102年前、だ。それだけ昔につくられた階段が、ほぼ建設当時のまま、公開され、誰もが通れる階段として利用されているなんて、にわかには信じがたい。階段の一部がちょっと欠けたり、年月を思わせる箇所はそこここにあるが、素材のすばらしさも、保存状態も、すべてが敬意を表すべき「歴史」の一部なのだ。

 

 ゆっくり、ゆっくり踏みしめるように階段を上がると、ふっと広がる明るい世界。ガラスで覆われた近代的な「2013プラットホーム」だ。1912階段からタイムスリップしたかのような雰囲気のちがいを感じる。ガラス1枚隔てた目の前を中央線が走っていて、線路に囲まれるように展望デッキとカフェ「N3331」が並んでいる。N3331からは、電車が見える。交通博物館で目を輝かせたころの長男と一緒に来たら、どんなに喜んだだろう。いや、こういうロケーションを知ったら、今でも嬉々としてお茶くらいしてくれるかも? そうだ、次男はまだ10歳だし、現役で喜んでくれることはまちがいない!
 私はカフェでお茶を飲み、しばらくくつろいでから、レンガ造りのノスタルジックなマーチエキュート神田万世橋を後にした。

 

 「万世橋駅」があった証でもあり、100年以上前から現在までの歴史に触れられる場所でもあり、私が息子と楽しんだ思い出の地でもある、マーチエキュート神田万世橋。ここにきてこの質感に触れられたら、日々の忙しさをリセットして、原点にかえれる気がする。今度は子どもたちを誘って来てみようかな。大学生の長男も、小学生の次男も、それぞれの知識欲を満たしてくれる特別の場所として記憶に残るにちがいない。そして、母である私との、永遠のデートスポットとしても......!

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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