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連載コラム

第64回「押しも押されぬファッション雑貨! メガネ選びは、メガネ遊び」

[ 2009年4月6日 ]

流行の発信地に「メガネ」だけのショップ!

 ファッションのメッカ、原宿駅、表参道口。駅前の歩道橋を降りてすぐ、表参道のまさに入り口にある、「Zoff」表参道本店。
私の背より大きな白い「Zoff」の文字がひときわ目立つ。こんな一等地の通り沿いに、メガネだけを扱う店がどーんと構えている。
 数年前「メガネが5000円で買える!」と、人々にカルチャーショックを与えた「Zoff」。花粉にドライアイ、はたまたおしゃれ。きっかけはそれぞれだけど、世間のメガネ率が上がっているのはまぎれもない事実だ。うちのスタッフだって、メガネフェチ揃い。私が知ってるだけでも3つ4つのメガネを使い分けていて、赤だのピンクだの、雰囲気も華やか。さてさて、ここ数年でメガネ文化がどう定着したのか? 

流行の発信地に「メガネ」だけのショップ!

誰もいない空間で、メガネと雑貨がお出迎え

 入ってみると、なんだか異空間。おしゃれな雑貨や小物みたいに、白いプレートの上にディスプレイされた、パステルカラーなメガネに、スパンコールできらきらしたメガネ小物。しかもこのエリアには誰もいない? ...と思ったら、奥へつながる入口から、人だかりがちらりと見える。ここって導入コーナー? さしずめZoffワールドへいざなうイメージ空間、とでも言おうか。まるで小洒落たショールームのようで、メガネやというにはなんとも贅沢なつくりだ。
 雰囲気にのまれて呆然としていた私だが、丸い窓から人の波を見て、やっと我にかえった。コツコツ歩きながら奥に進む。そう、コツコツと。メガネやさんにありがちな無気質なタイル張りの床なんかでなく、歩くとコツコツ音がするフローリングなのだ。ブランドもののショップで店員さんの目を気にしながら歩くときの、あの音! もっとも、この空間は店員さんの視線もない、かといって原宿の雑踏も感じない、一種独特な雰囲気なのだが。

誰もいない空間で、メガネと雑貨がお出迎え 誰もいない空間で、メガネと雑貨がお出迎え

売り手主導から買い手主導へ! 自分が選ぶ、「アクセサリー」

 さて、ここからが本ステージ突入。うっとりしている場合ではない。勇んで売り場に足を踏み入れると、すごい活気! そりゃあ、夕方のデパ地下や、シーズンごとのバーゲンに比べたら何てことないけど、ここメガネやでしょ!? この人たち、みんなメガネ見に来てる...わけよね。
 それに加え、人の数に負けないくらいの、ものっすごい数のメガネが1400種類! これでもかというくらいの品揃えだ。しかも毎月新商品が入るというのだから...。
 ふと見ると、まわりの人たちは思い思いにメガネを「試着」しては鏡を覗き、談笑しあっている。眼科の延長みたいなメガネやさんじゃあないのだ。お店のつくりも「らしくない」し、来てる人たちにメガネをつくる緊張感がみじんも感じられない。ほんとに、楽しんでるのだ。買い物ついでのカップルもいれば、老夫婦もいる。子どもがぱたぱた通りすぎる。手にとったら店員さんがすっとんで来るような雰囲気、ゼロなのだ。
 私もさっそく手近にあるメガネを手に取り、鏡に向かってみた。ピンクの、ストーン入りのメガネ。いまどきのメガネって、こういう色なのか。なんだか違う自分になった気がする。ストライプや、マーブル模様、マットな感じに光沢アリ。私は同行した息子とともに、とっかえひっかえいろんなフレームを試すこととなった。だって、楽しいんだもの。
 それにしても、ひと昔前は目立たないフチなしメガネが流行ったのに、ここにあるメガネは存在感たっぷりだ。「メガネ、ここにあり」っていうラインナップに一瞬引きそうになるが、違う、違うのだ。手にとってかけてみると、このメガネの存在感が自分を後押ししてくれる気がする。そしてその押しに負けないように、私自身も堂々としなきゃ、とさえ思えるから不思議ではないか。
 それに、「自分が選ぶ」ことを意識させる、お任せな雰囲気。もちろん、質問したいことや相談したいことはすぐにお店のスタッフが対応してくれるのだが、そんなことより自由に試して、自由に選ぶ。メガネやさん主導でなく、あくまで自分の意思でメガネを選ぶのだ。こうやって選んでいいんだ!

