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連載コラム

第34回「やっぱり「ふるさと」っていいよね! 地方アンテナショップ、都心で大人気の理由は?」

[ 2006年10月16日 ]

●''島根館''の思わぬ(失礼!)人気にビックリ!
 わがキャリア・マムでは最近、島根県のプロモーションをやっている。ちょっと地味な印象のある島根だが、和菓子や海の幸、ワインやお酒、乳製品など、かなりグルメな県であるということで「おいしいもの巡りツアー」に行ってみて実感したところである。
 そのツアーに参加したうちの会員さんの1人が「銀座の"島根館"で下見してきたんですよ〜」と言っていたのを聞いて、「え? "島根館"? それも銀座に?」と、ちょっと驚いてしまったのだが、銀座も銀座、三越の目の前という一等地に島根のアンテナショップ"島根館"はあるんだそうだ。「すごく繁盛してましたよ〜! おいしいものがたくさんあったし」という報告に、へえ〜と仰天してしまったのだった。
 なんで銀座まで行って、目の前に三越があるのに"島根館"? 繁盛しているなんて、そんなに島根県民が東京には多いんだろうか? 謎だった。で、自分の目で確かめてみようとある日曜日の午後、銀座に行ってみた。たしかに! まさに三越の真正面に"島根館"はあった。そして・・・混んでいた。ほんとに繁盛している。店頭で「多岐いちじく」の試食をやっていたが、そのせいばかりではなかろうという盛況だった。人気ナンバーワンと言われている、卵かけごはん用醤油「おたまはん」なんて品切れ中だ。これは、入荷したその日には売り切れる人気商品なんだそうだ。私は島根に行ったときに買ったけどね。

 正直言って、店内にはそれほど凝った仕掛けはない。この日は、いちじくの試食をやっていたが、その手のイベントは時々やっているそうで、そういえば島根に行ったとき、11月18日からは和菓子作りの実演なども"島根館"でやると、カラコロ工房で和菓子作りを教えてくれた職人さんも言ってたっけ。まあ、そういうイベント目当てで来る人もいるんだろうが、店内を見渡すと客層はもっと地に足がついた感じの人が多い。なんていうのか「フツーに買い物」しているのである。デパートの催し物場の「物産展」のような「ここで買っておかなきゃ!」な、せっぱつまり感はない。むしろ、デパ地下のような印象。買っている物を見ても、いわゆる土産物屋のようにどっさり買いこんでいる人はいない。ほんとに自宅用とおぼしき量を買っている人がほとんどだ。
 島根県の食材や生産品が銀座でも売れているということが、なんだか不思議な気がしつつも「ま、たしかに和菓子はおいしかったしな」と納得していたのだが、このアンテナショップ人気、どうも島根県だけではないらしいのだ。


●有楽町〜銀座はアンテナショップのメッカだ!

 スタッフに聞いてみたところ、「アンテナショップって銀座に多いんですよ」「どこもけっこうな人気らしいですよ」「私は"北海道どさんこプラザ"にはよく行きますよ。ソフトクリームがおいしくって」などなどの声が聞こえてきた。ええっ、そうなの? 地方のアンテナショップって、そんなに身近なものになっていたとは! 認識を改めるべく、今度は有楽町へと出かけてみた。

 JR有楽町駅前にある東京交通会館。ここがどうもアンテナショップの中心地になっているという噂なので、行ってみたのだ。スタッフおすすめの"北海道どさんこプラザ"も、この交通会館にあるそうなので、その「ソフトクリームを食べてやろうじゃないの!」と意気込んで出てかけた。行ってみたのは、金曜のすでに19:00を回っていた。どさんこプラザは19:30閉店だから、もう閉店間際である。しかし! これがなんとまあ繁盛しているのである。夕方のスーパーのように、お客さんでごった返している。私は驚きを隠せなかった。「平日の夜に、わざわざ北海道のアンテナショップで買い物する人たちっていったい?」と思わず、とくと観察してしまったのだが、普通のOLさん、主婦と思われる人が多かった。北海道だけあって、やはりおいしい特産品がたくさん置いてあり、それ目当てで買いに来ている人が多いようだ。
 ソフトクリームもたしかにおいしい。夕張メロンフレーバーのは、特に美味でした〜。このソフトクリームも閉店の瞬間まで買っている人がいて、かなりの人気のようだった。

 同じ交通会館の中に、秋田県の"花まるっ秋田ふるさと館"、富山県の"いきいき富山館"、和歌山県の"わかやま喜集館"もある。さらに、"むらからまちから館"という全国各地の特産品を扱っている店もある。有楽町の駅前だよ! なんかスゴイのである。
 "むらからまちから館"に入ってみたら、ここも繁盛していた。ここは、全国各地の商品が集まってきているから、目移りしそうに商品が多い。そして、店内にはPOPが多い。それも文字がいっぱいつまった情報量の多いPOPだ。これは"島根館"や"北海道どさんこプラザ"にも共通していた。

 アンテナショップには、こだわりや特色のある商品が置かれている。となると、その良さはとりあえずPOPで伝えるしかない。「なぜこの商品が有楽町や銀座で売られているのか」アピールしなければならないのである。そして、目を止めてくれたお客さんが「ここで買っておかなきゃ損だ」と思ってくれないことには商売にならないわけである。
 POPを活用しているのは、スーパーやコンビニだって同じだろう。しかし、アンテナショップのPOPは、その文字数の多さが特殊な気がする。商品のうんちくを語ればそうなるだろうし、実際、読んでみるとおもしろい。「こんなこだわりがあったのか」と知ると、いっちょ買って試してみるか、という気になるのだ。そして、試しに買ってみたものが気に入れば、次にまた有楽町に来たときには「家の近くで買えるものではないから」とリピートしていくのだろうなあ、と思った。繁盛しているアンテナショップは、おそらくそういったリピート客、ファン客に支えられているのではないか、そんな気がした。


●これはすごい! 地方アンテナショップの人気店"銀座わしたショップ"は沖縄テイスト満載!!

