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連載コラム

第38回「トレンディーな情報発信だけじゃない!“渋谷の街”の魅力って?」

[ 2007年2月15日 ]

 日曜日、渋谷の街に来てみたら、人・人・人。「どこからこんなにわいてくるの?」ってくらい、たくさんいる。あまりの人口密度の濃さに圧迫されつつ、なんだか妙に高揚してくる。そう、だって多摩から「都内」に出かけるときは、それなりにオシャレをしていくし、渋谷ならなおのこと、気合いも入るしね。だからいつも以上にワクワクしていて、これから出会う、すべてのことに期待する気持ちであふれているのだ。
 渋谷は、いつ来ても元気な街、若者のための街というイメージがあって、女の子たちが喜びそうなファッション、グッズ、アロマショップ、スタジオ、エステ、リラクゼーション、カフェ、レストランと何だって揃っている。けれど、渋谷の街を歩いてみると、若者だけじゃない。赤ちゃん連れのご夫婦、連れ立って歩く母と娘、オジサン、オバサン、おばあちゃん、おじいちゃん…いろんな世代と出会う。これだけ人が集まってくる渋谷、情報発信地と呼ばれる魅力って何だろう? …というわけで、渋谷の街をウォッチングしてみることにした。


●ハチ公前広場の電車モニュメント「アオガエル」

 渋谷駅前の待ち合わせ場所といえば、ハチ公前広場、もしくはモヤイ像のある広場が定番。でも昨年10月末からちょっと景色が変わった。そう、ハチ公前広場に突如、緑色の電車が出現したのだ。

 電車の車両を改装して造られたこのモニュメント、通称「アオガエル」。16年に渡り渋谷・桜木町駅間を走行していた東急電鉄「5000系」の先頭車なのだそう。運転席の操作レバーや座席などは当時のままらしいが、中をのぞいてみると、すでに満席。おしゃべりで盛り上がっているオバサン軍団(どこにでもいるな〜)の隣で、ひっそりと一人で携帯メールしている若い子もいれば、文庫本を読んでいるサラリーマン風のオジサンもいる。また、車内には渋谷駅周辺の歴史写真があったり、伝統文化や変遷を伝えるボートや、渋谷公園通りのガイドマップも貼られていたりする。ふと見渡してみれば、案内役風の年配の男性が、老夫婦と懐かしそうに「昔の渋谷」について語り合う光景も見られた。

 

 座席があいたのでちょっと座ってみる。座り心地、見上げた時の天井。当時の「アオガエル」を知らない私にも、不思議と懐かしく、ホッとするレトロ感があるのだ。外では、電車を背景に写メールで記念撮影中の若者、カップル、子ども連れ。撮影会は途切れなく続いていた。

 この全長約18メートルの電車モニュメントが出現したおかげで、「待ち合わせ場所が狭くなった」という声もあるようだが、すでに常連もいるらしいし、あるいは「車内でちょっとひと休み」という利用を楽しんでいる人もいる様子。

 渋谷区としては、渋谷駅周辺でパトロールを行っているNPO法人と組んで、若者向けの相談なども、モニュメント内で受け付ける予定があるらしい。それに「セコム」が協賛しているようで、今はプチ博物館(?)程度のこのモニュメント空間が、今後どう変貌していくのか、ちょっと気になるところだ。


●スクランブル交差点&大型テレビジョン&広告カー

 渋谷駅前のスクランブル交差点は、歩いてる人勝ち、車は負け、みたいな熱気ムンムンな交差点。そして、ここはまた格好の広告の場でもある。ちょうど視界に入る位置に、大型ビジョンがドドーンと設置されていて、信号で足止めされている観客(?)は、ついつい大画面の広告を見てしまう。視覚と聴覚に訴えてくる大ビジョン。実際、私も以前、広告されていたラム酒入りのチョコがすごく食べたくなってしまい、交差点を渡りきってから、予定になかったドラッグストアにふらりと寄ってしまったことがあったっけ。

 さらに交差点付近には、派手なラッピングカーが横切っていく。トラックやキャンピングカー、バスの両サイドに、イベントやライブ、シネマ告知や企業広告などをつけてる、あれだ。数年前だが、カップ麺そのものの形をした車に遭遇したこともあったな〜。辛い系のまっ赤なカップ麺、これ、結構なインパクトがあって、まさに走る広告塔って感じだった。見たら食べたくなるもんね。そうか、こうやって人々の脳にすりこまれていく、っていう寸法か。


●企業が消費者の声を求める、街頭調査スポット

 交差点を渡り、渋谷109を目指して歩いていくと、右側のビルに巨大なカシオの「G-SHOCK」が時間を刻んでいて、アートの街・渋谷ならではな存在感のある広告といえる。

 渋谷109前の広場は、イベント&情報発信地になっていた。新製品のお披露目会、各種キャンペーン、アルバム発売プロモーションイベントなどなど。そういえば、近隣のドラッグストアを巻き込んで、スタンプラリー・クイズラリーのイベント&プレゼント抽選会をやっていたこともあったっけ。この日は、NTTドコモのイベントだったが、抽選目玉商品が「ディズニーランドチケット」とあって賑わっていた。

