日経メッセ > リテールテックJAPAN > 連載コラム > 今どき主婦のShopウォッチ > 第52回「甘い香りの誘惑 できたてについふらふらと...ってそれがデブの原因!?」

連載コラム

第52回「甘い香りの誘惑 できたてについふらふらと...ってそれがデブの原因!?」

[ 2008年4月1日 ]

●主婦が大好きなのは草木の息吹きと甘い香り
 おいしそうな匂いって魅力的。どんなステキな看板よりも、格好いいコマーシャルよりも、ぷ〜んと漂ってくる匂いのほうが、絶対的な効果があるような気がする。だれもがつい匂いに誘われちゃった...って経験あるんじゃない? おなか空かせてスーパーへ行けば、ついつい、いろいろ買っちゃうのよね。そういえば昔、実家のそばの商店街で、パタパタとうなぎの蒲焼きをうちわであおいでいて、ちょっと焦げた甘いタレの匂いだけで食欲が出たってもの。最近はめっきりお店が減ってしまって悲しいかぎり。

 でも変わってパン屋が増えたような気がする。できたての小麦が焼ける匂いと、香ばしいバターの香り。本当においしそうな匂いって魅力的! あったかくってフワフワした作りたてパンを、すぐにその場で食べることができたら、こんなにうれしいことはないよね。しかも、そよそよと風が吹き、太陽の光がふりそそぐ春の日差しの中、草木が息吹く香りとともに...なんてシチュエーションだったら、これこそ究極の贅沢かも。...ってことで、今回は、できたてパンをその場で食べることができる、サンデッキが併設されたパン屋をウォッチしてみることにした。


●奥さまの御用達のパン屋は南仏プロパンス風

 昔、流行っていたドラマ「金曜日の妻たちへ」の舞台にもなったほど、"奥さま"って言葉がよく似合う町田市つくし野界隈。そこに住む友人が「ここは奥さまたちの御用達なのよ」と案内してくれたのが「欧風手創り菓子工房ママン・ラトーナ」だ。レンガ造りの外壁はまるで南仏プロバンスの田舎街にでも来たような感じ。大きなガラス張りの窓、白い椅子、かわいいウェルカムボードなどからもセンスのよさがうかがえる。主婦ってこういうかわいい雰囲気に憧れるのよね。

 開放感のある広々とした空間右手に、いま焼き上がったばかりのパンがずらりと並び、左手にあるショーウインドウには色とりどりのケーキがあでやかなフルーツを身にまとっていた。お、お、おいしそう〜。ショーウインドウの奥では白衣を着た職人さんが7〜8人、忙しそうにパンやケーキを焼いている。ぷ〜んと漂う小麦の焼ける匂いが私の空腹を刺激する。ご飯たくさん食べてきたばかりなのに、なんだかおなか空いてきちゃったよ。

 「いますぐこれ食べたい。我慢できなーい!」と友人に叫ぶと、店内の奥に少し飛び出たような佇まいのサンデッキに連れて行ってくれた。ここでは自分で選んだパンやケーキをその場で食べることができるのだ。明かり取りのため木の桟で造られた高い天井からは、シーリングファンやチューリップ型の赤いランプが鎖で垂れ下がり、大きな窓から太陽の光がさんさんと差し込む。



 

 混雑した店内から解き放たれたテーブルだけの落ち着いた空間。道路沿いに並ぶ桜の木は小さな蕾(つぼみ)をつけ、今か今かと開花するのを待ちわびているようだった。プランターの小花が風に揺れる中、犬を連れて散歩している優雅な奥さまの姿が目にとまる。

 まだ肌寒さも残るせいか、椅子にあった膝掛けも、冷え性の私にはありがたいサービスだし、静かに流れるピアノの調べもここちよい。こんなに落ち着いた雰囲気なら、いつまででもいられそうね。少し酸味のあるブレンドコーヒーとケーキをほおばりながら、これだから奥さまの御用達と呼ばれるのかと納得した。


●ウッドデッキで風を感じながらのイートイン

 風を感じながらできたてがほおばれるというのなら、ここも負けていないぞ。相模原市役所から歩いて5分のところにある「パン工房パン・ド・クルー」。小さい店内ながらひっきりなしに訪れるお客さんの数の多さにビックリ。どんどん売れちゃうから、常にパンは焼き立て。できたてのクリームパンって食べたことある? フワフワしたパンの中のクリームが熱々なのよ。このおいしさはきっと誰でも虜になっちゃうよ。

 あったかいパンと無料で飲めるコーヒーを手に、店の入り口に設置されている木の机と椅子のあるウッドデッキに出てみる。屋外なので天気に左右されやすいのが難点だが、今日みたいに晴れた日はとっても心地よい。いつも狭いオフィスで仕事をしているせいか、この開放感は新鮮だわ。地面から2段ほど高くなっている床は、歩くたびにコンコンと木の柔らかい音がした。木の感触っていいね。ずっと座っていても、パイプ椅子と違って疲れないもんだ。

 

 まだ昼前だというのに、ウッドデッキは子連れの親子でいっぱい。子どもは行き交う車を目で追いながら楽しそうだし、ベビーカーに子どもを乗せたまま座れるのも魅力的だ。テーブルに小さなチリとりとホウキも用意されているから、子どもが食べこぼしても安心だし。プランターに入れられた灰皿や木で覆われたごみ箱、犬のリードをつないでおくポール、かわいいパン職人の看板や今日のおすすめが書かれたウェルカムボードなど、統一感のある店構えが人気のパン屋と言われる所以なのかもしれない。


●いま各地に広がるイートインのパン屋

 各地には全国からパン好きな人がわざわざイートインするために集まるパン屋というのがあるらしいぞ。千葉県にある「小麦工房ピーターパン」はおとぎの国から飛び出してきたようなロッジ風の建物が目印。景色をみわたせるウッドデッキのそばには、ベンチやブランコが設置され、それが珍しいとテレビ番組でも紹介されたらしい。また、厚木市にある「マカロニマーケット」というベーカリーイタリアンレストランも、パンもおいしいし、ガラス張りの清潔感あふれるおしゃれなイートインでいつ行っても大人気なんだとか。

 これでわかるのはズバリ主婦は食いしん坊! ってことかもね。自分で作った料理を「味見」なんて言いながら、結構食べちゃったっていう経験ってない? だって、できたてって本当においしいんだもの。それをテラスで食べられる幸せ。家から開放され、雑踏から逃れ、心地よい風に吹かれるという、こんなほんのささいなことが、毎日忙しい主婦にとってはうれしいことなのよね。舌で味わい、目で楽しみ、甘い香りをかぎながら光や風を感じる。これが満たされたとき、主婦は「あ〜幸せ」って思うんじゃないかな。いやいやこれじゃ、当分ダイエットは無理ってことだね。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

バックナンバー

PAGE TOP