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連載コラム

第63回「ボックスショップの魅力を追え! 碁盤の目状に広がるディスプレイに∞(無限大)の可能性」

[ 2009年3月10日 ]

"自分の店"を持ちたい人にとって、魅力的なボックスショップ

 最近、私のまわりでボックスショップなる店が増えている。ボックス1個分の賃料さえ払えば、管理や運営は委託店舗が代理でおこなってくれるという商売形態だ。レンタルボックス、レンタルギャラリー、ハコ貸し・ハコ売りボックスなんて名でも呼ばれている。特に自分が作った作品を販売したい、見てもらいたいという人たちからの人気が高く、キャンセル待ちしている人も多いそうだ。
昔から委託販売はあったけど、展示の仕方はその店によってかなり違うので、センスの良い店に申し込みが殺到...なんてことも多かったらしい。でもボックスショップだと、ボックス1個をそのまま借りることができるので、小さいながらもそのボックスのオーナーになれるのだ。それなら商品のコンセプトとマッチしたディスプレイを自分自身ですることができるし、作品を通してイメージをお客さんに直接伝えることができるってもんだ。それって店を持ちたい人にとって、ものすごく魅力的なことでしょ? あくまで"自分のセンス"にこだわりたい人たちに受け入れられたのが、ボックスショップの考え方なのだ。

まるで宝石箱みたい! ハイレベルなボックスギャラリー「ヴェラス」

そんな数あるボックスショップの中でも、ただ箱を貸しているのとはちょっとワケが違うのが、セレクトショップ「ヴェラス」。並べてあるのはフリーマッケットのように"趣味で手作り品作っています~"という素人さんの作品ではなく、雑誌などに取り上げられているプロのハンドメイド作家や、日本各地に散らばっている新進気鋭の作家110人の作品ばかり。その数なんと6500点以上と言うから驚きだ! これはもう"ボックスショップ"と言うよりも、"小さなギャラリー"と表現するべきね。すべて「ヴェラス」のオーナー夫妻が自分の感性で探したり、出会ったりしたアーティストたちなのだとか。なるほど、すべて作風は違うけど、作品の目指している方向性は同じような気がする。

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30㎝角ほどの木目調のボックスに並べられているのは、シルバージュエリー、ガラス、陶器、彫金など、分野はさまざま。どれをとっても同じものがないのがハンドメイドの良さやあたたかさ。量産できないからこそ価値があり、一生モノになるのだろう。
どのボックスも作家独自の工夫が施されているから、作品自体もさることながら、ディスプレイそのものを楽しむことができる。私はいつも、一つ一つのボックスを端から丁寧に覗いていき、作家の人柄や作風、作っている姿を勝手に空想しちゃうのだ。上から下へ、下から上へ、そしてまた次の列に移動して...まるでいろいろなお店を短時間でウィンドショッピングしているみたいで結構楽しいぞ。オーナーによると4月には、第二弾として厳選された作家を30名弱に絞り、より各作家へのプロデュースやプロモーションを手厚くしたお店へと進化させていくそうだ。う~ん、深い!春が楽しみね。

碁盤目状に仕切られたボックスは、わかりやすくて機能的!

実は私、仕事の途中でちょっとだけ...なんて言い訳しながらいつもボックスショップに寄り道している。ボックスショップを見つけると、何か吸い寄せられるようにふらふらと店の中に入ってしまうのよね。短い時間でさまざまな物を一度に見ることができるから、時間短縮できるって利点もあるけれど、それ以上に見た目が大きく影響しているような気がする。だって店の外から、ちらっと見えるボックスの中って、何か謎めいていて思わず奥の方まで覗いてみたくなっちゃうじゃない。
もしかしたら、その魅力は陳列方法にあるのかもしれないと、最近になって気がついた。同じ大きさ・同じ素材のボックスが設置されているので、一つ一つはすべて個性的だけれど、店全体のレイアウトとしてはバランスがとれたものとなっている。碁盤の目状って整理しやすくって、見た目もきれい。碁盤に並ぶ黒白の碁石もしかり、京都や札幌・銀座の整然とした街並みもしかり、どれをとっても凛々しく見えるから不思議よね。 

壁から投げかけられる"ベビードール"たちの瞳のシャワーに参った!

JR横浜線町田駅そばの仲見世商店街に、壁面だけに設置されているボックスショップがある。町田はどんどん近代化しているって言うのに、この仲見世商店街だけは昔の面影を残したまま。なんだか逆行している感じが漂う50mほどのアーケード商店街だ。その入口と出口に、レトロな商店街におおよそ似合わない、ショッキングピンクとターコイズブルーの看板の店が最近オープンしたのだ。おいおい、こんなセピア色が似合う商店街に、ピンクサロンができちゃったのかい? と内心驚いたのもつかの間、近づいてみると、たくさんの目に遭遇してしまった。大きなつぶらな瞳、ふわふわとした毛並みが、ちょこんと座ってこっちを見つめているではないか! ペットショップ「ベビードール」のまさにその名の通り"赤ちゃん人形"のような子犬や子猫たちだった。

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壁一面に縦3つ、横9つのボックスの中にいるのは、まだ大きな声で吠えることができず"くぅ~ん""ふにゃ~"と小さな声で鳴いている子犬や子猫たち。お母さんを思い出しているのか、敷かれた紙に埋もれている姿が、か、かわいい!! 何と言うかわいさだ。一人通るのがやっとの狭い店内ゆえ、その子たちとの距離も近く思わず母性愛を感じてしまった。通路がガラス貼りになっているので、通りかかる人たちも皆一様に、そのかわいさに立ち止まって覗き込んでいる。看板や入口をわざと目立たせ、そこで"私を早くここから出して"とばかりに一斉に投げかけるつぶらな瞳。派手+愛玩の新しい組み合わせかぁ。くぅ~、これはたまらん。目が合った子たちを連れて帰りたくなり、その場で即決してしまった! なんて言う人がいても不思議じゃないかも。

「ベビードール」は関東・関西地区に11店舗を展開するペット販売ショップ。新宿歌舞伎町・池袋北口・渋谷道玄坂と主に繁華街に店を構えているせいか、営業時間は昼の12時から深夜零時までという都会型のペットショップだ。たくさんのブリーダーさんが丹精込めて育てた犬・猫たちを集めてきて売っているのだと言う。

どうも碁盤の目に並べられたボックスは、狭い店内を単に見やすくするだけではないようだ。適温に保たれた個室は、予防接種がまだ済んでいない赤ちゃんにとって、寒さや外敵から身を守る上で必要なものでもあったのだ。見やすく、かつ機能的。これこそ碁盤目状を効果的に生かしているボックスショップだ。

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これからのボックスショップは"見せる・魅せる"を追求

ボックスショップは、統一のボックスを並べることにより、"空間"や"個"を有効活用することができる効率的なビジネススタイル。自分の作品を売りたい人にとっては、運営や販売などを気にせず作品づくりに没頭する時間ができるし、「ベビードール」のように個室の良さを最大限に生かすこともできる。しかし、いずれにしても、ボックスの中身が魅力的な物でなくっちゃ、集客力は見込めないぞ。お客さんが何度も足を運びたくなるような商品や企画力が、今後の課題になってくるだろう。
碁盤目状に並べるボックスの形は、何も正方形に限らなくても、これを進化させてもおもしろそうだ。蜘蛛の巣状や球状、三角すいのボックスなんて、夢があっていい! ∞(無限大)に可能性が広がりそうな気がするぞ。
これからのボックスショップは、作品やディスプレイとともに"見せる・魅せる"を追求して行くべきなんじゃないかな?

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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