 イベントを横目で追いながら道玄坂をのぼっていくと、首から市場調査の証明書をぶら下げているオバサンに呼び止められた。手に、クリアファイルに入った質問表を持って、「アンケート調査にご協力いただけませんか?」と声をかけてくる。条件が合うと、貸し会議室に案内される。いわゆる「街頭アンケート調査」だ。20〜40分程度の協力で、謝礼は図書券や商品券、現金が500〜1,000円分というケースが多い。声をかけてくるポイント(場所)と40〜50代くらいの地味系のオバサンたち、市場調査の証明書、質問表という条件が確認できれば、正統な街頭調査とわかるのだが、アンケートと称して高額商品などを売りつけてくる悪徳商法や、怪しいキャッチセールスもあるから、「怖い」「心配」という人は無視するのが無難だろう。

 ただ、この手の調査に協力すると、いま、企業が消費者に何を求めているのか、何を売りたいと思っているのか、どんな新商品が登場するのかがわかってくる。街頭調査は、道玄坂に限らず、渋谷センター街、東急ハンズ付近、宮益坂付近というように、あちこちに点在している。もちろん、渋谷の街だけではなく、他の地域でも行われているものなのだが、渋谷はその調査ポイントが圧倒的に多い。それだけ、企業から期待を寄せられているってことなのかな。渋谷って日本の縮図みたいなところがあるのかも。幅広い世代層や流行に敏感な人種が集まってくる街だから、リサーチするだけの価値がある! ってことなのかもしれないね。


●「JT渋谷カフェ」はアダルトな喫煙所!

 ちょっと歩き疲れたから、どこかでひと休みしたいな、と思いながら、歩行者天国の渋谷センター街に突入。巨大なマックフライポテトが目に飛び込んでくる。マクドナルドの立体的でポップな看板だ。賑やかなこの通りでは、ユニークな風貌の若者も溜まっている。

 そんな中、静かでアダルトな空間を発見。「JT渋谷カフェ」という無料喫煙スペースだ。入店は無料、ただし、満20歳以上限定。微妙な年代の若者は、JTのお姉さんに呼び止められ、免許証などで年齢確認される。

 私がふらりと立ち寄ると、もちろん呼び止められるはずもなく、「いらっしゃいませ」とにこやかに挨拶をされた。タバコの自動販売機もあるのかな? と思いきや、違った。「タバコは販売していません」との貼り紙。JTなのに? 喫煙所なのに? と、ちょっと不思議な感じ。ドリンクは自前で持ち込み可能。自販機で購入して飲んでいる人も多かった。

 ここでは、ノートパソコン、モバイル機器を広げて一人黙々と作業している人もいれば、ちょっとした打ち合わせのスペースとして活用している人もいた。一時間までなら座席を独り占めしてもOKらしい。奥の壁面一面にCDと試聴機があり、音楽(新譜あり!)を楽しむことができる。隣には、タバコの煙をくゆらせながら、ヘッドホンに身をゆだねている男性。私も新譜を視聴しながら、店内の冊子に手を伸ばす。「自分と他人の気になる『におい』コラム集」という無料誌や、「タバコが吸える! 大人のための特別試写会」の案内チラシが置いてある。「選んで、試せるキャンペーン」なんていう応募用紙付のリーフレットも、「におわず、香る」のD-spec(低臭気)製品が紹介されている。桜の香り、ふんわりピーチのメンソール、ストロベリーの香りなど、ふだん見かけないタバコも紹介されていた。これに応募すると、先着100万名に好きなタバコのサンプル1箱がもらえるのだそう。なるほどね。店頭でサンプル配って終わりではなく、応募用紙で“取り寄せ”させて、ユーザーの情報をJTとしてはキャッチしておきたいのだ。


●知られざる? 公共のひと休みスペース

 ところで、喫煙しない人間のための無料スペースはないのか? などと思いつつ、もうちょっと歩いてみると、あった! 宮益坂の交差点から表参道に向かう坂の途中の「渋谷郵便局」の2階に、誰でも利用できるひと休みスペースがあったのだ。

 結構広めの空間で、20席ほどあった。この日、壁面には「絵手紙作品」が展示されており、手作り作品に心がなごむ。ミニコミ誌や文庫本などが置いてある棚もある。自由に閲覧、読み終えた雑誌を寄付していく人もいる。血圧計も置いてあり、ご高齢の女性がちょうど測定中だった。ひと休みスペースは、基本的に飲食禁止で禁煙になっている。そう、カフェじゃなくて、あくまでも「一時休憩」のスペースなのだ。数人で静かに談笑しているグループ、静かに本を読んでいる人、書類をまとめている人、ノートパソコン、モバイル機器を広げている男性はここにもいた。雑誌を読みながら、うとうとしているご婦人もいたが、郵便局という場所柄か、利用者のマナーがよいのがうれしかった。

 渋谷は「動」と「静」のスポットが交じり合う街で、「トレンディー」と「懐古」の融合もある。情報発信と受信、両方の醍醐味を得られる。いま、日本で何が起こっているのか、何が起ころうとしているのか、企業は何を起こしたいのか…。それらをキャッチできるのも渋谷なのだ。

 そんなエネルギーを感じつつ、次のビジネスのねたを、私もちゃっかりといただいてしまった貴重な探訪だった。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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