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連載コラム

第60回「東京のど真ん中・神田で見つけた昔なつかし「縁側」! なみへいでは、「コミュニケーション」がいちばんのごちそうだ!」

[ 2008年12月1日 ]

 私たちが子どもだったころまでは、日本の家には「縁側」があった。家屋の一部でありながら、戸を開けてしまえば、庭のつづきのようでもある縁側は、「開放」の証だったようにも思う。
 おかあちゃんやおばあちゃんは、天気のいい日は縁側にすわり、洗濯物をそこでたたんだり、編み物や繕い物をしたり、ときには近所の人とお茶したりもしてた。お茶をしているところに知り合いが通りかかったりすると、「あら、よってけば? お茶のんでいきなさいよ」なんて声をかけ、いつの間にかお付き合いの輪が広がったりもしていたものだ。
 そんなお茶タイムでいちばん盛り上がるのは、だれかがどこかのお土産や、家でとれた果物やお手製のおやつなどを持ってきたときだった。「おいしい」「どうやって作ったの?」と盛り上がっているとこに、知り合いが通りかかれば、「ねえねえ、これおいしいわよ。食べていきなさいよ」と誘い込んだりして。
 ほんの40年くらい前は、日本のほとんどの地域はそんな空気に包まれていた、と思う...。
 おっと、なんだかノスタルジックになってしまった。

音楽はなくてもおしゃべりが最高のBGM!

 私がこんなことを思い出し、なつかしい気持ちになってしまったのは、「なみへい」を訪ねたからに違いない。神田駅から徒歩3分、正真正銘・東京のど真ん中にあるダイニングバー(正式には「リーダーズサロン」といい起業家や全国の経営者やリーダー達が集うサロンなのだが)「なみへい」は、女性起業家にしてNPO法人キープラネット代表である、川野真理子さんの店なのだ。

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 神田駅から「なみへい」までは、いわゆる「飲み屋横丁」を抜けていく。しかし、いざ店の前に来ると、正直「店」という雰囲気ではない。そのたたずまいは、むしろ「会社」。
 おそるおそる扉を開けてみると、この日は団体さんが2組入っていて大盛況。しかし、なんだかいわゆるダイニングバー、居酒屋とは雰囲気が違っている。どちらのグループもとても楽しそうに盛り上がっているのだが、なにかが違う...としばし観察していると、気がついた! 「音楽がない」のである。
 たいていの店は、音楽が流れているものだが、この店にはそれがない。でも、その理由はすぐにわかってきた。ここでは「おしゃべり=コミュニケーション」がいちばんのごちそうなのだ。それぞれのテーブルの賑わいが最高のBGMに違いない。

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無国籍? でも、おいしさは保証付きのメニューにわくわく!

 この日の集まりは、かたや女性ソムリエが企画した「ボジョレーヌーボーを楽しむ会」、もう片方は、地方の農産漁村の活性化をはかるために様々な取り組みをしている団体の集まりだそう。ワインを楽しむ人達のテーブルには、こじゃれたフランス料理風のフーズが次々に提供されているが、もう片方のテーブルには、さんまの煮付けだの、もつ鍋だのが並んでいる。なんだなんだ、この無国籍ぶりは!
 だけど、どれもがとってもおいしそうだ。厨房を見ると、男性スタッフが1人で調理を取り仕切っている。こんなに幅広いレパートリーを1人でこなすとは...ただものじゃない、のでは。聞けば料亭での修行経験豊富とのこと、なーるほど! 手際のよさもさることながら、とにかく毎日のように違う料理が出せるだけの創造性のあるシェフなのだそうだ。
 一見なんの秩序もなさそうな「なみへい」の料理のラインナップだが、1つ共通点がある。それは、地方の産物、特産品をいかしたおいしい料理だということだ。「なみへい」のメニューは、「本日のおまかせ料理」(7品3000円)がメインだが、これがなんと毎日変わるのだという。この日は岩手の生ガキ、新潟の手作りこんにゃく、三陸サンマなど産地もわかる料理がメニューに並んでいた。どれも素材のおいしさには保証付き、おまけに料理するのは、料亭仕込みの腕はたしかなシェフなのだから、大満足できること間違いない。
 オープン当初、「なみへい」は「料理持ち込み可」の店だった。しかし、コンビニ惣菜ではなく、このシェフが腕を奮う料理を楽しんでほしいという思いもあって、現在は料理の持ち込みはお断りしているのだとか。ただし、お酒は今も持ち込み可能。地元の「これじゃなきゃ」というお酒をここで楽しむことは大歓迎! なのだ。
 料理のほうも、「ぜひこれを使った料理を出してほしい」というようなリクエストにはかなり応えられるという。わがままのきく「マイダイニング」そんな気分で使える店、と言えるだろう。

