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連載コラム

第39回「夢と現実のブレンド具合が絶妙! 住のテーマパークIKEAは、家族の絆まで深めてくれる・・・かも」

[ 2007年3月1日 ]

●「IKEAがすごい!」って、どんなにスゴイの? を検証!
 港北ニュータウンのIKEAが私のまわりではかなり話題になっている。「めっちゃ混んでるけど、楽しいですよ〜」「1日いても飽きない〜」「あそこに住んでしまいたい〜」って、いったいどんな店なのよ? 「IKEAに行けば、絶対に部屋をステキにしたいと思いますよ〜」とスタッフたちに勧められ、とにかく現場を見てみることにした。IKEA見るより大掃除したら? という年末の押し迫った時期ではあったが、もしかして大掃除のモチベーションをあげる何かが、IKEAにはあるかもしれないものね。

 「日曜に行くなら朝イチじゃないと駐車場が大変ですよ〜」という、ありがたいアドバイスも受け、10時開店のところ10時20分にはつくように車を走らせた。駐車場は「ディズニーランドかよ?」な広さがあり、余裕でとめられた。話に聞いたほど混んでないじゃん、と思ったのは束の間。次から次へと車が駐車場に吸い込まれていく。こりゃ、たしかに朝イチじゃなきゃ入るのも大変かも。

 駐車場から店内へ向かうエスカレーターに乗ると、向かいには駐車場に戻ってくる人用の上りエスカレーターがあるが、上りは段のないベルトコンベアー式になっている。朝10時20分では、まだ帰ろうとしている人はいなかったが、おそらく買い物帰りの人が多い時間帯になると、この上りエスカレーターは大型カート(IKEAではトロリーと呼んでいる)いっぱいに荷物を積んだ人たちが、ズラリと並ぶんだろうなあと想像できる。

 そして、「今から買い物」に向かう人は、その大荷物っぷりに圧倒されつつも「よおし、買うぞー!」という意欲がむくむく沸くのだ。う〜ん、この景色どこかで見たことあるぞ、と思ったら、そう、「コストコ」だ! 多摩境にある大型ディスカウントストア「コストコ」のエスカレーターもこの方式だった。買い物帰りの人々の大荷物と「楽しかった〜」「いっぱい買った〜」という満足げな顔が、これから始まるショッピングタイムのなによりのプロローグという気がする。

 私はこれを「ジェットコースター方式」と呼んでいる。ジェットコースターの乗り場に並んでいるときって、「やっぱこわいなあ。やめとこうかな」と迷っていても、反対側から「楽しかったー!」と紅潮した顔で降りてくる人を見ると、「やっぱ乗るしかない!」って気持ちになるものだ。あれと同じじゃないかなと思うのだ。

 おまけに、IKEAではエスカレーター脇のスペース(外に面したガラス面)を利用して「IKEAの家具はなぜ安くできるか」などの情報提供をしている。「えっ? これがこの値段?」と目を疑うようなハイセンスな家具が、大きなプライスカードをつけて展示されていたりもする。これも「うう〜ん、なんかいいものあったら買うぞ〜!」という意欲をかきたてる効果抜群だ。

 「IKEAの家具は安いよ」とだけ聞いて「安かろう悪かろうじゃないの?」といぶかしく思いながら来てみた、という人だって、このエスカレーターを降りるまでには「安くていいものたくさんのIKEA!」と刷りこまれるに違いない。


●お子ちゃまはスモーランドに預けて戦闘開始!

 IKEAでは店内案内のリーフレットに順路が示されている。一瞬「べつにどう見て歩こうが自由でしょ」と思うが、混んでいるということを差し引いても、たしかにこの順路通りに進んだほうが、効率よく見て回れるということがあとになってわかった。

 その順路でも最初に示されているのが「スモーランド」(託児ルーム)である。ここで、子どもを預けてゆっくり大人だけでショッピングを楽しむことができるのだ。また、このスモーランド、カラフルな遊具、ボールプールなどがあって子どもにはまさに「夢の国」。「スモーランドで遊びたいから、またIKEAに連れてって!」なんて子どもも、きっと多いんだろうなあ、と想像できる。しかし、それだけにすごい人気で11時前にはすでに40人待ちなどと表示されていた。待ちスペースもしっかり確保されていて、座ってテレビなどを見ながら空くのを待っていられる。なかなか親切である。

 入口付近には、店内案内のリーフレットと並べて「ショッピングリスト」やメモ用の短い鉛筆、さらには紙製のメジャーも設置されている。たしかに「これいいな」という家具が見つかってもメジャーで測ってみないと、わが家のあのスペースに置けるかしら? ということは多い。なんとまあ親切な! ショッピングリストも、店内を一周してみて必要性がよくわかった。「いいな」と思ったものは、とにかくメモしておかないと、あとから「さっきの商品はどこだっけ?」と後戻りして探すことが、かなり大変なショップなのだ。だったら「いいな」と思ったものはとにかくメモ! 削除するのはあとからいくらでもできるから。メモさえしておけば、すべて見終わったあとに買いたい商品だけ、あとから揃えることはできる、という店の造りなのだ。

