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連載コラム

第50回「コンセプトがつきさされば、人は吸い寄せられていく!」

[ 2008年2月1日 ]

 いつも、東京近郊のネタが多くて、繁盛店は、やっぱり都心だけなのか、と、がっかりしてらっしゃる皆さんも多いと聞き、いつも申し訳なく思っていた堤であります。というのも、特に取材経費をいただいているわけではないので、どうしても自分の身近で体験した店の繁盛する仕組みを伝えざるをえないので、おっつけ住まいの周辺になってしまうわけで…。
 そこで今回は、年末年始に出かけた地方で見つけた、おもしろいほど人が入っていくはちみつ屋さんに、スポットを当ててみたいと思うのだ。「え? はちみつだけで店舗が成り立つの?」と思われるみなさま、私も正直、ちょっとビックリしました。が、よくよく見てみると、その間口1間ほどの小さなショップからは、つきささるような「はちみつワールド」のコンセプトと、思わず入ってみたくなる工夫がエントランスにされている。というわけで、その種あかしを本日はご披露していきましょう!


●ファンケルかベネトンかと、見まごうばかりのパネル展示

 JR東海道本線の熱海駅から徒歩3分。平和通商店街の入り口にある間口3メートルほどの小さい店が、『杉養蜂園』。店頭には「はちみつソフト」の、ジャンボソフトクリームの模型看板が出ていて、まずこのあたりが観光客の目にはナイスなアイキャッチになっている。実際、うちの子どもたちも、この看板に吸い寄せられるように「ソフトクリームが食べたい!」と、店に取り込まれてしまった。で、入り口の横には、マネキンのお姉さんが、はちみつ入りの各種お酢ジュースの試飲を提供する。

 

 だいたい、人の動きを見ていると、このマネキンの女性を横目で店内に入り、ぐるりと奥で反転し、ゆっくりと中に展示されている商品などを見ながら出口付近でお姉さんにつかまる。そこで試飲のジュースを飲みながら再度店内を巡回するか、店頭でソフトを購入しながら、ゆっくりと店を離れる…というパターン。その中で、出てくるのが遅いなあ、と思うお客さまたちが、とってもヘルシーかつ、おいしそうなはちみつを、宅配便など利用しながら購入しているといった光景が繰り広げられるのだ。ほぼ5秒から10秒ごとに、2,3人連れの客が店内に、まさに、見事なぐらい吸い込まれていく。で、さっそく私も、その店内の秘密を探るべく中へ入ってみると…。

 化粧品会社かファッションブティックのような、美しいはちみつが生産される工程を、パネル写真にして展示してある店内は間接照明も上手に使っているので、狭いんだけど、その狭さを感じさせないセンスの良さ。展示してあるのは、ただのはちみつの巣だったりするけれど、「このはちみつの巣にある、ジューシーなはちみつですよ〜」とアピールされると、とっても安心できるような気がしてなんだか不思議。おりしも都会では、はちみつブーム。ハニートーストから、メタボ対策で砂糖の変わりに、はちみつ紅茶などなど、自分のお気に入りのはちみつを購入したい、という層には、ばっちりつきささるコンセプト。そうそう、今月からロードショーが決定している「ビー・ムービー」も、本家ハリウッドでは、興行2週目から、「アメリカン・ギャングスター」を抜いて堂々1位の集客数だとか…。そんなわけで、今年は「はちみつが、キターーー!」という感じなのでしょうか。


●やっぱり、あたしも「試食がした〜い!」

 そうはいってもこちとら人間は、クマのプーさんでもあるまいし、そうそうご飯やコーヒーに、はちみつって消費しないしなあ、と思っていたら、こちらのショップ、実に上手い仕掛けがあったのだ。それが、はちみつ入りソフトの販売と、はちみつ入りドリンクの試飲コーナー。
 私が来店したのは、1月の上旬の寒い日だったけど、それでも子どもや若い子たちはソフトクリームを買っていた。が、やっぱりもっと強力だったのが、ドリンクの試飲コーナー。試飲だもの、もちろん無料。で、入店していく人の視線を見ていると、ちらっと試飲コーナーを横目で見ながら店内に入り、奥まで行ってゆっくりと反転して、声をかけてもらいやすいぐらいのゆっくりなテンポで歩いて、おもむろに肩越しに試飲用の紙コップを手渡されて、にっこりしながら店を出るっていう感じ。マネキンのお姉さんがいなくなると、ちょっぴり店に入るお客さまの勢いが衰えるけれど、それでもちゃんとモーターでも回っているかのように人が店に吸い込まれている。
 声をかける人がいなくても、試飲のコーナーがあるっていうのが店頭の目立つところにあるのが、きっと効果を発揮しているんだろうなあ。


●はちみつ博士になれる気分の、蜂の巣の実物展示

 店内の少し人の流れがゆっくりなところにあるのが、この店の、はちみつができあがる苗床である蜂の巣。どんなところで、はちみつができあがるのかが見られるので、これ以上の品質表示はないよね。お客さまは、みんな安心して選んだり購入を楽しめたりするってわけ。わずか数坪しかない地方の土産物屋さんが並ぶ商店街に、なんだか「はちみつ博物館」がある感じで、子どもづれでもアベックでも、イベント的にウインドショッピングが楽しめる。これが、人が次々と吸い寄せられる秘訣だったわけ。
 そして、ヘルシーでおいしいはちみつドリンクの試飲と、低料金のソフトクリームの販売表示。なんだか、お得感があふれてる間口数間の小さなショップが、都心の化粧品やファッションブティックと重なって見えたのだった。熱海にお越しの節には、ぜひ、立ち寄ってみてくださいね!

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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