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「出会い」と「料理」を楽しむ店

 おいしい料理、おいしいお酒を提供しているという点で、「なみへい」は「普通のダイニングバー」だ。それもかなり優等生の。
 しかし、「なみへい」の特徴はそこだけではない。この店で地域コーディネーターとして協力している久保さんにお話をうかがうと「この店の伝票はテーブルごとではなく1人ずつに分けているんですよ」と言う。伝票が1人ずつ? けげんに思っていると、久保さんは続けた。「もとは違う団体さんでみえていても、この方とこの方を引き合わせたらおもしろいんじゃないかと思うと、どんどん紹介するんです。そうすると、もとはどのテーブルにいた方かわからない、ってことにもなりますから。」
 ...そう、それが「なみへい」の正しい遊び方なのだ。この店に集う人とつながりたい、知り合いたいという気持ちをもって訪れれば、そこにはきっと新しい出会いがあり、そこから何かが始まることがある。「なみへい」は、料理やお酒だけでなく、そんなチャンスを提供している店なのだ。
 「なみへい」はレストランでもないし、居酒屋でもない。「サロン」というコンセプトとは、こういうことか。ここから帰る時は、おなかがいっぱいになるだけじゃなくて、人とのつながりや新しい刺激など、目に見えない「おみやげ」をわんさか抱えることになるのだろう。

「東京から故郷おこし」の足がかりに

 川野さんが「なみへい」でやろうとしていることはそれだけではない。「東京から故郷おこし」...地域を応援するために、故郷から東京、東京から故郷に向けての相互発信基地になろうというのだ。たとえば、新潟県十日町においしいどぶろくがある、島根県にはあご野焼きがある、鹿児島県の黒豚も、というふうに。うちの地方には、おらが村にはこれがある、というものをこの店から情報発信しようとしている。
 2週間丸々応援パックとして、地域の特産品のPRをトータルプロデュースしているのだ。食事会を開催したり、試食会、試飲会、店のメニューとして2週間限定で特産品メニューを出したりもする。これは、PRをしたい側(地域)にとってもうれしいが、「なみへい」の料理を楽しみにしている顧客にとってもうれしいサービスだ。
 いつ行っても目新しいメニューに出会える、それも地方の香りのするなつかしい、ほっとするような味わいのある料理だ。神田という東京の真ん中に位置しながら、この店には「田舎のおばあちゃん家の縁側のよう」と感じさせるものがある。
 考えてみれば、東京って地方の人のよせ集め。みんなが故郷を持っているのだ。故郷を想って、故郷を自慢したい気持ちはきっとあるだろう。そう、故郷を持たない人だって田舎は大好きなのだ。...そしてこの縁側での出会いを、川野さんはいつも太陽のように照らしている。「なみへい」があたたかい、一番の理由だ。

 おしゃれな音楽とインテリアで演出された店で飲むお酒もいいけれど、たまにはこういう店で、人と出会い、今まで知らなかった地方の味に出会うのもいいな、そんな風に思った。「サザエさん」の波平さんのような、古きよき日本を大事にしたいという思いを込めてこの店に「なみへい」と名付けたという川野さん。その気持ちが、この店を心地よい空間にし、おいしい料理とお酒をよりおいしくしているのだろう。
 また、寄らせてもらいたい! 次は故郷の友人を誘って来てみようか。そう思う一方で、「ここで何か食がらみのイベントやればおもしろいことができるんじゃないか」そんなビジネス魂もうずいてくる。いや、なにもビジネスにつながらなくても、お料理自慢の主婦何人かで「期間限定ビストロ」をやるとか、同窓会やクラス会の会場として使って、テーブルを地元の料理づくしにしてもらうとか。いろんな使い方を考えているだけで、わくわくしてくる。
 「なみへい」はそんな夢も広げてくれる店、なのだった。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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