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連載コラム

第35回「お受験」は深く静かに浸透&ブレイク中? お受験フロアは浮つかず熱い!

[ 2006年11月17日 ]

 5年ほど前に、某デパートのおもちゃ売り場の取材に行ったことがあった。10月ころだったと思うが、隣の子ども服売り場で「お受験フェア」的な催しをやっていて、ほぉ〜と思いながらのぞいてみた。 ベーシック、コンサバティブを絵に描いたようなアイテムが、そこにはたくさん並んでいた。紺ブレ、紺ベスト、シャツやブラウスはもちろん白! 女子なんか丸襟だったりしてね〜、ま・る・え・り・ですよ! 絶対に家ではAngel Blueとかのド派手な服を着てるだろう子どもたちが、丸襟の白ブラウス〜。「お受験」とは、そういう世界なんだな、と目を丸くしたものだった。
 ママたち向けの面接スーツも一緒に並べてあったが、こちらもキッチリ「いいとこの奥様風」でそろっていたっけ・・・。
 さて、あれから5年! 小・中学校を中心に「お受験」ブームはどんどん盛り上がっているように感じられるが、「お受験フェア」はどうなっているんだろう? もしかして、フロア全体が「お受験一色!」なんてことになってるんじゃないか? そんな期待とおそれを持ちつつ、今回は「お受験ファッション」ならここでしょう! の新宿伊勢丹と二子玉川の高島屋をウォッチングしてみることにした。


●「お受験グッズ」コーナーでは細やか〜な情報がゲットできる

 まっすぐに6階の子ども服フロアに行き、どこかに「お受験フェア」の大きな表示とともに「お受験ウェア」「お受験グッズ」が、どどーんと並んでいるのではないかと探してみた。が、しかし。期待に反してそういうコーナーは見つけられなかった。いや、最後の最後にやっと見つけたのが「ボーイズ・ガールズショップ」という売り場の一角であった。こちらはウェアというよりもバックやハンカチ、体操着、上履きなどのグッズ中心ではあったが、そこそこの広さをさいて「受験コーナー」的なものを展開はしていた。が、ちょっと拍子抜けするほどのささやかなものであった。

 それでも、「試験・面接のお洋服をお選びになる時に」や「2006 面接のお洋服」というリーフレットを用意してあり、そこには具体的な商品の紹介だけでなく、運動着はどのようなタイプが適しているかや、「お着替えの練習でボタン糸がゆるむ事があるので、事前にひっぱって確認したほうがよい」なんていう、こと細かなアドバイスが載っている。
 なんと言ってもバッグやハンカチ、ティッシュケースにまで刺繍でネームを入れるサービス(有料)もやっている。ハンカチはあえてシンプルな白を持たせるのがよいようで、今ドキなかなか売ってないような、まっ白のハンカチが主流だ。それだけにお子さまの喜ぶようなワンポイントや、お名前を刺繍するのがよいらしい。もちろん、本当ならお母さまが刺繍するのがよいのだろうが、ま、そこはプロにお任せしたほうが、きれいにできるというもの。この手の刺繍サービスはかなり人気のようだ。
 驚いたのはティッシュケース。これはどうも必需品らしい。それも、街頭で宣伝のために配っているポケットティッシュの大きさではなく、もうひと回り小さいミニポケットティッシュだ。この大きさじゃないとお子さまのポケットにおさまらないんだそうで。このケースもことごとく紺だ。そして、もちろん刺繍を入れる。うーん、なるほどね。


●面接ウェアはどこだ? 伊勢丹は意外にも静かなフェアを展開中

 わずかにお受験グッズコーナーは設けられていたものの、勝手にイメージしていた「お受験フェア開催中! どどーん!」という雰囲気のコーナーは見つけられなかった。その代わり、テナントごとにお受験向けのアイテムを1つのコーナーにまとめて「面接のお洋服」という共通のPOPを掲示している。つまり、面接用の服を子ども服売り場の一角にまとめるという形ではなく、ショップごとに一部のアイテムがフェアに参加しているという形になっているのだ。伊勢丹の場合はファミリア、ミルフィーユ、コムサデモード・フィユ、ミキハウス、Jプレス、スコッチハウスあたりが、お受験ご用達ブランドのようで、それぞれにおすすめの「お受験ウェア」を店頭にディスプレイしていた。どれもたしかに品がいい。こんなのを着ればどこのワンパクくん、おてんばさんでもいっぱしのお坊ちゃま、お嬢さまに見えるだろうなあ、と思えるからコワイ。

 しかし、なんだか予想していたのとはまったく違う。「お受験フェア」という華やぎはあまりないのだ。そういえば、ママ用のスーツなんてこのフロアではほとんど見かけない。どうも4階の婦人服フロアにあるらしいというので、そちらに移動してみることにした。婦人服こそは「お受験フェア、どーん!」をやっているかもしれないではないか。
 4階をぐるりと回ってみたが、「お受験フェア」的なコーナーはない。お受験スーツがズラリと並んでいるショップもない。途方にくれつつ、もう一度よく見ながら回ってみると、あったあった! シビラ、コムサデモード、フォクシー、ミスアシダ、ミスジェイ、プリミッシュ、ポール カなどのブランドショップが、おすすめスーツをディスプレイしていて、子ども服売り場にもあった「面接のお洋服」POPを出している。その一角には、それ風のスーツが並べられていて、よく見れば「お受験コーナー」になっているのだ。しかし、これも「どどーん!」には、ほど遠い。
 なんというか、伊勢丹の「お受験フェア」は、「隠れフェア」的な印象を受けたのだった。よく見るとフェア参加店には「面接のお洋服」という小冊子が置いてあり、各ブランドいちオシと思われるスーツが掲載されている。その品ぞろえは、さすがに伊勢丹! なのである。しかし、この小冊子と「面接のお洋服」のPOPがあるくらいしか、フェアらしさを感じさせるものはない。