売り手主導から買い手主導へ! 自分が選ぶ、「アクセサリー」 売り手主導から買い手主導へ! 自分が選ぶ、「アクセサリー」

ここから提案するのは、メガネだけじゃない!

 フレームが決まれば、視力測定。雑誌とメガネグッズがおしゃれにディスプレイされた棚で曖昧に仕切られた場所に入る。オープンなスペースだから、店内と同じ雰囲気を共有できる。緊張するはずの視力測定も、おそろいの黒いウェアを着た若いスタッフが担当してくれる。メガネの用途とか、度数の相談。美容院でカットする前にカウンセリングを受ける、そんな感じだ。脱眼科どころではない、彼ら彼女らは、小洒落たアイウェアコーディネーターなのだ。
 待ちスペースのそばには、CDの視聴コーナーもある。タワー状にディスプレイされ、ヘッドフォンも用意されているのだ。並べられたCDのジャケットがまたお店のディスプレイに一役買っている。思わず手にとって、CDを聴いてみる。もう一度確認しよう、ここはメガネやだったよね? 
 メガネを見て今どきの色を知り、おすすめのCDを聴き、流行りの雑誌を読む。ここはまさに情報発信基地「Zoff」ではないか。5000円でメガネがつくれる、なんて衝撃を受けた数年前でさえ、遠い過去の話なのだ。

ここから提案するのは、メガネだけじゃない! ここから提案するのは、メガネだけじゃない!

絶対にもうひとつ! 「これだけ?」な驚きがまた来たくなる理由

 明朗会計5250円を払った後、仕上がりまでは45分。そんな時間、原宿で過ごすのなんてお安い御用だ。さっき買ったメガネに合う服、なーんて今まで考えたことのない視点が芽生えたことに気づく。「ママ、45分たったよ」って、息子に言われて慌ててZoff へ戻った。...これだけ? メガネって、こんなに簡単に買えるんだ。
 出口はほかにもあるのだが、おさらいの意味でショールームをもう一度通って帰った。ここ、以前はカフェだったとか。待ち時間にお茶が飲めたら、メガネのためにたっぷり時間を使える。話題性もある。人も集まる。「5000円でメガネをつくる!」なんてプチイベントだったのだろう。
 しかしこうして、カフェがショールームになったところで、客足が落ちている様子もない。親子連れ、カップル、おひとり様、続々と人が入ってくる。表参道だからって若い人ばかりじゃない。カフェで人を呼ぶ必要などないのだ。メガネはもはやイベント的につくるものではなく、ふつうのファッション雑貨としてまちがいなく定着した。カフェをとっぱらったのは「Zoff」の自信と言えるのかもしれない。
 古館伊知郎の持ち物拝見で、ケースいっぱいにずらりと並ぶメガネに度肝を抜かれた時代。そして「Zoff」がメガネ界にぶちかました5000円ショック。メガネは時を経てその位置をガラリと変えた。ふらっとメガネを選び、気分でメガネを使い分ける。そんな「メガネ遊び」を世に浸透させたのが、このアイウェアショップ「Zoff」なのだ。何といってもこの私に「ぜったいもう一つ作りにくるぞ」と心に決めさせたのだから。

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http://www.zoff.co.jp/shop/3/

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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