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連載コラム

第131回 「店で商品と出会う楽しさ」を再発見できる、カルチャーのテーマパーク「コーチャンフォー若葉台店」

[ 2014年10月31日 ]

 「いやもうとにかくスゴイんですよ!」と、興奮気味にうちのスタッフが報告してきた。わが事務所からは車で15分もあれば行ける、若葉台にできた「コーチャンフォー若葉台店」のことだ。
 10月8日にオープンしたばかりのこの店、なんでも「本+文具+音楽+カフェ」の複合商業施設とのことで、私も気になってはいたのだが、なかなか行く機会がなかった。そんなところに先日、スタッフの一人が「若葉台に住む友人から鼻高々に自慢されて、どんなものかと見に行ってきたんです!」と、興奮ぎみに鼻の穴を膨らませて帰ってきた。

 「店内に入った瞬間、7割の人は、立ち止まり、周囲を見渡し、うわー! と声をあげちゃいます。間違いないです。」と、なぜかわがことのように得意げなスタッフ。そこまで言われると、やはり気になる。行ってみるしかない。さっそく翌日、打ち合わせの合間をぬって出かけてみた。

 平日の昼間だったので、駐車場はさすがに空いていた。600台は停められるという広大な駐車場は、ちょっと広すぎるんじゃないの? というふうにも見えた。建物を外から見ただけでも、中がかなり広いことが想像できる。この車の数では、かなり中は閑散としているんじゃないか。そんな風に思いながら、店内に入っていった。

なんと贅沢な面陳の嵐! POPなしでも本の魅力が伝わる売り場つくり

 店の入口に立ったときに感じたのは、「何の店なのか外から見ただけではわからない」ということだった。入り口周辺だけはガラス張りだが、表面に模様があったりして、中があまりよく見えない。一見、ホームセンターのようでもある。

 ところが、店内に入ると、そこにはあまりにも明るくて、広々とした空間が広がっていた。それも両方向にどこまで続く大海原のように、ぴかぴかにきれいな売り場が広がっているのだった。
 「おっ、広い!」私は、思わず声を出して、立ち止まり、ぐるりと店内を見渡した。スタッフが予言したとおりの行動を、やはり私もとってしまった。そして、私の後に店を訪れた人も、背後で私と同じように「うわー! すごい!」と感嘆の声をあげていた。

 「コーチャンフォー」の凄さは、ある意味、この店に入った瞬間に感じる驚きに集約されている。とにかく、圧倒的な広さ、そして品揃えなのだ。
 それも、この店の4つの柱である「本」「文具」「音楽」それぞれが、「これでもか!」とまでに商品をそろえ、また、その揃いっぷりをあますところなく活かした見せ方をしている。

 たとえば本だ。
 この店は、面積の広さをフル活用して、ものすごく多くの雑誌、書籍を面陳(表紙が見えるように棚に並べること)もしくは平積みしている。そして、昨今の書店ではよく活用されているPOPがまったく使われていない。最近のPOPには名作も多く、私もけっこう楽しませてもらっているのだが、改めてこうしてPOPのない、それでいて表紙がしっかり見える書籍売り場を見ると、それがとてもすっきりしていることに気づかされた。しかも、表紙の見える並べ方であれば、帯の文字もほとんど見える。POPはなくても情報は表紙から十分伝わってくる。POPなしでもそれぞれの本の魅力を伝えられるのは、この贅沢な陳列ができるスペースがあるからだろうが、だからこそ、ここでは店内を歩き回りながら、棚を見て回ることが「アミューズメント」になるのだ。

 実用書、ノンフィクション、文庫本など、ジャンル別のランキングごとに該当する本が面陳されている棚などは、隅から隅まで見ていても飽きない。飽きないだけでなく、今は何が話題になっているのか、などを考察する楽しみもある。
 そして、なんと言っても圧巻なのは、児童書売り場だ。普通の書店だと、奥まったところにあることが多い児童書売り場が、ここでは若葉台駅から歩いてくる人が出入りするだろう入口のすぐ目の前にある。そして、そんじょそこらの専門店では太刀打ちできないだろう数の絵本、児童書が、これもまた表紙の見える贅沢な並べ方で迎えてくれるのだ。
このコーナーに関しては、天井からぬいぐるみがぶらさがっていたりして、空間そのものがひとつの「世界観」をもって構成されている。
 これ、絵本好きの子を連れてきたら帰らなくなるのでは? いや、自分だって子どものころ、こんな店があったら毎日来てたかも、と思う。