 IKEAではまず、このショッピングリストと鉛筆を手にすること。そして、子どもをスモーランドに預ける。これでやっと「レディ、ゴー!」なのだ。


●見ごたえたっぷりのショールームは、だれもに夢を見せてくれる

 2階はすべてショールームになっているIKEAだが、順路に沿って歩くと、まずはリビングルーム、リビング収納、オフィス家具、キッチン、ダイニング、ベッドルーム、ワードローブ、バスルーム、キッズと各コーナーが展開されていく。コーナーごとに商品が並べられているだけでなく、スポット的にIKEAの家具で部屋をまるごとコーディネートしたディスプレイがある。これがスゴイ! インパクトあるのだ。

 なにせ、1人暮らし用のワンルーム、ファミリーマンションの狭めのリビングルーム的な広さの部屋にソファ、カーテン、サイドボード、テーブル、ラグマットなど、まるごと入れて「この部屋は99,800円!」と表示されているのだ。もちろん、インテリア雑誌に出てきそうなハイセンスな部屋だ。それでも家具は一式揃えても10万円前後(10万円以下のパターンのもあった!)。これはクル! お部屋もっとステキにしたいなあ〜と思いつつも、1つ1つ選んで、コーディネートしてという時間もセンスもない、という人なら「この部屋ください」と言いたくなるのではないか。そんな見せ方なのだ。

 さらに、ショールームを進んでいくと、「部屋ごと」ではなく「家ごと」というディスプレイもあった。それも55m2の狭い3DKとか、35m2の1LDKとか、あまりにも身近でリアリティのある家がモデルルームだ。3DKなんて、ほんとに狭い。バスルームもぎゅうぎゅうだ。だが、IKEAの家具やキッチンプランで快適・便利・そしておしゃれに暮らせるという提案がされているのだ。

 ニュータウンの新築マンションだと、最近は100m2超すような間取りも多く、「そりゃ、この広さあればどうにでもなるでしょ」的なステキさのモデルルームはいくらでもある。しかし、55m2だの35m2だのという狭い家でもステキに暮らせるという夢こそ、見たかったのよ! という人がニッポンにはたくさんいるはずだ。

 そんな絶妙なバランスが、IKEAの商品の見せ方にはある。秀逸なのは、キッズ、ベビーコーナーだ。外国製品らしいカラフルな家具や小物がたくさんあり、子ども部屋ならではのかわいらしさで、思わずあれもこれも欲しくなるが、どれも本当に安い。いずれ御用済みになったら捨てても惜しくない、という素材のものも多い。さらに、子どもがらみの部屋のプランは、子どもの成長に合わせて変えられるようになっているし、広すぎない。どの部屋も無意味に広くなくて、子どもにとっては「秘密基地」みたいな部屋が多かった。

 きょうだい2人で使うプランなどは、2段ベットと2人並んで使う机を入れたら、床面はほとんど見えないような狭さ! でも、カラフルで夢がある! ベビーベットを入れた夫婦のベットルームなども「赤ちゃんがいる間だけ」の期間限定バージョンで、無理やりベビーベットを入れている感じのリアリティがある。ベビーベットを入れた分、部屋が狭くなる。それでもなんとか快適に暮らそう、おしゃれに見せようと工夫されている様が、ほんとうに参考になる。

 「うちは狭いし、小さい子どもいるし。お部屋をステキになんて無理なのよ。お金だってかけられないしさ」と、ごちゃごちゃの部屋に住み続ける言い訳をしていた人間(私よ、私!)には、ガツーンとくるIKEAのディスプレイと商品だった。高いお金出さなくても、広い家じゃなくても、使える商品、ステキな商品を選んで買って工夫すれば、いくらでも快適な家になる可能性って、どの家にもあるんじゃないか・・・。その可能性をつぶしていたのは私? すっかり反省モードに入ってしまった。

 そこからは思わず、「わが家のための」ショッピングモードに突入。子どもが喜びそうなカラフルな壁かけタイプの物入れ(布製で980円)や香りつきのキャンドルとそのトレイ(トレイなんぞ99円!)、カラフルな食器洗い用ブラシ(190円)、和紙のランプシェード(260円)などなど。さすがに家具は予定していなかったので思いとどまったが、家で役に立ちそう、気分よく暮らせそうと思えた、こまごましたものを、ちまちまとだけど買ったわ〜!

 「家のために買い物をする」って、なんかすごくシアワセな気分になるもんなんだ〜と思った。それも安いし! これで高い高いお金がとんでいくんだ〜と、ある意味フシアワセになってしまうけど、もう〜全然シアワセ!

 会計が終われば、目の前にはカフェがあり、このカフェも安い! コーヒーとマフィンのセットやホットドッグがおいしかった〜。ショッピングして、お茶やごはんもして・・・ほんとに家族で来ても、友だちと来ても1日楽しめる! というのがよくわかったIKEA体験だった。

 そして、思ったのはコストコやIKEA、こういうタイプの店に家族でくると「お父さん」の株ってあがりそう〜ってことだ。いわゆる倉庫タイプの店舗では、商品を倉庫の棚から自分で出さなきゃならない。それもコストコでは大容量、IKEAだって家具なんだから大きいし重い(フラット包装にしてはあるが、やはり重い)。棚からレジに運び、レジから駐車場まで荷物を運ぶ。車に荷物を積む、そんなときに頼りになるお父さんって、やっぱいいもの。

 休みの日に家族で買い物に行くのをお父さんは面倒がる、というパターンの家庭も多いだろうが、IKEAのような倉庫タイプの大型店舗は、お父さんの活躍の場も作ってくれる。「IKEAなら行ってもいい」というお父さんも増えそうな予感もするだけに、これからまだまだIKEAは話題になりそうである。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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