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連載コラム

第130回 「車で通りかかる人がいない」一見不利な立地を活かした地域密着型カフェ「ラグラス」

[ 2014年10月2日 ]

 西武線新宿線小平駅から花小金井方面に向かって延びる小道がある。自転車は通ることができるが車は乗り入れられないこの道は、気持ちのよい遊歩道になっていて、天気のよい日は、多くの人々が散歩したり、ジョギングしたりする。
おそらく地元住民にとっては、なくてはならない馴染みの場所、それがこの「多摩自転車道」だ。

 そんな多摩自転車道の途中に、「え、こんなところに?」というたたずまいで、「ラグラス」というカフェはある。私が初めてこの店に行ったのは、もう10年くらい前なのだが、今回聞いてみたら、18年前からこの場所で営業しているのだという。

 初めてこの店を行ったのは、桜の季節だった。小平に住む友人から、「桜の時期に行くと最高にいいカフェがある」と教えられて足を運んだのだ。たしかに、ここの庭の主のような桜は、満開時にはかなり見事だ。テラス席で食事をしていると、花びらが食べ物の上に落ちてきたりもするが、それもまた風情、と思える。

名物の桜のほか、季節ごとに訪れる人を楽しませてくれるガーデン

 残念なことに、桜の時期は短い。私も、それ以来、なかなか桜の時期に訪れる機会はもてないでいる。しかし、この店の魅力は、桜だけではない。

 遊歩道から少し奥まった位置に建っているラグラスの建物だが、遊歩道からのアプローチは、四季折々にいろいろな植物が美しく咲いている。どの季節に行っても、このガーデンが訪れた人の目を楽しませてくれるのだ。

 遠目に見ると、普通のおうちのような建物で店内はそれほど広くない。素朴な造りの内装に、6人ほどで囲める大き目のテーブルが3つと、2人用の小さいテーブルが3つ。広さのわりには席数が多いが、それがまたアットホームな雰囲気を作り出している。
 実際、なにかのサークル活動やPTAなどの帰りにグループで立ち寄るお客さんも多く、この席間の近さも、グループ客には好都合なようだ。現に、私が今回訪ねた日も、大きなテーブルを囲んでいた女性のグループは、ランチ兼ミーティングをやっているようで、活発な意見交換が行われていた。そんな使い方が、日常的にされている店なのだろう。

ほとんどのお客様が徒歩で来店!

 食事類も、ご飯は雑穀米を選べたり、季節の野菜もふんだんに使われていて、ヘルシーかつ美味しいので、とても評判がいい。数量限定のラグラスランチは、早めに行かないと売り切れになってしまうほどだ。ところが、そんな人気店にもかかわらず、この店には駐車スペースが少ししかない。少し離れたところにコインパーキングはあるが、店に隣接した駐車場は3台分しかないのだ。住宅街の中という立地のせいもあるだろうが、この駐車スペースの少なさこそが、この店の特徴をよく表している。

 この店のお客さんの多くは、徒歩で来店されるという。小平駅からも近いので、遠くから来る人も電車利用で徒歩で来ることができるし、なんと言っても、メインのお客さんはこの自転車道を通る人達だ。通勤、通学、買い物、散歩。日常生活の中に、この自転車道があり、その途中にあるこの店にふっと立ち寄る。そんな人たちのために、ここはある。

 そう思えば、季節ごとに目を楽しませてくれる植物たちも、旬の野菜を使ったメニューも、少し近めの席間も、「いつも来てくれるリピーター」を意識したものなのだとわかる。
 もちろん、「評判を聞いて遠くから来たのよ」というお客さんがいれば、それは嬉しいに違いない。しかし、本筋は、地元の人たちが気軽に、足繁く通えるカフェなのだ、ここは。

地域の活動を応援し、発信する地域密着型のカフェ

 店のエントランスには、地元の名産品の販売コーナーもあり、そこにはさまざまな催しのチラシが設置されていた。子育てサポートのNPOや、毎日のようにイベントをやっているカフェ&ギャラリー、市民活動のイベント、まさに地域に密着したさまざまな情報がここにはある。こういう地元での活動を応援している店の姿勢がこの一角だけ見ても感じられる。

 そして、このラグラスでも、クラフト教室やピアノとギターのライブ、マルシェなどのイベントも頻繁に行われているのだ。

 小平という郊外のベッドタウンの住民たちにとって、さまざまな意味での「楽しみ」と「癒し」を提供する空間として、きっとこの店は誕生し、18年間続いてきたのだ。

 この日、テラス席で私の隣に座っていた女性の2人組も、今では高校生の子どもがいると言っていたが、子ども達が小さかったころからここにはよく来ているとのことだった。

 一般的には、車通りに面していない、ということは飲食店にとっては致命的な欠点だ。しかし、だからこそ、ラグラスは徹底して徒歩で来ることができる地域の人々のための店、を貫いてこられたのだろう。そして、結果的に地域の有名店、繁盛店になった。

 近い将来、ますます高齢化が進んだとき、こういう地域密着型のカフェの需要はますます増えそうだ。「すてきなガーデンのあるおしゃれなカフェ」というだけではない、近未来型カフェのモデルケースとしても、とても興味深い店だ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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