 この小冊子によると、伊勢丹の「面接のお洋服」フェアは、4月26日からやっていたようだ。そして、私が出かけてみた10月の半ばといえば、私立小学校の受験を目前にして、もっともお客さまは多い時期だと売り場のスタッフも言っていた。たしかに、日曜で賑わう店内には、ママと子どもの買い物につき合うパパ、はたまた、おばあちゃまも連れて、という買い物風景が目立った。実際に「面接用」の服やグッズを買っている人もたくさんいた。が、「はい、お受験する人はここで買ってね〜!」的なコーナーが、大きくまとめてとってないために、事前にイメージしていた「お受験フェア」とは趣が違っていたのだ。

 つまりこれは、「お受験」のために伊勢丹に服を買いに来るような人は、そういう「はいはい、ここでそろえてね」的なコーナーで買い物をすることを好まない、ということなのではないか、と思った。たとえば、七五三だからと言って、近所のスーパーの「七五三フェア」にぶら下がっているスーツ3点セットの中から子どもの晴れ着を選ぶような、そういう人たちとは人種が違うのかもな〜と。
 「受験のものはここにそろってる」ところで間に合わせるのではなく、子どもの服もママの服も、靴もバッグもお気に入りのショップやブランドで「お受験にふさわしいもの」を選びたい、それが今ドキのお受験ママたちの感覚なのかもしれない。だからこそ、本番の試験は11月なのに、フェアは4月からやっている。「わ〜、もうすぐ面接だ〜」とあわてて駆け込むのではなく、長い期間、吟味していいものがあったら買っておく、そんなママたちがターゲットなのだろう。

 フェアの期間が長いから、大きくコーナーを設けることもしにくいだろうし、ターゲットを考えたら、各ショップを回るほうが好きなタイプの人たちなのだろう。だったら、ショップごとに「面接におすすめなのはこのへんの商品」というのがわかるPOPを出す程度で十分だし、あからさまに「お受験用」と、ひとまとめにするのはマイナスイメージにもなりかねない。
 予想に反して静かなフェアを展開していた伊勢丹のこの取り組み方は、客層に合わせたなかなか賢い戦略なのではないかと思えてきた。高校受験より中学受験、中学受験より小学受験と、下にいくほどお金もかかるし、ハイソになっていくと言われるだけあって、同じ5歳児の親でも、スーパーの「七五三フェア」で服を買う人と、「お受験」する人は嗜好も感覚も違うのが当たり前。伊勢丹の「お受験フェア」には、スーパーのような賑わいは不要なのだろう。


●「お受験フェア」は静かに、を確信させた二子玉川高島屋

 伊勢丹のあと、二子玉川の高島屋にも行ってみた。こちらも伊勢丹に負けず劣らずお受験人口の多そうな土地柄だが、やはり高島屋のお受験フェアの地味ぶりも伊勢丹と同様だった。だって、あまりにも密やかに展開しているもので、思わず私はインフォメーションで聞いてしまいましたもの。「お受験用のスーツとか、どこに売ってますか?」と。そうしたら、出してくれたのが「面接ファッションフェア」という小冊子。こちらもやはり各ブランドの、いちオシスーツが載っている。フェアの期間は4月26日から10月24日までとなっている。私が行った10月15日といえば、最後のかきいれ時ではないか。しかし、この静けさ。
 この小冊子に載っていたママ用のスーツは、ポールスチュワート、ダ トラサルディ、クレージュ、ミスJ、フランコフェラーロ、スティル、ピエール・カルダン、ミスアシダ、ユキトリヰなど、そうそうたるブランドだ。いずれも玉川高島屋の2階婦人服フロアに入っているショップだが、2階を歩いていても伊勢丹以上に「お受験用」という雰囲気はない。「面接ファッションフェア」のPOPを出して、店頭にお受験ファッションをディスプレイしているショップもいくつかはあったが、あまり目立たない。

 5階の子ども服フロアも同様だ。小冊子にはミキハウス、Jプレス、ファミリア、ポンポネットなどの商品が掲載されているが、各ショップではそれほど目立ったコーナー展開はしていなかった。ただ、高島屋のお受験グッズコーナーには、ヨーロッパの伝統刺繍のリーフレットが置いてあった。高級感、手作り感あふれるスモック刺繍で手縫いなんだそうだ。この刺繍が入ったレッスンバッグだと7,000円超! シューズバッグで4,000円近くする。安くはない。が、こういう小物を持っていると本当に育ちがよさそうに見えそうだ。母心をくすぐるこういう商品をそろえているあたり、高島屋も心憎い。

 伊勢丹に続いて、郊外デパートの雄・二子玉川高島屋でも、「お受験フェア」は静かに展開中という事実に、かえってこれからますます受験は激化するんだろうな、という予感がしてしまった。
 「お受験だよ〜! ワイワイ!」という浮ついたところのない、今のお受験フェアは親の本気さを物語っているような気がするのだ。受験だからとあわてて服を買うようなことはせずに、4月からショップを巡ってじっくり選ぶ、そんな買い方をする親たちがこれからのお受験ママなのだ。より本物志向、よりオリジナル志向になっていくに違いない。
 そんなお受験ママ達は、いわゆる派手に大々的にやる「フェア」は好まない。そこをしっかり押さえて、静かな「お受験フェア」を展開している伊勢丹も高島屋もさすが! と言えるだろう。
 ふうっ、私も下の子(現在、2歳!)のときは、小学校受験にも参戦してみようかしら〜〜〜? 自分のスーツはミスアシダあたりがいいかなっ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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