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連載コラム

第62回「不器用ですが・・・」な武骨さが新鮮! かざりけのなさがかえって信頼できる食べ物の店

[ 2009年1月16日 ]

ちょっとビックリ! 

 「いわさんかい(岩山海)」は八王子にありながら、海辺の家のような外観

 「鳥取直送の海の幸とおいしいお酒が飲める店が八王子にオープンしてるから行ってみて〜!」と友人に勧められて、八王子の市街地にある「いわさんかい」を訪ねてみた。
たしかこのへん...前もって場所を調べてきたのに、それらしき店がない...ない...ない...えっ? ひょっとしてこれっ? 

いわさんかい

 正直、ちょっと驚いた。八王子でも一等地である横山町の交差点にあるビルの1階なのだが、その外観は決しておしゃれ〜ではない。洗練されているとは言いがたい。だって、通りに面して張り出している屋根(テント)の上に、地引網が干してあるんだよ〜。もちろん飾りなのはわかる、わかるけど、ほんとに「次の漁のために干してあります」みたいに見えるんだって。メニューも外から見えるようにガラスに貼ってあるけど、色上質紙に手書き文字。うう〜〜〜〜ん、おしゃれとは言えない感じ、さらにアップ。

いわさんかいアップ

 極めつけが入口だ。風除けのビニールシートみたいなもので遮られていて、どこが入口かもよくわからない。この透明のシートがまたほんとに、海辺の小屋にかぶせてありそうな・・・そんな感じなのだ。

いわさんかい入り口

 「おいおい、大丈夫かい?」そんな気持ちになりつつ店内に入ると、店の中もなんだか雑然としている。(オープンしたばかりだったことを差し引いても)おまけに天井にはまた網が! まあ、これはかなりディスプレイ風には見えるけれど、それでも網は網だ。銀のパイプがむきだしになった天井にはりめぐらされた網・・・ま、「海感」は出てるけど。壁には大漁旗もあるし。入口左手のテーブル中央には青い水槽がしつらえてある。店内にもPOPはたくさん貼ってあるが、これも手書き、手書き、手書き。オープンしたばかりのお店的なピカピカした感じがまったくない。

いわさんかい店内

「ぱっとしない外観」は、隠れ名店の共通項?

 ここまで読んだ人は、「どんな店なんだ?」と思うかもしれない。正直、内装や外観のポイントは決して高くはなかった。しかし! その評価を大逆転させたのは、ランチ! だった。日替わりランチで頼んだシーフードカレー650円と海鮮丼750円。お値段がリーズナブルなうえに、海鮮丼のネタの大きくて新鮮なこと! 貝柱、まぐろ、サーモン、イクラ、はまち、イカなどがどっさりのっているのだ。おおっ、これは! と期待して食べてみるとビンゴ! うまいっ! うまいんだ、これが。鳥取直送の海の幸を食べさせるって、つまりこういうことだったのね、と納得!(注:すべてのネタが鳥取直送というわけではないらしい)

いわさんかい日替わりランチ

 メニューを見ると、こういった海の幸をテーブルで網焼きにして食べるような野趣に富んだものも食べさせてくれるし、定番の刺身もかなりの量があるように見えた。そして、お値段はかなり手ごろ。う、うーん、つまり余計なものにはお金をかけず、自信のあるものを提供している店、ということができるのではないか。
 そういえば、築地で魚の競りをやるような人達に人気の店(つまり、品質間違いなしってこと!)って、そっけない造りのところが多いよね! いわゆる「おばちゃんのやってる食堂」みたいな。それでいて安くてうまい絶品を食べさせたりしてるじゃない! そう思ってみれば、この「いわさんかい」のあかぬけない(すみません!)内装も「中身で勝負!」の心意気の現れのようにも見えてくる。
 しかも、この「いわさんかい」、もともとは東大阪は布施の人気店なのだが、この布施店も八王子と同じように「この場所にありえない!」な海の家感漂う外観、内装なのだ。まさに「あえての野暮ったさ!」「あえてのおしゃれ感排除」...それでアピールしたいのは、中身の良さ! なのだから、店構えのそっけなさは確信犯的仕業なのである。
 まあ、見た目にだまされちゃいかんってことだね。飲食店も、人間もだ。

いわさんかい店内

道の駅、野菜無人販売所...そっけなさが、商品への自信をかもしだす店

 夏に旅行したときに地方で立ち寄った「道の駅」のことを思い出す。幹線道路に点在する「道の駅」はその地方の特産物、民芸品などを売っていたり、郷土料理を食べさせるレストランがあったりして、車で出かけるとつい寄ってみたくなる場所だ。
 建物自体は、ログハウス風やペンション風、そこそこお金もかかっていて素敵な道の駅もあるが、いかにも低予算そうな、そっけない造りのものも少なくない。さらに、中に入ると特産品(農作物など)を売っているコーナーが、倉庫のように無愛想な雰囲気だったりもする。
 しかし! だからこそ「買ってみようか」と思わせる力が道の駅の農産物にはある。いつも行くスーパーのようにきれいきれいに陳列されていなくても、店番しているおばちゃんが田舎くさくても、だ。その過剰さのない感じがかえって「信頼できる」と思うのだ。きっとこの地方の農家の人が、誠実につくって売っている野菜なんだろうと思える。そんな野菜がおいしくないはずはない! スーパーの野菜とはきっと違うはず! そう思って、どかんとさつまいもを箱買い! とかしてしまうのだ。食べてみるとやっぱりはずれなくおいしいしね。
 そう言えば、多摩ニュータウンあたりは、元は地主さん? みたいな大きな家の近くに「野菜の無人販売所」があったりする。これも、そっけないことこの上ない。いわゆる掘っ立て小屋状態の小さな販売所があるのだが、たいていは料金箱がおいてあり、「なす・きゅうり・トマト100円」なんて手書きPOPが貼ってある。
 こういった販売所はどこも「思わず立ち寄りたくなるおしゃれなたたずまい」などでは断じてない! だけど、だからこそ、通りかかるとつい寄りたくなるし、のぞいてしまうのだ。そして私はここでも「スーパーの野菜とはきっと違う」と思って、よく野菜を買ってしまったりする。

見た目に手間ひま・コストをかけない店=高倉健タイプ、は言いすぎか?

 「いわさんかい」に行ってみて、その武骨な雰囲気にはさすがに驚いたが、絶品の海鮮丼を食べてみて納得できた。「不器用ですから...」と、女性を喜ばせるような気のきいた言葉など言えない男を演じる高倉健が、なぜか女性にはもてたように(たとえ、古いかな〜)、「おしゃれ」や「洗練」とは無縁な雰囲気ゆえに、そこで売られている商品そのものの本当の価値を感じさせる、そんな伝え方もありかもしれないな、と思ったのだった。
 今回はランチしか食べられなかったけど、ここの海鮮料理を肴にオリジナルの焼酎「いわさんかい」で一杯、なーんて、お酒好きな人にはかなり魅力的なんだろうなあ。私はそんなにお酒がのめるほうじゃないので、その楽しさを味わうことができそうもない。残念だ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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