日経メッセ > リテールテックJAPAN > 連載コラム > 今どき主婦のShopウォッチ > 第58回「スローなカフェにしてくれ」〜人にも地球にもやさしいカフェがブレイク中!

連載コラム

第58回「スローなカフェにしてくれ」〜人にも地球にもやさしいカフェがブレイク中!

[ 2008年10月1日 ]

ちょっと暗めの倉庫風カフェに、子連れママ達が集う!

 国分寺駅南口から徒歩5分、駅からは少し離れたそれほど便利とは言えない立地なのに、このところとても人気のカフェがあるというので、のぞいてみることにした。外見はちょっと倉庫風で、すっごくすてき〜! というほどではない。むしろそっけない感じだが、いったいこの店のどこがそんなに人気なのか?

写真

 店内に入ってみると、すこし暗めの照明のなか、広々とした空間に大小のテーブルが点在している。この日、大きなテーブルを囲んでいたのは、子育て中のママ達のグループだ。8人ほどのママさん達がそれぞれにあんよできるかどうか、くらいの赤ちゃんを連れで食事をしている。全員がベビーカーを持参して持ち込み、子ども達のチェア代わりに使っているが、それも問題ないような広さがある。
 もちろん、「子連れお断り」なんていう敷居の高い店ではない。カフェとは言っても店の雰囲気によっては、子連れのグループ、ましてやベビーカー帯同となると歓迎されない場合もあると思うが、この店はそうではない。子育て真っ最中のママと子ども達を温かく歓迎してくれるのだ。

写真

やさしいお味の野菜と玄米ごはん。体と地球にやさしいランチが人気!

 ママさんグループの近くの席に座って、なにげなくそのランチ風景をのぞいてみると、テーブルの上に並んでいる食事がヘルシーなことに驚く。玄米ごはんや有機野菜、国産大豆などがふんだんに使われた「昔の日本人食」とでも言うべきメニューなのだ。お子さま向けのプレートも同様で、この店のテーブルには、毒々しい赤色のウインナーや油でギトギトの唐揚げやポテトはのらない。
 体にやさしく、おいしい玄米ごはんのおにぎりをほおばる子ども達の幸せそうな顔と言ったら、見ているほうまで幸せな気分になってしまう。

写真

 よそのテーブルをのぞいているだけではなく、自分でもなにか食べてみようとメニューをチェック。たしかに、どれもこれも体によさそうなヘルシーメニュー。店名のとおりの「スローフーズ」ばかりだ。大豆のカレーを注文して食べてみたが、ごはんも玄米を使っているので、歯ごたえがあって風味もよく、肉は使わず大豆だけのカレーもスパイシーでありながら甘みがあってとてもおいしい。なんだかなつかしくなってしまう味だった。

ストローベイルの壁、フェアトレード商品にスローカフェの魂を見た

 食事のあとで、ゆっくり店内を見て回ったところ、この店は単なる「スローフーズを提供するカフェ」ではないことがわかってきた。食べ物に限らず、人間の生き方そのものを「もっとのんびりいこうよ!」と提案する店なのだ。のんびりいこうよ、がテーマだから、時間がかかっても安全でおいしいものが食べたい、提供したい・・・そんな思いが伝わってくる店つくりになっている。
 そんな店のコンセプトを象徴しているのが、ストローベイル工法による壁だ。ストローベイルとは、一言でいえば「圧縮した藁のブロック」。断熱性、遮音性にすぐれているうえ、有害な化学物質を出すこともない。まさに「スローな建材」だ。見た目もでこぼこのある土壁という感じで、ほっとするようなあたかかみがあるのだ。
 「カフェスロー」が現在の国分寺に今年の7月に移転してからやや店舗が広くなったのに伴って、ストローベイルが壁に占める部分が少なくはなっているが(以前、府中にあった店舗はストローベイルがより多く使われていた)、やっぱりこのストローベイルは「カフェスロー」のトレードマークと言えるだろう。
 ストローベイルが象徴的に配置された店内では、食事を楽しむほか、フェアトレードにより発展途上国から輸入された食材や雑貨が販売されている。また、併設されているギャラリーやスタジオでは、さまざまな展覧会やワークショップが開かれている。ここは、単なる「スローな生活を提案するカフェ」ではなく、地域の人々に交流の場を提供し「あたたかみのあるスローな生活」を実践する場にもなっているようだ。

写真 写真

老若男女がくつろげる、交流できる場としての「カフェ」

 この日は、たくさんの子連れママ達を見かけたが、開店早々の時間に行ってみたときは年配のお客さんで賑わっていた。早めのランチとおしゃべりを楽しんでいるおばあちゃん達の楽しそうな姿には、なんだか心が和んだ。子連れママや年配者、店によっては「歓迎されざる客」にもなりがちな人達が気がねなく立ち寄って、くつろぎ、交流できる。そんな「スローなカフェ」がここにある。
 毎週金曜の夜には「暗闇カフェ」というイベントも行っている。キャンドルの灯りで食事をし、「暗闇演出人」という名のミュージシャンの音楽に耳を傾けるこのイベントは、なかなかの人気らしい。これも単なる雰囲気を盛り上げるための「暗闇」ではなく、スローライフの提案の一環としてのイベントなのだ。
 夜は暗いもので、お年寄りや子どももみんな地域の仲間。畑で時間をかけてゆっくり育った野菜はあまく、おいしく、玄米をじっくり噛んで食べるとあまみが出てくる。私たちが子どもだったころにはかろうじて体験していたそんな当たり前のこと。でも、今ではもう遠くなってしまったこと。を思い出させてくれる「カフェスロー」は、ときどき立ち寄りたくなるカフェだ。
 そして、こういったコンセプトの店は、これからも増えていくに違いない。「スロー」をうたってはいるが、ある意味、最先端、それがスローカフェ、なのではないか。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

バックナンバー

PAGE TOP