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連載コラム

第51回「職住接近」ショップのあったかみが、なんかいいカンジ! 多摩ニュータウンに、こじんまりした隠れ名店増殖中!

[ 2008年3月3日 ]

●実は5年前からやってます!〜多摩境通りの名店たち〜
 ここ数年は、すっかり賑やかになってきた多摩境(町田市小山ヶ丘)だが、ちょっと前までは、なーんにもなかった。しかし、その「なーんもなかった」ころから、たぶん最初は細々とやっていただろう店のいくつかが、今では通(ツウ)が、わざわざ通うような有名店になっている。
 「チクテベーカリー」、「ピエス・ドゥ・ミュゼ」は、パン好きなら知らない人はいない名店。チクテのマフィンなんて、何カ月も前から予約しないと買えないし、「ミュゼ」の自家製天然酵母パンと、こだわりの具材を使ったサンドイッチはまさに絶品! そして、この「ミュゼ」のすぐ近くにあるレストランが「プラ デュ セイボ」だ。ランチタイムの2時間半とディナーも2時間半しかやっていないが、予約すれば本格的なコース料理も食べられるし、ランチのパスタやピザもおいしい! なんともかわいらしいレストランなのだ。


チクテベーカリー

 
ピエス・ドゥ・ミュゼ

 この3店に共通しているのは、「いかにも自宅の一角」という店造り。多摩境は新しい街なので、一般の住宅も、おしゃれな造りのものが多いため、どうかすると見過ごしてしまいそうな佇まいの店だということだ。「ミュゼ」だけは多摩境通りに面しているが、他の2店は通りからも引っ込んでいるため、「5年前からやっています」と言われても、近くに住んでいる人でさえ、知らなかったりする(車で10分のところに住んでいるうちのスタッフは、今まで知らなかったことをすごく悔やんでいた)。


●職住接近ショップの魅力は「手作り感」と「安心感」

 しかし、一度知ってしまうと、必ずやリピーターになってしまうだけの魅力が、これらの店にはあるのだ。食べ物屋だから、もちろんおいしい! それは大事なことだが、さらにこの「自宅の一角」的な造りが醸し出す「手作り感」や「あたたかみ」...これがなんともいいのだ。セイボなんて、自分ん家のリビングで食事してるような気分になれちゃう。小さい店だから、混んできたらあまり長居するのは申し訳ないけれど、空いていたら、ずっと居てもいい気になってしまう。そんなアットホームな店なのだ。

 どの店も、「売らんかな」な感じがなく、やれる範囲でやっている、という感じだからこそ安心できる。昨年話題になった「偽装」とは無縁な雰囲気がいいのだ。できるだけやって、商品がなくなったら売り切れ、みたいな潔さ。だからこそ安心、とも言える。
 無理して繁華街に店を出したり、店舗を拡張したりせず、身の丈に合った商売をしているからこそ、自分のこだわりはなくさず、納得のいく商品を作って提供しているんだろうな、と思える。それでやっていけるのが、この「住宅地の中の職住接近ショップ」の強みなのだ。自宅の一角で「お店開いてます」という形態自体が、その店の姿勢を現していると言えるし、それが信頼にもつながっていく。派手に宣伝しなくても、くちコミでお客さんが増えていくのも納得できる。


●他にもあった! 職住接近ショップ & 一見普通の家ショップ

 そういえば、多摩ニュータウンには、そういう職住接近感のある店がけっこうある。たとえば、堀之内の「柚子木庵」。ここは和風カフェ的な作りだが、ランチはパスタやグラタンなどもあり、パンケーキなどスイーツ類も充実。松木公園近くの住宅街の中にあるが、主婦たちでいつも繁盛している。


柚子木庵

 永山に昔からある喫茶店「木の香」も住宅街の中、どう見ても自宅の一部といった造りの店だ。若葉台には、やはり住宅街の中にケーキ屋がある。「パティスリーシュエト」と「もみの樹」。こちらも、どう見ても普通の住宅だが、れっきとしたケーキ屋だ。


パティスリーシュエト

 こういう「一見普通の一軒家」なショップは、多摩ニュータウンのようなベッドタウン特有のものかというと、実はそうではない。実際に住居も兼ねてはいないようだが、都心のど真ん中にもしっかりあるのだ。

 たとえば、渋谷区神宮前にある「CAFE AU GOGO」。ここも神宮前とはいえ、住宅街の中にあり、見過ごしてしまいそうな佇まい。なんせ一見普通のアパートに見えるが、その一角が空中に張り出すような山小屋風カフェになっている。また、下北沢の「モワカフェ」も、どう見ても普通の古い一軒家で、以前の住民の表札までかかったまま(その隣に店のメニューが掲示されている)。昭和テイストたっぷりの家の造りを、そのままいかした「おうち」感あふれる店内の雰囲気には確かに癒される。

 住宅地の中という、商売をするにはハンデとなりかねない立地も、自宅の一角という店舗としては限界のある広さも、視点を変えればアピールポイントにもなる。出店の費用も、おそらく低く抑えられるだろうことや、女性だったら家事や育児との両立を考えても「職住接近」は悪くない選択だと思う。また、神宮前や下北沢のショップのように、あえて「普通の家」のような雰囲気を、演出するケースも増えてきていることを考えると、きらびやかに演出された店舗ではなく、お家に招かれたような気分になれる店舗を求める顧客も多いのだろう。そういう店ならではの「あたたかみ」「手作り感」などに、私たちは飢えているのかもしれない。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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