「文具」の枠を超えて幅広い世代が楽しめる文具コーナーの充実ぶり

 「コーチャンフォー」店内は、建物のど真ん中を突っ切るようにもっとも広い通路があり、その片側が広大な書籍売り場になっているが、残りの半分は文具、さらに奥には、音楽のコーナーと「ドトールコーヒー」がある。
 書籍売り場だけでも圧倒される広さと品数だったが、その破壊力は文具コーナーでも同じだ。やはり面積が広いだけあって、商品の陳列の仕方が贅沢だ。今なら、「アナと雪の女王」や「ムーミン」をコーナーで展開していたが、そのコーナーの広さが半端ない。いわゆる1つの島が「ムーミン」の世界になり、「アナ雪」の世界になる。そんな陳列になっているのだ。

 また、あまり見かけないような輸入品も数多く置いてあるのが目につく。その一方で、あの銀座の老舗・鳩居堂も入っていて、和紙など日本古来の文具も、かなり豊富に取り揃えている。文具というより「ホビー」といった趣が強く、画材やクラフト道具など、好きな人にとっては「たまらない!」であろうレアな商品も、ここでは棚の大きなスペースを占めている。
 子どもから、ママから、おばあちゃん世代まで、ここに来ればきっとなにか「楽しめるもの」が見つかるに違いない。

誰にでも「好きな棚」がきっとある! 全方位型の音楽コーナー

 幅広い世代が楽しめるという点では、音楽コーナーも秀逸だ。たいていのCDショップでは、隅のほうに「クラッシック」「演歌」などのカテゴリでひとまとめにされてしまうような商品が、ここでは大威張りで棚に並んでいる。それもまた面陳だ。
 たとえば、店内の壁面の5分の1くらいを占めるクラッシックの棚。ここでは作曲家別、演奏者別にさまざまなクラッシックを陳列している。たとえば、ベートーヴェンの「第九」を探してみると、同じ「第九」でもさまざまな指揮者、演奏者のものがずらりと並ぶ。「あなたの探している第九は、どの第九?」と、まるで棚が問いかけてくるようだ。

 「北島三郎」「美空ひばり」や「吉田拓郎」「オフコース」なども、ちゃんとアーティスト別にカテゴライズされている。「演歌」「フォーク」でまとめられていないことに、その世代の人ならきっと感涙するに違いない。

 ちょっとのぞいてみようと思って入ってみたら、結局、私は軽く3時間滞在してしまった。翌日筋肉痛になるくらい歩き回り、目の保養もしたし、情報収集もした。さすがに疲れたので、店内にあるカフェにも立ち寄ったが、こんな広い「ドトールコーヒー」は初めて見た! という広さだった。なんでも、このドトールは205席あり、日本最大規模なのだそうだ。
 広々とした店内の中心には、子ども連れ向けの丸くて低いスツールとテーブルも用意されているし、場所によってテーブルや椅子、照明器具などが違っていて、用途や気分に応じて席を使い分けることができるようになっている。

 このカフェの存在も含めて、ここは巨大テーマパークのようだと感じた。それぞれにお目当ては違っても、多世代にわたる家族がみんなで出かけてきて、みんながそれぞれに楽しめるテーマパーク。きっと長居することになってしまうから、ほっとくつろげるカフェはやはりなくてはならないものだ。

 この日、私はうっかり一人で来てしまったが、次に来るときは、息子たちを連れてこようと思った。うちの息子は、大学生と小学生。年の離れた兄弟ではあるが、ここなら間違いなく2人とも気に入る場所がある。もちろん、夫も一緒に来てくれてもいいし、孫といっしょに買い物に行くのが大好きなおばあちゃんを連れてきてもいい。

 やっと店を後にしたとき、すでに周囲は暗くなっていて、店はライトアップされていた。ライトアップされた店舗は、まるで巨大なお城のように見える。あらためて外から見ても、この中にあれだけの広大な売り場が広がっているようには見えない。いや、だからこそ、中に入ったときに新鮮な驚きがあるのかもしれない。開店まもない時期とはいえ、あれほど多くの人が(私も含め)、店内に入り驚きと感嘆の声を上げるのは、その意外性ゆえなのではないか。

 北海道発祥で、この若葉台店が関東初出店という「コーチャンフォー」。
 まさに北海道育ち! と思わせるこのスケール感とダイナミックな店舗作りは、ともすればなんでも「ネットで検索」で買い物を済ませてしまいそうになる私たちに、「お店で商品を見る楽しさ」を思い出させてくれる。
 電子書籍の普及などで、「書店」の減少は著しいが、リアル書店にはまだまだ可能性があるんじゃないか! と、思わせてくれた店だった。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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