 さて、そんなアンテナショップ銀座(いや、有楽町だが)・東京交通会館を出て、私は"銀座わしたショップ"を目指して歩いていた。100メートルほど歩いただろうか、それほど離れていないところに突如現れた沖縄空間! それが"銀座わしたショップ"だった。
外堀通りに面しているのだが、あの広い外堀通りの反対側からでも、そのショップの周囲の空気が違うことだけは見てとれる。まさに沖縄の風が吹いている、そんな店構えなのだ。
 三越のライオンさながらに、店の前にシーサーが鎮座している。隣には「ウコン茶」ののぼり。店の外から中をのぞくと、なんだかとても明るい。その明るさが沖縄! って感じだ。
 店内に入ると、広々とした売り場が広がっていることにまず驚く。しかも地下にも売り場がある! そして、ここも平日の夜(閉店間際)だというのに、お客の多いこと! ものすごい活気だ。
 フロア全体に、沖縄らしい雰囲気が漂っているのは、もちろん商品が沖縄の特産品だからではあるが、フロア中央のディスプレイが効果をあげているようだ。沖縄の特産品である「紅型(びんがた)」という染物(布)を、タペストリーのように天井から何枚か下げてある。特別なものではないのだろうが、この紅型の布が目から沖縄を感じさせてくれるのだ。タペストリーだけではない。商品の陳列棚の商品下や、棚の上にも紅型は敷かれていたり、かけられていたり。店の中のちょっとしたところで「沖縄感」の演出にひと役かっていた。
 さらに、フロア中央には沖縄の海をイメージさせるブルーの照明がなされていた。このブルーと紅型の組み合わせが、「沖縄らしさ」を醸し出しているのだ。遠目に見たとき、青いスクリーンが張られているのか? と見えたのだが、近くで見てみたら、なんのことはない、むきだしの天井に向けてブルーの蛍光灯を照らしているだけなのである。たったそれだけのことで、フロアの中央に「沖縄の海」を作り出している。その創意工夫には感心するばかりだった。

 

 1階は主に沖縄の食料品、地下は工芸品(陶器、布、衣類など)、お酒、関連書籍、CDなどが置いてあったが、どちらもお客は多かった。私が接客してもらった方は、すこし沖縄なまりが感じられる方だったので「スタッフには沖縄出身の方が多いのですか?」と聞いてみた。「出身の人もいますが、どちらかといえば沖縄好きな人たちが多いです。出身はいろいろですが」という答えが返ってきた。
 なるほどね。この店内に満ち溢れる「沖縄パワー」は、「沖縄、大好き!」なスタッフたちに負うものもあるんだろうなと思う。店内をゆっくり見回ってみると、さすが沖縄! おいしそうなものが多い。ウコン茶だの、もろみ酢だの、ゴーヤだの健康によさそうなものも多い。なんせ日本一の長寿県だものね、沖縄。
 そして、ここでも気がついたのは品切れが多かったということだ。閉店間際だったということもあるだろうが、冷蔵ケースの中の沖縄そば、シークワーサー入りのドレッシングなど、けっこう品切れのものがある。

 "島根館"でもそうだったが、"どさんこプラザ"も"むらからまちから館"もけっこう品切れのものが多かった。本来、店にとっては欠品(品切れ)はいいことではないはずだ。だが、そこはアンテナショップである。産地から直送、それも限定数。だったら、「買えるときに行こう!」と合わせるのはやはり消費者のほうだろう。
 せっかく来たのに品切れで買えなかった・・・それはもちろん、お客さまをがっかりさせるには違いない。しかし、だからこそ「今度は、ある時間に行こう!」とリピートするお客さまも多いのではないだろうか。


●アンテナショップ=こだわりショップ というポジショニングが人気の秘密?

 今回、いくつかのアンテナショップを訪れてみて、思った以上に繁盛していることに正直ちょっと驚いた。中にはその県の出身だったり、旅行したりしたときに気に入ったから、という人もいるだろうが、それだけではこんなには集客できないだろうと思う。今回、そこで買い物をしている人たちを見ると、アンテナショップは「こだわりの商品」が買える店と認知されているのだろうなあ、と感じた。北海道には行ったことがなくても、沖縄にはなんのゆかりはなくても「あそこで売ってる牛乳がおいしい」「もろみ酢を買うならあの店がいい」という選択なのだろう。だから、ごく普通にスーパーで買い物しているような普段使いの買い方をしている人が多かった。
 有楽町や銀座といった一等地に、なぜアンテナショップが続々? と不思議な気がしたが、「こだわりのあるいいモノ、おいしいモノが買える店」と認知されているからこそのアンテナショップ人気と考えれば、納得がいく。
 わしたショップで食べたココナッツアイスは、おいしかったもんな〜〜〜。また機会があったら行っちゃいそうよ〜、私!

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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